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過ぎ去る春に


はじめてだった。
こんなに離れたくなくて心地よくて愛おしくて。
苦しくて、切ない。


そんな春を過ごしている。



もう、最後にしよう。
そう思って何度スマホの画面を閉じただろう。
結局、懲りもせずまたあなたにメッセージを送ってしまうのに。

甘ったるいのに、ふと現実を突きつける。
甘やかしながら、大人になりきれないわたしを余裕そうに眺める。例えるならば、あなたは麻薬のような中毒性を感じさせるひと。
わたしは囚われてしまっている。逃れようともがいてみてはいるものの、より絡みついてくるあなたの存在に。依存しそうな自分がいる。何も考えずにあなたの隣を選ぶ前に離れなくちゃ、戻れなくなると思う。惰性で選ぶ前に。

離れる時の名残惜しさも、他の相手ができたら寂しいなって思うのも。

それは、恋愛と呼べるような「好き」の感情だった?
恋愛かはわからないけれど「好き」の気持ちがわたしの中に存在しなかったらこんなに真剣に悩んだりしてないだろうな、なんてことを思ったり。
実際は、自分の気持ちに自信が持てなくなっているだけなのかもしれない。
そんなふうに感じながら離れられなくなっていることに気づいている。
そう、自覚はある。
何度も頭の中で曖昧なこの関係を続けるわけにはいかない、きちんと一度話をしないといけない、ずっと考えているのに。それを実行できずにいるわたし。
意志の弱さが表れてるな。我ながら滑稽だな。

身体は正直だ。本能には逆らえない。
人間であることを、こんなふうに実感するなんてちょっと変な話のようだけれど。
それでも。冷静になると頭で考えるから、なんだか泣きそうになる。
感情だけで動けたなら、どんなに楽だろう。
あなたの隣に、こんな幼くて一人で立てるか危うい人間が居て良い筈がない。
やっぱりあなたの隣にわたしは似合わない。
わたしの成長を待ってまで想わせる時間は勿体無さすぎる。

あなたから最後を選んでくれたなら。突き放してくれたなら。そんなしんどいこと、あなたにさせるわけにはいかないか。
元々はっきりできないわたしのわがままに付き合ってもらっているんだ。わたしが手放す決意をきちんと固めて伝えなくちゃ。
わたしが楽しちゃいけないのよ。流石に。

ねぇ、あなたはわたしと「付き合う?」って言ったけれど、返事ができないわたしを本当はどう思ってた?都合のいい関係?今の二人に名前をつけるなら、何だっただろうね。先輩後輩?友達?知り合い?
このダラダラとした関係性は、何と表現したらしっくりくるのかな。


ありがとうとごめんとさよならが入り混じる。
今までにないほど濃すぎる時間を過ごした1ヶ月。
魔法が解けるのは24時なんかじゃないし、かかったままでいられないことを嫌というほど思い知った。わたしはシンデレラのように特別でもなんでもなく「どこにでもいる22歳」でしかないのに。
なんでこうなったのか、本当はなんとなくわかってた。
わからないふりをしていたけれど、引き金を引いたのはきっとわたし。全部曖昧にしたのもわたし。全部わたしのせい。だとしても本当に、苦しくて切なくて甘ったるい春だったな。過ぎていく季節を見送るようにちゃんとさよならしなくちゃ。


ここまで綴ったほとんどが言い訳でしかない。本当の気持ちを並べたつもりだけれど、結局言い訳のオンパレード。

ずっと苦しかった。
あなたの思い描く未来にわたしを想定してくれるのが嬉しかった。でも怖かった。なんとなくそこにいるのはわたしじゃない気がした。だから曖昧な返事しかできなかった。中途半端な自分が嫌だった。相手の時間を使うことへの罪悪感で塗れて。あなたといる時のわたしを、わたしは好きになれなくなった。惰性であなたの隣にいたいと思えるほど、わたしは大人になれなかった。

全部、わたしのせい。
好きでした。どうか幸せになってください。

はじめからずっと逃げててごめんなさい。
ここまで待たせてごめんなさい。
この関係を終わらせましょう。
一緒にいてくれてありがとうございました。
好きになってくれてありがとうございました。
本当に楽しかったです。
さようなら、です。

どうか頑張れわたし。
ちゃんと伝えろ。


願わくば、緑が輝きを増す前に。




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