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「協力して乗り切った」ことは本当に美談?ーマネジメント不足に潜むリスク
その美談、本当に正解?
「大変な状況だったけど、チーム一丸となって頑張った結果、乗り越えることができた。本当によくやってくれた!」
こんな状況、ゲーム開発者なら一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
今日は「チーム全員の頑張り」が美談になりがちな職場の風潮についてお話ししたいと思います。
最近のゲーム開発など大規模プロジェクトでは、メンバー同士が助け合い、残業をしながら無理やりスケジュールをこなしていく様子が「チームワークの勝利」として語られることがあるかもしれません。
でも、僕はそれが本当にいいことかどうか、少し疑問を感じています。
なぜかというと、短期的にはチーム同士の結束力が高まるかもしれませんが、長期的に見るとマネジメント上の大きなリスクをはらんでいるからです。
特に、何年もかけて開発するゲームなどは、そもそもの作業量や必要な人数をきちんと見積もり切れていないことが問題になります。
もし「誰かが無理をすれば何とかなる」という考え方が常態化してしまうと、いつか取り返しのつかないほど開発が破綻してしまう可能性が高いと感じているんです。
「自己犠牲」が美談になりやすい理由
学生時代のサークル活動や文化祭でも、同じような構図があると僕は感じています。
みんな素人で、作業量を正確に見積もれないまま「こういうものを作りたい!」という気持ちだけで突っ走る。
その結果、誰かが休日や夜の時間を削って間に合わせると、その人は「よくやった!」と持ち上げられるわけです。
学生のうちはそれでもいいかもしれません。
ただ、企業として大人数で大きな予算を動かすプロジェクトとなると、同じようなやり方は非常に危険だと感じています。
個人の献身をあてにすることは「高いモチベーションを保つ手段」になりがちですが、その分スケジュールやコストの把握が曖昧になるのです。
サポート役を明確にする大切さ
よくあるのが「開発環境のトラブル」に関する対応です。
アーティストやサウンド担当から「画面がエラーを起こした」と呼ばれて、プログラマが20~30分かけてあれこれ直すことは、開発の現場では日常茶飯事だと思います。
こうしたサポート業務を、誰も担当者としてアサインされていない状態でまわしてしまうと、“手の空いた人が善意で対応する”という流れが生まれがちですよね。協力的な性格の人や、リードプログラマが対応しているケースが多いです。
規模の小さいチームならそれでもまだ回るかもしれません。
でも、チームが100人以上になると、トラブルの頻度が高くなってきます。
そうなると、専任のサポート担当をちゃんと用意しないと、対応に追われたメンバーの本来のタスクがまったく進まなくなってしまいます。
「みんなでフォローしあうのが理想だよね」と言われがちですが、実際には早めに体制を整備しないと開発全体が遅延する可能性が高いんです。
「サポートは善意ではなく業務」であると考えています。
新人こそ知ってほしい「時間管理」の考え方
ゲーム会社に新しく入ってくる新人の方は、「残業してでも貢献したい」「僕が頑張ります!」という意欲を持っていることが多いように思います。
学生のころからゲーム制作をしており、プライベートの時間を削って素人なりに頑張って、何とかリリースできた、という経験をしたことがある方は多いです。
もちろんその熱意は素晴らしいのですが、お金をもらってスケジュールの中で仕事をする、プロの考え方ではありません。また、長時間労働を続けると心身への負担も大きく、プロジェクト全体を考えたときに最終的なパフォーマンスが下がってしまう恐れがあります。
だからこそ、リードプログラマや先輩は、適正な工数やスケジュールの割り振りを新人に教えていく必要があると感じています。
新人が「もっと働きたい」と言っても、じゃあその分ほかのタスクを減らそう、というように、マネジメントの手をしっかり入れることが大切ではないでしょうか。
管理する視点がチームを強くする
僕は、「いつでも誰かが無理をしてくれるから大丈夫」という考え方がチームに根付いてしまうと、結果としてプロジェクトの再現性やスケジュールの安定性が損なわれると考えています。
逆に言えば、タスクの見積もりと割り振りをきっちり管理できる体制があれば、個々人が過度に無理をせずとも質の高い成果を安定して出せるのではないでしょうか。
また、1.5人分の仕事を1人がこなすなら、もう1人を雇ったり、別チームから人を借りたりして工数を調整したほうがいい場合も多いと思います。マネジメントの立場からすると、1人が残業して1.5人分の成果を出すのも、ほかの人の工数を少し借りてきて0.5人分の仕事をしてもらうのも、同じことなのです。これは自分がメンバーだったときは気づいておらず、頑張って個人の成果を増やすことがベストだと考えていました。
本人の献身に甘えて進めるのは一見手っ取り早い手段に見えますが、そのせいで健康や学習の機会を失ったり、さらに重大な遅れを招いたりする可能性もあるんですよね。
チーム全体が最善を尽くすためには、一人ひとりが負担を抱え込みすぎない仕組みづくりが重要だと僕は感じています。
そして、それこそがリードプログラマやマネジメントの腕の見せ所ではないでしょうか。
大切なのは、誰かの自己犠牲を称賛するよりも、安定して成果を出せる開発環境とスケジュール運用を整えることだと思います。
そうすることで、長期にわたるプロジェクトでもチーム全員が気持ちよく働き、最高のゲームを世に送り出せるのではないでしょうか。
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今回の記事と関連して、「やる気が空回りして大失敗した新人時代」の話を語っています!
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