ほわっとかわいい絵本画 黒井健
黒井健さんの名前は、ずっと頭の中にあったわけではないけれど、見た瞬間に「絶対知ってる人だ!」と思った。それもそのはず、日本の小学校に通った人ならみんな国語の教科書で読んでいる「ごんぎつね」や「手ぶくろを買いに」の絵本画を描いた人です。
「黒井健 絵本原画展」
姫路文学館を訪れたのは、安藤忠雄の建物と日本建築を見に行くためでしたが、そこで開催されていたのが「画業50年のあゆみ 黒井健 絵本原画展」(2024年9月1日まで)。姫路の次は山形県の酒田市美術館に巡回予定だそうです。
ちなみに本来の目的の建物見学は、暑さに負けた夫に従い、次回に持ち越し…
なお館内は全て撮影禁止です。
黒井健について
やっぱり好きなことをしよう
見てるよりやりたい人だったようで、絵本編集者の会社員からフリーのイラストレーターになったそうです。そんな人が好きです。いつからでもなんだってできる。
黒井さんの絵は、色鉛筆を筆ではなく絵の具として使うような技法で、色鉛筆の色の部分を油を含ませた布でとり、型紙の内側に色を付けていく。なんだかとても根気のいる方法に思え、わたしなんかはけっして真似できそうもない…
黒井さんの絵は、説明的ではなく、本を読むときに心の中で無限に想像する世界を表現した、抒情的な感じ。その黒井さんの想い描く世界観がとても素敵だから、多くの人の心に残るのかな、なんて思った。
意外だったのが、木彫作品もあったこと。まるで絵本から飛び出してきたような「そのまま感」に驚く。黒井さんの中に生きてる登場人物(いや猫)だからこそ、立体になっても、絵の印象と変わりないんだろうな。
「ごんぎつね」と「手ぶくろを買いに」
児童文学作家・新美南吉の代表作。
結核により29歳で早逝していたことを知る。東京外大出身ということに親近感が湧いた。
この二つのきつねのお話、悲しい結末のごんぎつねで終わらせてしまうのが気に掛かっていたのか、手ぶくろを買いにでは心温まるお話になっていて、少し救われた気持ちになりました。
黒井さんのどの絵を見ても、お話が情景のように甦ってきて、懐かしい記憶を今の自分に更新できたみたい。思いがけず良きお盆の午後になりました。