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柴又100K リタイア&完走記(5) 100kmの部 2度目の挑戦で完走!

事前準備

リタイアで終わった柴又100kの翌年、「今度こそ完走」と固く思って再び100kmの部にエントリーしました。今回もフルマラソンの大会を終えた3月から、練習には長い距離メインに切り替えです。30km走を月に2, 3回行いました。できれば50km走も一度しておきたかったのですが、そこまでの時間が取れずに最長で走ったのは45kmまで。でも、前年は体調不良を除いても体が100kmに対応できていないことを感じたので、それよりはしっかりと走り込みができました。今回は事前に風邪を引いてしまうこともなく、体調面でも不安を感じることなく当日を迎えました。

大会当日・前半

体調が通常かそれ以上にいいときは、知らずのうちにペースが上がりがちです。この日は、キロ6分よりも速くならないように気をつけながら序盤を進んでいきました。脈拍では140/分程度です。これぐらいだと呼吸は乱れないので、数か月前から取り組み始めた「鼻呼吸ラン」(口で呼吸するよりも酸素を効果的に体に取り込めるという説があります)を試してみることにしました。4拍吐いて、4拍吸うというリズムで進み方が安定したので、15~30kmぐらいのところは時計でペースや脈拍を確認せず、自分の感覚で大体同じぐらいと思うペースで進むことにしました(走り終わってから確認すると、キロ6分半~7分ほどのスピードでした)。鼻呼吸だと、知らない間にスピードが速まり脈拍も高くなるということが少なくなる気がします。鼻呼吸ランでどんな走りができるのかというのは、今後も探求したいテーマです。

練習で何度も走っていた35kmぐらいまでは、あまり苦労せずに進めました。ただ今回は、前年よりもさらに日差しが厳しいように感じられました。ほとんど日陰がない柴又100kは、1日じゅう快晴だったり気温が高かったりすると完走率が下がります。悪天候とおなじぐらい、ピカピカの好天にも注意が必要です。エイドでシャツの袖や首などに水をかけて体を冷やすということを、昨年に続いて行うようにしました。

でも、ランナーが水をすくって体にかけられるように水を張った大きなバケツやたらいを用意してくれているエイドばかりではありません。暑さがピークになる日中に、飲み水とは別にもう1本空のペットボトルなどを準備しておいて、エイドでそこに水を入れてもらって体にかけながら走る、ということをしてもよかったかなと、後に振り返って思いました。

35kmを過ぎると、大分と体が重くなってきました。40kmぐらいまではもっと余裕をもって行けるかなと思っていましたが、暑さと日差しで予想以上に消耗してしまったようです。キロ7分を越えるぐらいのペースに落として、47kmの大きなエイドまでたどり着きました。ここではいろいろな補給食を出してくれるのですが、中でも塩きゅうりと人参ジュースがとても美味でした。前年いただいたうどんは、今回はあまり食べたい気持ちにならず見送りました。ここで15分ほど休憩し、後半に向けて出発しました。

大会当日・後半

50km手前のエイドは、休憩と気分転換ができる場所ですが、そこを出発すると結構な疲れがたまっていることに気づかされます。前年もそうでしたが、体が思うように動かないのです。また、基本川沿いをゆく柴又のコースの中で、45km~57kmぐらいまでは川を離れた一般道を走ります。そのことも何らか影響しているのか、この区間は気持ちの上でも非常に消耗しました。走るのがつらくなり、前年の苦い記憶があるにも関わらず「リタイアしてしまおうかな」という思いがよぎるぐらいに。脈拍が上がっていたわけではありませんが、鼻呼吸もこの間に続けるのが大変になってやめました。より多くの酸素が必要になったというより、鼻呼吸に意識を向けているのが大変になったということだと思います。

足にも痛みが出てきて、ここから先は1kmごとの距離表示と2~3kmごとのエイドを目指してよろよろと進むようになりました。体調に問題がなくても、やはり普段走る距離をはるかに越えるウルトラマラソンは簡単には完走させてくれません。「ウルトラマラソンはメンタルが7割」という言葉をときどき目にしますが、実際このあたりからは、どこまで気持ちを切らさずに進むことができるかという世界に入ってきました。

土手の上のコースに戻って南下を始めると、強い向かい風が吹いていました(何度か帽子を飛ばされそうになりました)。進むのは大変ですが、それでも暑さをかなり和らげてくれたことを考えると、この風があって助かったと思います。前年は60kmぐらいから歩いて走ってという形になっていたのを何とか越えたいと思い、続いて前年リタイアした65kmすぎのポイントもどうにかクリアしたいと思い、70kmまでたどり着きました。このあたりからは空に雲がかかる時間帯が増え、暑さはだいぶんとしのぎやすくなってきました。

