NEJ Vol.2を使ってどのように授業をしているか③
私の所属する日本語学校のA2レベル(初級前半・後半)クラスでは、週4回(50分×8コマ)、NEJという教材を使って、日本語の授業を行っています。私は、A2.2クラス(初級後半)で、NEJ vol.2の授業を、1年半、担当してきました。1年半ということは、教材を6周したことになります。
そこで、この教材を使って、どのように授業を展開しているのか、ここに記録しておこうと思いました。
以下は、上記の記事の続きです。
§2 Summary of Main Grammar Points
それでは、最後に、Unit 17の§2を、今期、どのように行っていたか紹介します。
このセクションにきてはじめて、テーマに関連した文法表現を「文法」として、明示的に扱います。
文法表現提示
まず、教科書に沿って、提示されている授受表現と例文を提示します。
例文といっても、マスターテキストの物語の中で登場した文しか扱いません。その文を提示したときに、学習者は西山先生、リさん、あきおさんといったキャラクターの物語を想起できるはずなので、特に、どういう場面なのか、文脈についての説明はしなくてもよいです。
私は、上記のようにスライドで、文構造を強調させたり、助詞をまるうめにしたりした上で、文を読んでもらっています。学習者はテキストに対訳付きの文法説明がありますので、それを読むことができますし、私は、そこに書いてあることと同じことを、かんたんな日本語で説明します。
穴埋め練習
マスターテキストで散々、朗誦してきた文を、今度は文法に焦点をあてて、穴埋め形式にして、練習します。
NEJは一貫して、同じ登場人物の物語が語られていますので、この練習は、学習者が絵を見たときにそれが誰であって、どんな文脈でその行為が行われることになったのか説明しなくても分かるという前提で行っています。
個人化質問
その上で、トピックに関して自分のことを言う質問を提示します。
例えば、
個人化質問は、§2に入る前にもしてきましたが、さらにオープンで自由度の高い、違う質問をしています。
プラスアルファ
今期、私はNEJとは離れて、実際に物を使ってする授受表現の練習を加えました。以下の活動は、文型積み上げの世界でよく行われている練習かと思いますが、スライドだけ見て練習するのではなく、実際に自分の手足と感覚を使って、体で感じることが言語習得には欠かせないと思ったので導入しました。
(おはじきを使って)
みなさん、これは、キャンディです。みなさんにあげます。
はい、どうぞ。はい、どうぞ。(配る)
T: わたしは、みなさんにキャンディを~?
S:「あげました」
T: みなさんは、先生にキャンディを~?
S:「もらいました」
T: (突然来た違う人のふり)Sさん、そのキャンディ、どうしたんですか?
S: 先生にもらいました。
(おはじきを使って)
みなさん、これは、チョコレートです。みなさんにあげます。
はい、どうぞ。はい、どうぞ。(配る)
T: わたしは、みなさんにチョコレートを~?
S:「あげました」
T: 「先生、ありがとう」先生が私にチョコレートを~?
S:「くれました」
T:(突然来た違う人のふり)そのチョコレート、どうしたの?
T: (先生があそこにいて、ありがたい風に先生を持ち上げ)先生が~?
S: 「先生がくれました」
(おはじきを使って)
T: みなさん、これは、チョコレートです。
T: S1さんに、あげます。S2さんにも、あげます。
T: はい、どうぞ。はい、どうぞ。
T: あ、でも、S3さんには あげません。
(違う人のふりをして)
T: S1さん、そのチョコレートどうしたの?先生が~?
S1:先生がくれました。(先生にもらいました)
S2:先生がくれました。(先生にもらいました)
T: あれ、S3さんのは?
S3:「先生はくれませんでした。」
(チョコレートが嫌いだと言っていた学習者に)
T: S4さん、チョコレートいる?
S4:あ、ありがとうございます。でも、チョコレートはちょっと・・・
T:あ、そっか。S5さんはいる?
S5:ありがとうございます。
T:S6さんにはあげない。
(違う人のふりをして)
T:S5さん、そのチョコレートどうしたの?先生に~?
S5:あ、先生にもらいました。
T:あれ、S4さんは?
S4:あ、私はもらいませんでした。
T:S6さんも?
S6:先生はくれませんでした
理解したことの確認と、実際の現場で運用できるように口慣らしのつもりで行った活動です。全員に当てて、全員に発話してもらいました。今期はクラスの人数が10人だったのでやりやすかったです。
文法を言葉で説明されているときには、集中力がどこかに飛んでいっていた学生も、身体動作付きでのこの方法の提示には生き生きと反応しており、
テスト前の復習回の授業の時には、クラスメイトに、この文法の違いを母語で上手に説明することができていました。
余談:この練習のあと、ある学生が、
「先生は、私たちにニセモノのキャンディをあげましたが、私は、先生にホンモノのキャンディをあげます。」といってお菓子をくれました。
「先生は、ニセモノのキャンディしかくれませんでしたが」とリキャストしましたが、嬉しかったです。
学習者アンケートでは、もっと文法をやってほしいという声が多く上がっていたので、このように学習者の学習スタイルに合わせて、提示方法、時間のかけ方などを調整するようにしています。
プラクティスシート(自宅課題)
自宅で、NEJに別冊でついているプラクティスシートをします。
漢字(文字)の練習をするページと、文法練習用のマスターテキスト穴埋め問題のページがあります。
漢字に関しては、ユニットが終わった後で、小テストをしています。
以上、長くなってしまいましたが、NEJの授業の流れをざっと記録してみました。
来学期から、NEJ Vol.1 を初めて担当させてもらいます。
Vol.1からのNEJの流れを知ることによって、また、新たな視点が生まれるかもしれません。
楽しみです。
読んでくださって、ありがとうございました。