![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59198848/rectangle_large_type_2_c6002d53d7fb4d58c0d549672346a97a.jpeg?width=1200)
中国語・韓国語 母語話者の「清音」と「濁音」の混同が起こる理由~破裂音
■音声学授業まとめNOTE
日本語は、「清音」と「濁音」の区別によって、意味の違いが生まれる言語です。例)[た・だ]、[か・が]、[ぱ・ば]・・・破裂音
(*[ば]のミニマルペアは[は]ではないことに注意。)
対して、中国語と韓国語は、「有気音」と「無気音」の区別によって、意味の違いが生まれる言語です。
「清音」「濁音」「有気音」「無気音」と言葉だけで言われても、違いがよく分からないので、授業では実際の音を聞き、サウンドスペクトログラムの表も見せてもらいました。
違いは、VOTという観点を用いて考察します。
VOTとは、調音器官の解放(破裂)と声帯振動が始まるまでの時間のこと
だそうですが、
中国語の[da]と[ta] 、日本語の[da]と[ta]で例を挙げてみます。
中国語の「搭 da」(←リンク先の音声)
これが、「無気音」です。日本人の耳には、「だ(濁音)」に聞こえますね。
中国語の「彼 ta」(←リンク先の音声)
これが、「有気音」です。日本人の耳には、「た(清音)」に聞こえます。
対して、
日本語の「だ」=「濁音」
日本語の「た」=「清音」
4つの音の声帯振動が始まるまでの長さ(VOT)を比べた図です。
「東京都立大学日本語教育リソース」のHPより
日本語が、口腔内の閉鎖を解放(子音爆破)させる前に声帯振動があるかないかで、「清音」(声帯振動なし)と「濁音」(声帯振動あり)を区別しているのに対して、
中国語は、声帯振動が始まるまでの長さ(気息の時間)で、音を区別しているのだそうで、
上記のVOTの図を見ると、
日本語の「た」と中国語の「搭da」は、気息の時間の長さは似ているようなので、
日本人の耳には明らかに「だ」(濁音)と聞こえる「搭da」のような音と、日本語の「た」を混同してしまうのでしょう。
日本語では「有気音」「無気音」の区別を認識したりはしませんから、
私たちネイティブの耳はその違いを意識してはいないのですが、
中国語母語話者用の動画には、
如果以声带振动的开始点做比较,中文的无气音较接近于日文的有声音,中文的有气音则和日文的无声音较为相近,因此我们很容易误认为
无气音=有声音,有气音=无声音。
声帯振動が始まった地点の音で比較すると、中国語の無気音(搭daなど)は、日本語の有声音(濁音)に似ており、中国語の有気音(他taなど)は、日本語の無声音(清音)に似ているため、中国語母語話者にとっては、無気音が有声音(濁音)で、有気音を無声音(清音)なのだと誤認してしまいやすい。
また、
「た」には、それぞれ有気音と無気音の「た」が存在しており、
例えば、「歌(うた)」や「楽しい(たのしい)」のように、
語中語尾にくる「た」は「無気音」、語頭にくる「た」は「有気音」である場合が多い。
つまり、無気音である「うた」の「た」を濁音だと勘違いしてしまいやすく、逆に、有気音である「たのしい」の「た」については「だ」と混同してしまうことはあまりない。
と説明されていました。
※他の破裂音の音:「た・て・と」・「だ・で・ど」、「か」・「が」行、「ぱ」・「ば」行についても同様に注意が必要とのことです。
まとめますと、「有気音」「無気音」という観点で音を区別している中国語母語話者の人にとって、
発音で間違えやすいのは、以下のパターンだそうです。
① 語中語尾にくる「清音」(無声音) 例)「歌(うた)」
② 語頭にくる「濁音」(有声音) 例)「ゴム」
韓国語母語話者も上記の通りだそうです。
そこで、そのような中国語・韓国語母語話者への発音指導をどうしたらいいのかということですが、
学習の初期段階で、母語と日本語の音声体系の相違を分かりやすく説明することで意識させ、反復練習をすること
が非常に効果的なのだそうです。
東京都立大学日本語教育リソースのHPには、そのための中国語による説明、練習問題がついています。
活用できそうですね。(韓国語のものはないのかな。)