この頃にはひざの痛みが結構出ていて、エイドを過ぎると屈伸したり少し歩いたりして、そこから1kmほどをゆっくり走ってまた屈伸、というだましだましの進み方になっていました。ペースはキロ7分半~8分半、ところによっては9分半ぐらいです。制限時間までにはまだ十分余裕がありましたが、まだゴールまで行き着けるかどうか、自分の中では何とも言えない状態でした。手持ちのナッツを何度か食べようとしたけれど、モサモサ感が強くてあまり食べる気になりません。エイド以外のエネルギー補給は、主にエネルギージェル(3本持参)で済ませていました。

76kmあたりのエイドで、預けていた「スペシャルバッグ」を受け取ります。ここには食料(チョコレートバーなど)とスポーツドリンク1本を入れていましたが、どちらもあまり飲食する気になれず、そのままリュックに入れました。疲れた体に追加分の荷重がズシリとかかり、このスペシャルバッグは不要だったか、とちょっと後悔しました。

ひざの痛みはつらかったですが、ちょっと屈伸したり歩いて休みを挟んだりするとまた1kmぐらいは走ることができたというのが、前年との違いでした。多少練習の成果というか、体が長距離に耐えられるようになっていたということなのかもしれません。80kmを過ぎると、残りをほぼ歩いても制限時間内にゴールはできそうだとわかってきました。ここでようやく、今回は完走できるぞという気分になります。そこからも、軽い軽いジョグのようなペースを基本に進んでいきました。

ようやく90kmを過ぎて辺りも大分と暗くなってきた頃、「そういえば、今日は自分の走りたいペースで全然走ってないな」ということに気づきました。前半は心拍を上げないように鼻呼吸で進み、疲れてきた40~50km以降は、ペースを落としながらなるべく走り続けるということで進んできました。そして90kmまで来たとき、関節や筋肉はかなり疲れているものの、まだ体力は少し残っていることがわかったのです。夜の土手道を、ただヨロヨロと走るだけでなく、もう少し自分の走りたいように進んでみたいという思いが強くなり、ひざの心配はありましたが「走れなくなったらそこから歩けばいい」と割り切ってスピードを上げました。

ペースを上げたとはいえキロ6分半とかその程度ですが、それまでと比べたらかなりのスピード感です。実際にこのペースで進めたのは3kmほどでしたが、100kmの道のりの最終盤で自分を解放して走れたこの20分ほどは、今回の大会でもっとも印象深いひとときになりました。そこからは再びペースが落ちましたが、暗くなってからはヘッドライトを着け、左手に昇ってきた満月を眺めながら、ゆっくりと最後の数キロを走りました。そして13時間ほどで走了。本当にうれしいゴールでした。

振り返って

ゆっくりではありましたが、100kmの道のりのうち95kmぐらいは走ることができたのは、大きな収穫でした。40kmぐらいから大転子が痛みはじめ、その後で足首やひざも痛くなりましたが、まったく走れないほどはひどくならなかったというのが大きな要因かと思います。一方で、途中でリタイアを考えてしまうような気持ちの弱さは相変わらずでした。

それでも最後まで走り切れたのは、「気持ちが折れそうになりながらも(というか、ぽきぽきと何度も折れながらもと言った方が正確かもしれません)、完全に切れてしまわなかった」ということなのだろうと考えています。「ウルトラマラソンはメンタルが7割」。この言葉はかなり真実だと思いますが、前年のリタイアと今回の完走を経た上で顧みると、フィジカルの大切さも決しておろそかにできないと感じられます。「まだ行ける」と気持ち(メンタル)を奮い立たたせるためには、体(フィジカル)の状態が整っていることが決定的に重要だからです。前年に65km過ぎでリタイアしたときには、体調面での不安から、「つらいけどまだ走れる」と前を向くことができませんでした。月並みではありますが、事前の練習や体調管理をしっかりと行ったうえで本番に臨むことが、「まだ行けるはずだ」という気持ちにつながるのだと思います。

柴又100kをリタイアし、そして完走して見つけた自分なりのウルトラマラソンへのアプローチは、途中で「もう駄目だ」「やめちゃおうかな」と何度も弱音を心の中で吐きつつ、そうなるだろうことをあらかじめ理解した上で、それでもどうにかゴールを目指す術を見つけていく、というものでした。決して格好のよいものではなく、むしろかなり不格好なスタイルだと自分でも思いますが、これからもこんな風にウルトラマラソンを走っていこうと思います。

使用シューズ:
ナイキ エアズームペガサス
安定性とクッションがあり、これを履くと決めていました。毎年新モデルが出ています。


これまでの話:


いただいたサポートは、ローライ35Sやローライフレックス2.8Cなどで使用するフィルムの購入や現像などに使わせていただきます。