新外国人・ローレンスの実力とは?
昨年12月に、広島はC・ローレンス投手を獲得したことを発表しました。
右の先発タイプの技巧派という触れ込みで、K・ジョンソン、G・フランスア、J・ヘルウェグ、K・レグナルトと外国人枠の投手三枠を争うような形になるでしょう。
そんな中で、実力としてはまだまだ未知数なローレンスについて、データ等を基に実力を解き明かしていきたいと思います。
目次
1.映像から見たローレンス
2.投球内容から見たローレンス
3.球種別投球内容から見たローレンス
4.まとめ
1.映像
昨季のSEA時代の投球の動画をまとめたものが、上記リンクの動画となります。
90マイル前後(約145㎞)のフォーシームとシンカー、80マイル前後(約129㎞)のスライダー、80マイル台前半のチェンジアップが基本的な持ち球なようです。
映像を見た感じの印象ですと、横変化強めなスライダーを軸にフォーシームやシンカーを左右に散らしていく投球スタイルは、かつて広島やオリックスに在籍していたB・バリントンを彷彿とさせるような投球スタイルという印象です。
フォーシームやシンカーの強度はMLBレベルになく、NPBでも出色なものではありませんが、対右打者のスライダーと対左打者のチェンジアップの精度はまずまずといった形で、NPBに来る典型的なタイプなように見えます。
2.投球内容
過去3年の投球成績をまとめたものが、表①と表②となります。
基本的には、AAAでは先発を務め、MLBだと先発/リリーフどちらもこなすという役回りです。
AAAレベルだと奪三振能力はありつつも、四球は出さないという投球が出来ており、まずまず支配的な投球が出来ていることが分かります。
ただ、MLBレベルだと球威の無さからか、被安打や被本塁打が増え、苦しい投球に終始してしまったというところでしょうか。
また、表②を見ると分かる通り、どちらかというとグラウンドボールピッチャーの傾向を示しており、内野手の守備力という点は、ローレンス登板時は重要となってくるでしょう。
3.球種別投球内容
ここでは、球種についてのデータをまとめたものについて見ていきます。
基本的にはMLBの登板時のデータから引っ張ってきています。
まず、表③を見ると上述の通り、フォーシーム・シンカー・スライダー・チェンジアップの4球種を投げ分けるスタイルであることが分かります。
投球割合は、4球種を満遍なく投げ込んできますが、2017年からスライダーの割合を23.4%→39.2%へと、大きく増やしていることが分かります。
おそらく、2017年に持ち球の中でスライダーのみが通用した形になったため、投球割合を増やしたのでしょうが、被打率やxwOBAの観点から見ると、むしろ成績は悪化しており、裏目に出た形となりました。
平均球速を見ると、2017年→2018年の間に球速が多少低下している点は気になります。
2018年のAAAでの成績は立派なものでしたが、MLBの成績は2017年よりも悪化しており、またGB/FBも大幅に悪化しており、球速の低下がもしかしたらその一因なのかもしれません。
被打率やxwOBAを見ると、スライダーは通用していると言えますが、その他の球種はxwOBAが軒並み.400超の数値を記録しており、MLBレベルだとやはり厳しいものがあったことが分かります。
表④は右左別の球種データとなりますが、フォーシーム・シンカーのファストボール系は右左で投球割合が然程変わるわけではありませんが、スライダーは右打者偏重、チェンジアップは左打者偏重という特徴があります。
また、一つ特徴として、対右打者の方が対左打者に比べ、軒並みどの球種も平均球速が高くなっており、もしかしたら左打者に対して多少投げにくさなども感じているのかもしれません。
右左別という点に付随して、2018年の投球位置を右左別にプロットしたものとなります。
スライダーは右打者のアウトロー、左打者のインローの位置によく決まっており、この辺りのコマンド能力の高さは武器となりそうです。
シンカーは基本的には右打者のインコース、左打者のアウトコースを攻める際に使用され、わりかし低めに来ているため、ゴロ性の打球を生産できるボールでしょう。
フォーシームは左打者にはインコースに限定的に投じられているように見えますが、右打者にはコース関係なく投じられています。
意図的なのかは分かりませんが、真ん中より高めに投じられているボールが多く、この辺りがフォーシームが機能しなかった要因なのかもしれません。
最後に表⑤の球質データですが、フォーシームはノビ要素はあまりなくシュート回転要素が強めのボール*で、スライダーは縦に落ちるというよりどちらかというと横変化が強めのボール*となっています。
※FFのVerticalは8.6、Horizontalは-5.2くらいが平均
SLのVerticalは1.37、Horizontalは2.5くらいが平均
また、チェンジアップとシンカーの球質は非常に似ており、この2球種を上手い具合に組み合わせれば、緩急を生かしたスタイルで、スライダーのみならず大きな武器となるかもしれません。
4.まとめ
1~3までをまとめると、下記のようになるでしょう。
・フォーシーム、シンカー、スライダー、チェンジアップを満遍なく投
げ込み、元広島・オリックスのB・バリントンを彷彿とさせる投球スタイ
ル
・GBPであるため、内野の守備力が重要
・ファストボール系の威力に欠けるが、スライダーはMLBでも通用してお
り、大きな武器
・シンカーとスライダーはコマンド能力に優れる
・球質の似ているシンカーとチェンジアップの組み合わせは大きな武器とな
るかも?
ファストボール系の球威はNPBでも並みレベルでしょうが、スライダーという武器があり、コマンド能力も高いことから、実力値としては、NPBでも問題なくやれるだけのものはあるでしょう。
外国人枠の問題で登板機会がどれほど回ってくるかは読めませんが、モチベーションさえきちんと維持してくれれば、それなりの結果は期待できるはずです。
4連覇を目指すチームの中で、その力を発揮して、チームの重要なピースとなることを期待したいと思います。