生活者の第二言語(韓国語)学習 読解編
日本語教師として現場に出た時に役にたつかもしれませんので、italkiで「学習者体験」をしてみることにしました。
サンプル「私の韓国語」:
日本語の話せない韓国人夫との17年の結婚生活の中で養われたもので、日常会話にはあまり不自由していないが、文字を使っての「学習」を全くしたことがないので、何から手をつけていいのかさっぱり分からない。
そこで、Italkiで読み書き専用のコースを用意しておられるプロ講師の先生を見つけ、これまで3回レッスンをしました。
私の韓国語は、4技能の能力差が大きい生活者特有のサンプルだと思うので、以下、4技能のうち「読解」にフォーカスを当てて、気が付いたことをメモします。
読解(音読)
初級後半くらいのテキストの読解文章を使ってレッスンをしていますが、内容は、ものすごく簡単です。(自分ではこんな簡単なテキストは選ばなかったと思います。)
けれども、内容が簡単だからといって、スラスラ「読める」わけではないことが分かりました。
文字で学習したことがないというのは、この作業経験が極端に少ないということです。
これは、楽譜だけを見て、歌を歌うことと同じ作業であることが分かりました。
そして、音読するには、音声に関する知識も必要であることが分かりました。
韓国語は、日本語と違って、連音化(リエゾン)する言語です。
英語に例えると、
学習初期段階では、Thank you very much. と書かれている文章を、
単語を1つ1つ読もうとして「センク / ユー /ヴェリ /マッチ 」のように文節ごとに切って、音読してしまいがちです。
ここで、見本の音声インプットを聞いて、真似することにより(シャドーイング)
「センキューベリィマッチ」と 文単位の音読方法をインプットすることができます。
おそらく、このインプットを積み重ねることによって、無意識のうちに、「ああ、こうやって読むんだな」と、音声体系を「習得」し、「文字を見て、音読し、理解する」処理速度が上がって、スラスラ読めるようになるのだと思います。
けれども、第二言語の場合は、母国語習得と違って、自身の母語の影響をものすごく受けているので、ここが、音声知識が必要になってくるところだと思います。
私は韓国語が連音化する言語であることも、日本語と違ってイントネーションがないことも知識としては、知っていました。
けれども、自分がどこで母語の影響を受けて、エラーを起こしているのかについては、指摘されないと気が付けません。
3回のレッスンで講師の先生に指摘されて、気が付いたことをまとめます。
文字を読もうとすると、ものすごく「固い読み方」になる。
この「固い読み方」について、さらに具体的な説明を求めたところ、
単語を読もうとして読んでおり、文単位の読み方になっていないためであることが分かりました。
どういう子音の組み合わせの時に、連音化するのかという知識があると読みやすいことも分かりました。
単語を読む時に、ものすごく「強い読み方」になる。
講師の先生の言う「強い読み方」の意味が分からないので、
私の間違えた読み方(エラー例)と、正しい読み方を提示してもらいました。
エラー例と見本を並べて発音してもらうと、その違いが見えてくるので、自分のエラーに気がつくことができます。
そこで気が付いたのは、私は、韓国語の語彙に、日本語的アクセントをつけて読んでいることが分かりました。
それは、「韓国語のイントネーションがない」という知識と音声体験が結びついた瞬間でした。
その気づきを得たあとで、もう一度、イントネーションをなくすように意識して音読しますと、講師の先生に、「ずっと自然な読み方になりました!」とほめてもらいました。
日本語母語話者の私からすると、棒読みしているような不自然な気分で、慣れるには練習が必要です。
母音(特に,ㅜ[u])、そして、パッチム(語末の子音)の発音が「弱い」
例えば、私は、대한민국(大韓民国)という単語を、「デハミング」だと認識してきました。
しかし、実際は、私が認識していたよりも、語中のNの発音が、はっきりしており、「デハンミング」だったのです。(カタカナで表現するには限界がありますが…)
また、韓国語の우「ウ」の発音が、私は日本語的に唇を丸めずに言ってしまっているので、はっきりした音として聞こえていないという指摘もありました。
ここで、ものすごく不思議なのは、
私が文字を目で追って音読するとエラーになり、その表現を覚えて、目をつぶって意味交渉するつもりで発話すると自然な発音になるという現象が起こっています。
これは、生活者の第二言語習得では、よくある事なのかもしれません。
なかなか興味深い現象です。
また、私は20歳を過ぎてから、音声だけで語彙を習得したので、
自分が耳から聞き取った音と、文字とのマッチングができておらず、かなりの数の語彙を勘違いして認識しています。
つい最近、私が知って驚いたのは、「조심해」(気を付けて)という高頻出な言葉です。私は、「ショシメ」だと10年近く認識しており、語頭の子音をSだと思っていました。ところが、「ジョシメ」語頭の子音の文字表記はJだったのです。
そこで、韓国人の夫に、「ねえ、私は今まで、『ショシメ』だと思ってきたのに、本当は、『ジョシメ』なんでしょう?なんで教えてくれなかったのよ。」と言いましたが、
夫に言われたのは、「ん?2つとも、発音合ってるけど?」でした。
韓国語には、清音と濁音の弁別機能はないのに、私の日本語の耳はそれを区別して聞いているという事例です。
(*横で聞いていたバイリンガル息子は、私の言っている意味を理解してくれました。)
逆パターンでは、「ン」の発音です。
韓国語には、鼻音の「ん」([ㅇ])と、鼻音ではない「ン」([ㄴ])があり、日本人には区別が難しいと有名です。
ところが、文字と一緒に発音を聞くと、
文字という視覚情報と音声情報のセットでのインプットにより、「気づき」が促進され、音として違いが感じられるようになってきました。
それを発音すると、講師の先生に合っている言われたのでちゃんと聞き取れたという事なのでしょう。
そこで、この「文字+音声」認識インプットを繰り返すことによって、リアルな会話でも、その音声を聞き取れるようになるのではないかと考え始めました。
私は、10年以上、韓国に住んでいるのに、いくつかの韓国語の音に関しては、聞き取ることができなくて、発音することもできない音があります。
母語の影響を受けている第二言語習得に関しては、生活の中での「自然習得」だけでは難しく、音声知識と文字でのインプットという「学習」を繰り返し、リアルな言語環境の中で気づいていく必要がある、ということを改めて実感しました。
たった3回のレッスンなのにも関わらず、気づいたことが多かったです。
今日は読解についての気づきについて書きましたが、ネタがたまってきたら、今度は、書く技能についても書いてみたいと思います。