昔の布
今、母が遺した布で縫物を試みている。
母は教師になる前に和裁を習っており、仕事と農作業の合間にいつも何かを縫うか、編むかをしていた。
編み物にせよ縫物にせよ、母は化け物のように早く、毛布を手編みで作ったものが何枚もある。
ちなみに重たくてかけることができない。
先日、布団カバーを手縫いで縫い始めたのだが、
手が痛い。
布と簡単に言ったが、
10トンくらい存在する。
買った母が一生かけて縫えてないから、私などは
おそらく7回生まれ変わっても縫えない。
実は言いたいことからそれたのだが、昔の布は非常に丈夫でほとんど色あせしない。
1980年当時のハンドメイドのカードに「ワンピース製作費目安4800円」とか書いてある。
1970年から1980年は高度成長期なので、1980年の物価が高かったのかもしれないが、ワンピースは2メートル程度で縫えるので布1mに2400円かけていることになる。
その時代に縫物で普段着を作っていた人、母も含めて、
「縫うより買うほうが安いのよ。縫う手間もないし。」とレディメイドの服を差して言っていた。
布の質が高い時代だったかもしれない。
母が買った布はほとんど色あせしていない。
だから処分に困ってもいるのだけど。
レディメイドという言葉も久しぶりに使ったが、オーダーメイド、ハンドメイド、レディメイド、すなわち「既製服」が混在していた時代、もちろん、今でもオーダーメイドもハンドメイドも存在するが、大半がレディメイド=既製服で占められている現在に比べて、大変夢のある時代でもあった。
冬に登校すれば、女子の大半が休み時間に編み物をしている。
ジェンダーフリーとか言わないで欲しい。
事実を述べているだけだ。
男子もやりたければやっただろうけど、やりたいと言う人は特にいなかった。
なんなら私もやりたくないからやらなかった。
手持ちのバッグも手製。
さすがの私もこれは作った記憶がある。
友人の一人は、普段着がお母さんのお手製だった。
多分、縫物は料理と同じ感覚だったのだろうけど、
当時のワンピースの縫い方を見ると、「所要時間5時間」とか書いてある。
こんな時間ではワンピース縫えないよ・・と思って、最近のネットの記事を見たら「ワンピース製作所要時間2時間半」とか半分の時間で出ていた。
プロじゃないんだからと言いたいが「所要時間48時間」とか言われたらそれだけでやる気がうせるので仕方ないかもしれない。
自分の手から自分だけのオリジナル服。
作る前からわくわくしているが、
いつまでたっても
型紙すら用意できていない。