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コーチのためのスポーツ心理学⑰コミュニケーションの複雑性と自己成就予言
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スポーツ指導の現場において、コーチと選手間のコミュニケーションは成功の鍵を握る。しかし、多くのコーチは「コミュニケーション」を単なる言葉のやり取りと捉えがちです。
効果的なコミュニケーションは、単なる言葉のやりとりではなく、より複雑で多面的なプロセスです。
今回のnoteでは、コーチングにおけるコミュニケーションの複雑性と、コーチの期待が選手の将来的なパフォーマンスに与える影響についてまとめていければと思います。
コーチだけでなく、様々な人にも参考になる内容だと思いますので、是非、ご一読いただければと思います。
コミュニケーションの本質を理解する
「コミュニケーション」と聞くと、まず「言葉」を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、興味深いことに、実際のコミュニケーションにおいて、言葉が占める割合はわずか7%に過ぎず、残りの93%は、身振り手振り、声のトーン、表情などの非言語的要素で構成されているそうです。
例えば、選手に「座って」と言う際も、その言い方次第で全く異なるメッセージになり得ます。
温かく招き入れるような口調⇨「ようこそ!」のような?
厳しく諭すような口調⇨お説教?
オープンな姿勢で近くに座る⇨内緒の話?
腕を組んで距離を置く⇨真剣な話?
これらの違いからもわかるように、同じ「座って」という言葉でも、選手に与える印象を大きく変えてしまいます。
コミュニケーションは複雑なプロセス
これらの非言語なメッセージの重要性に加えて、冒頭でも触れているように、コミュニケーションは以下の図のように複雑なプロセスとなっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1730104971-9C1jDe6QB5Trc7gAXtKxp4wz.png?width=1200)
一般的にコミュニケーションといって連想される単なる言葉の交わし合いではなく、このようなプロセスを歩むのがコミュニケーションです。
図からもわかるように、ステップが多くなることによ理、コミュニケーションがうまくいかないという事態は起こりやすくなります。
個人的には、選手側のメッセージの解釈の際に、コーチの伝えたい内容との齟齬があり、それに対して指導者が怒る。といったような構図がよくある光景のような気もしますが、選手が理解できていないなと感じた際には、どのプロセスで躓いているのかをコーチ側がしっかりと分析し、柔軟に変容させていくことも重要です。(逆に選手目線で考えら際には、自身の解釈がしっかりとコーチの伝えたい内容と合致しているかを確認することも重要です。)
コーチの期待が生む自己成就予言
少しコミュニケーションという本質からは逸れる話かもしれませんが、コーチの選手に対する期待が、その選手の将来的なパフォーマンスに大きな影響を与えうるとされる「自己成就予言」という理論があります。
当然、指導者からの高い期待というのは選手にとっては良いモチベーションとなり、低い期待・期待のなさというのは、選手のモチベーションを大きく下げる要因となります。
これは以下の4つのステップで、起こりうるとされています。
①コーチが選手への期待を形成する
コーチがアスリートの能力について判断を下すのは一般的なことですが、重要なのは、ある種の情報を使って、一定の方法で判断を下すことです。
個人的特性(性別、体格など)
心理的特性(精神的強さ、成熟度など)
パフォーマンス特性(実績、技能など)
問題が起こるのは、期待が不正確で、硬直的で、柔軟性に欠ける場合で、こうした期待がコーチとアスリートとのコミュニケーションに偏りを与えてしまうとされています。
②期待に基づいてコミュニケーションが変化する
期待の高い選手:より多くの時間と温かい指導
期待の低い選手:基本的な作業に終始
これは、冒頭でも少し触れているように非言語なコミュニケーションが大きな影響力を持っているということも関係していると思います。
このようなことは頭ではわかっているものの、本心というのは隠せないもので、コーチが様々な角度で選手を見ることで、各選手に対する明確な期待を持つことが重要ではないかと個人的には考えます。
③コミュニケーションが選手の自己認識に影響を与える
