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漢詩 ③ 孟浩然「宿建徳江」より「宿陋居箱」

春暁が好きなので、どうも孟浩然の詩が好きなのかもしれません。
中学校で習ったレベルでしか漢詩を知らないので、もっと近い時代の人の漢詩が読みたいなと思ってしまいます。
李白、杜甫、孟浩然。この3人の知識だけでは、返り点を思い出すことすらおぼつきません。

孟浩然とは?

689年生~740年没。盛唐の代表的な詩人の一人。
当時の中国の官吏登用試験である科挙に何度も挑戦するが、合格できず、官職に就くことができずに不遇のまま一生を終えた。同じ盛唐の有名な詩人たちの李白・杜甫・王維はいずれも孟浩然より少し年下だが、それぞれ孟浩然を慕い尊敬し、その才能や人柄を称える詩を残している。

宿建徳江

【原文】
〈宿建徳江〉
移舟泊煙渚
日暮客愁新
野広天低樹
江清月近人

【書き下し文】
〈建徳江に宿(しゅく)す〉
舟を移して煙渚(えんしょ)に泊(はく)し
日暮(にちぼ)客愁(かくしゅう)新たなり
野広くして天樹(き)に低(た)れ
江清くして月人に近し

【現代語訳】
〈建徳江に停泊する〉
舟を移して霧立ちこめる川の中州に停泊する
日暮れになればあらためて旅愁が胸に迫る
野は広く天は樹木にのしかかっているよう
川は清く月は私に近づいて慰めてくれるかのよう


「宿陋居箱」 猫様とごはん


【原文】
〈宿陋居箱〉
離母泊煙庭
日暮孤独病
冷雨陋居箱
緑青慰子猫

[韻字 病、猫]

【書き下し文】
〈陋居(ふるびてくたびれた家)の箱に宿す〉
母を離れ煙庭に泊し
日暮孤独に病むる
冷雨に陋居の箱
緑青くして子猫慰むる

【現代語訳】
〈あばら家の段ボールの箱の中に泊まる〉
(子猫が巣立ちを迎えて新たなる縄張りを求めて旅をしたある日)母を離れ霧の立ち込める庭に泊まることになった
日が暮れて(活動する時間帯になると)独り立ちした孤独が身体を蝕む
冷たい雨が(子猫が仮の住処にしている)古くくたびれた家の戸を叩き(子猫は)段ボール箱の中で丸くなっている
新芽が出て木々が青々しく雨に打たれる木々の姿が好奇心旺盛な若い猫の目を慰めている


猫のことばっかり詩にしています。
他に題材が身近にないからです。
猫に対して特別愛情深いわけではありません。
飼い主のいない猫の姿に親がいなくなった後の自分の姿を投影しています。
日本には人間にだって段ボール箱で生活している人がいるのです。
いえ、世界中にいるのです。

*中国語で猫はマオと読むので、韻が踏めてないかもしれません。

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