見出し画像

Autumn Reading

「最近、越してきたんだって。話してみて!」と、お友達から突然電話があり、「もしもし?」と言うと、向こうも「もしもし」と返してきた。

すごく近くに住んでいるとわかり、新顔Sさんと近所のパブで待ち合わせることに。

海外生活で日本人と距離を置く人も多いと思う。
日本人というだけの繋がりで、友達になれるわけではないのだけれど、私はすぐ会いに行ってしまう。同胞として助け合えればいいなっと思うし、また、私は他人に会うのがそれほどストレスではないせいもある。

パブに現れたSさんはおとなしい感じの人で、同じポッドキャストを聴いたこともあって、初顔合わせで3時間も話してしまった。
読書家の彼女に何冊か本を紹介してもらった。
私は「できるだけオンラインショッピングをしない」という、変なポリシーがあるので、町の本屋か図書館で手に入るものを読んでみることにした。

Book Clubというものがある。本好きが何人か、月1くらいで集まって、同じ本を読んできて感想を言い合うというのだ。
面白そうだけど、私は英語を読むスピードも読み込む能力も劣るので、入会したことはない。ただ一度だけ、集まりに誘ってもらったことがある。

その時の選書は「Fried Green Tomatoes (Fannie Flagg著)」だった。日本でも映画を知ってる人が多いと思う。私はタイトルだけ聞いたことがあった。
夕方、メンバーの一人の家に集まって、映画を観たあと、ワイン片手に本と映画の感想を語り合うという企画だった。私は本を読んでいないので、映画だけ観て、後はみんなの感想を、つまみを食べながら聞いていただけ。それでも、いろんな意見が出たり、映画との比較が面白かった。
アメリカ人のメンバーが、フライドグリーントマトも作ってくれたりして、楽しい集まりだった。

去年のこと、ポッドキャストの「超相対性理論」で、三人がそれぞれ本を勧めあうというエピソードがあった。その中で、ヒロさんが龍之介さんにおすすめした本が「短く」て「英語」なので読んでみた。そしてまた三人の感想を聞いてみると、なんだか私も「ブッククラブ」に参加したような錯覚になって楽しかった。ちなみにこの時の本は「Cathedral (Raymond Carver著)」

さて、Sさんに紹介してもらった本を、やっと読み終わった。自分のボキャブラリーの少なさに「よくこんな単語も知らずに生活できてるな!」とショックを受けながら、辞書を片手に読んだ。

「Exhalation (邦題「息吹」Ted Chiang著)」

SFの短編集。最初に収録されている"The Merchant and the Alchemist's Gate"という中東の商人の話が面白かった。つい先日まで読んでいた本が中世のイスタンブールが舞台だったせいか、はたまた私が単に中東文化が好きだからか。
表題の"Exhalation"も考えさせられる一作だ。不思議だが、ビジュアル的に美しい話だなぁと感じた。

"~ what makes a relationship real; the willingness to expend effort maintaining it is."
                          from Story note, Ted Chiang

Sさんに連絡してみようかな?とも思う。実は友人関係を築くのに失敗したことが何度もある。私は誰とでも友達になろうとし過ぎるのかもしれない。すべての人が気が合うわけではないのに。

でも、これがきっかけで小さなブッククラブができるかも知れない。そんな付き合いが出来たら面白いかも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?