コーチからのさまざまなタイプのコミュニケーションが、アスリートの自尊心、自信、内発的動機づけ、パフォーマンスへの不安、スポーツを続けるかどうかの決断に影響を与えることが研究で示されています(Horn, 2008; Horn et al., 2015)。
コミュニケーションの複雑性を表した図でも紹介しているように、コミュニケーションには、様々なステップがあり、どのステップでコミュニケーションがうまくいっていないかを理解し、改善することが重要です。
コーチ自身が伝えたい内容を様々な伝え方ができることにより選手の理解をより深いものにできるのではないでしょうか。
④選手の行動がコーチの期待に沿うようになる
コミュニケーションの図の最後にもあるように、最後はコーチの期待が選手のパフォーマンスとして発揮されているのかを行動から判断し、その期待が正しかったかどうかを判断するしかありません。
しかし、ここで重要なことはその選手は、コーチからの期待だけでなくその他の選手や他のコーチなどからの期待などの影響も受けるということです。
すなわち、コーチが単にその選手に期待をするだけではなく、その選手を取り巻く人々にもその選手に期待することを明確にし、理解してもらうということも重要であるということです。
選手にポジティブな期待を抱かせるための5つの注意点
前章でもまとめているように、コーチは、期待が他者とのコミュニケーションに非常に強い影響を与えるということを心に留めておくべきです。
以下は、アスリートに対して否定的な自己成就予言を生み出さないようにするための5つの注意点を簡潔にまとめたものです。
1. 柔軟な期待を持つ
日々の観察を重視
成長の可能性を常に認識
定期的な評価の実施
ここで重要なのは
日々を連続で見る目と、1日を1日として見る目を持つこと。
難しいですが、スポーツ心理学で学ぶ思考全般の肝になるような考え方のような気がします。
今はまだうまくまとめることができないので、またうまくまとめられそうになれば、まとめたいなと思います。
2. 具体的なフィードバックを提供
❌ 「今日はよくやった」
⭕ 「ポストプレーでの位置取りとボックスアウトが素晴らしかった」
3. 適切な称賛を行う
パフォーマンスに基づいた評価
過度な賞賛を避ける
具体的な改善点の提示
4. 全選手への平等な注目
個別の時間確保
練習参加時間の管理
効果的な練習計画の立案
5. 高い期待値の維持
個々の能力に応じた目標設定
継続的な成長の促進
建設的なフィードバック
まとめた内容を見ると、まぁそうだよね。ということばかりかもしれませんが、実践するというのは非常に難易度が高いものばかりだと思います。
効率的?に実践していくためには、これまでにまとめてきているコーチのためのスポーツ心理学の知識もうまく使っていく必要がありますし、まずはコーチとしてどのようなことを良いとするのかとった哲学の部分も大きく反映されるのではないでしょうか。
避けられないコミュニケーション
コミュニケーションは「選択」ではありません。
沈黙や無反応でさえ、一つのメッセージとなり、自分自身はコミュニケーションをとっているつもりはなくとも選手(相手)からすると「無視」というメッセージがコーチから発信されたと受け取る選手も中にはいるかもしれません。
また、パフォーマンスへのフィードバックを控えることは、「あなたは注目に値しない」という否定的なメッセージを暗に伝えてしまう可能性さえあります。
以上のことからもコーチとして活動していく、むしろ、これは社会で生活をしていく以上、コミュニケーションというものは絶対に避けることができないものです。
まとめ
効果的なコーチングには、意識的で戦略的なコミュニケーションが不可欠です。
言葉だけでなく、非言語的要素にも注意を払い、全ての選手に対して建設的なフィードバックを提供することが重要です。
また、コーチの期待は自己成就予言となり得ることを理解し、常に選手の可能性を信じ、成長を支援する姿勢を保ちましょう。
加えて、コミュニケーションは避けられないということ。
私たちは常に何らかのメッセージを発信しています。
だからこそ、そのメッセージが選手の成長を促すものとなるよう、意識的に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
次回は、良いコミュニケーターになるには?というテーマでまとめていければと思います。
コーチのためのスポーツ心理学というテーマでまとめていますが、コーチだけでなく、色々な方の参考になる内容でもあると思いますので、次回以降もよければご一読ください!
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