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[weryfikacja 検証66]監修者による写真掲載 - ノクターン第2版
ノクターン日本語版では 第1版・第2版ともに 弟子の楽譜への書き込み部分の写真が1点掲載されています。 しかしこの写真は監修者の先生が選んだもので、もとのポーランド語/英訳版にはありません。
第1版では監修者がポーランド語/英訳版にない項目を増やしている
第1版第1刷では、写真は「演奏に関する解説」に載っています。この ノクターン 嬰ヘ長調 作品15の2, 第12, 18, 20, 48, 58小節への「演奏に関する解説」(項目全体が監修者の先生による大変に長い[訳注]、つまり監修者注からなっている)もポーランド語/英訳版には存在せず、日本語版だけです。監修者の先生がわざわざ項目を増やしたのです(ポーランド側は何も聞いていないとのこと)。
![](https://assets.st-note.com/img/1689659915194-zEG0gV6Lsx.jpg?width=1200)
「演奏に関する解説」
第2版で「演奏に関する解説」から「原資料に関する解説」へと引っ越し
第2版第1刷で、なぜかこの長い[訳注]は「演奏に関する解説」から「原資料に関する解説」へと引っ越しています:
![](https://assets.st-note.com/img/1689659940559-4P5jmZsjX3.jpg?width=1200)
「原資料に関する解説」
どの作品のどの部分の写真を載せるかの選択は監修者の先生によるもので、もちろん原著者(エキエル先生、カミンスキ先生)はまったく関わっていません。
ナショナル・エディション原版(ポーランド語/英訳版)ではこうした写真を解説には掲載せず、(要約ではないフル・ヴァージョンの)別冊やウェブサイト mUltimateChopin.com で見られるようにしています(そうすることを「原資料に関する解説」の「はじめに」で明記)。
ペダルのための写真なのに、ペダル記号は切れていて見えない
監修者の先生が「2」の書き込みを読者に見せてあげたいのなら、 “2つのペダルを用いること”について示したいのなら: ①ウナコルダではない、右ペダル(ダンパーペダル)記号の部分をなぜ切ってしまうのでしょうか。弾く人は「ここでウナコルダなら、もとのペダル記号はどうなっていたのかな」と当然見たいと思う。しかしこの写真ではまったく見えない。
ペダルについて論じているのに、ペダル記号の部分が見えないのです:
![](https://assets.st-note.com/img/1689660493346-YbJpKfXxmT.jpg?width=1200)
本当はここに もちろん通常のペダル(ダンパーペダル)表示があります。 なぜ見えないように切ってしまうのか。
そしてこの部分は ウナコルダ(ソフトペダル)で dolcissimo です:
![](https://assets.st-note.com/img/1689660581662-FNAIziW1qr.jpg?width=1200)
強弱記号もわからない
②デュナーミク(強弱)は p か pp だったと思うけど・・・と確かめようとしても、日本語版解説にある写真では第17小節に p が書かれていることがわからない(ポーランド語版と違い 解説が切り離されていないため、本体の楽譜確認にも時間がかかる):
![](https://assets.st-note.com/img/1689660629570-MbztGyGhoJ.jpg)
実際には デュナーミク(強弱)は p で、dolcissimo で ダンパーペダルの指示があり、 そこにウナコルダ。 前の小節から見ればすべてを自然に理解できます。言うまでもありませんが、 私たちは音楽を読んでいるのです:
![](https://assets.st-note.com/img/1689660673819-CxfGDjkB24.jpg?width=1200)
日本語版の写真は “音楽のための掲載“になっていない
「ウナコルダなら、右ペダルはどうなっているのかな?」と当然見ようと思うのに、日本語版の写真では切(ら)れている。
dolciss. だから きっと p か pp かな、強弱はどうだっけ?と思ってもわからない。 日本語版のこの写真は、音楽のための譜例掲載になっていない。
数字の2だけのために ノクターン唯一の写真として選んだのか
![](https://assets.st-note.com/img/1689660731663-gQoLSyXGbI.jpg?width=1200)
監修者の先生は「数字の2だけを見せること」が「この巻で唯一の写真掲載の目的」で 最重要だと考えていらっしゃるのでしょうか。
第2版の へ音譜表は3線しか見えない
私たちは音楽を伝えるために楽譜を使います。 第1版で既にデュナーミク(強弱)が わからずペダル表示も見えなかった。さらに③第2版になると、ペダル記号だけでなく へ音譜表までもが切られ、3線しか見えない。
音楽家の譜例の切り取り方とは到底信じられません。これでは音楽が読めない。
![](https://assets.st-note.com/img/1689660776413-4YMv7FFm7l.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1689660805239-jUHWBD6YHP.jpg)
第2版で 長い[訳注]が引っ越した先の「原資料に関する解説」でエキエル先生とカミンスキ先生が言いたいのは、左ペダル(ウナコルダ)のことです。2の数字そのものは本質的な事柄ではないのです。
(参考)
原資料をこちらのサイトで見れば、ペダル記号を切られて悲しんだり デュナーミクがわからなくて困ることもなく、落ち着いて “音楽を読む”ことができます (全作品が載っているわけではありませんが):
multimatechopin.com/en/ chopinonline.ac.uk/ocve/browse/pa…
![](https://assets.st-note.com/img/1689660858956-d4HxvQNE8f.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1689660875649-CddminWLWD.jpg?width=1200)
Special thanks: mUltimateChopin, OCVE
日本語版ノクターン第2版に見られる問題点は、これら 1~66 だけではありません。そして深刻な問題があるのはノクターンの巻だけではありません。
こちらの ↓ 44ページからなる検証サイトで、検証 weryfikacja の続きをご覧ください(ノクターン第2版、スケルツォ、ワルツ(A)他):
“現在の日本語版は残念ながら ①ショパン・コンクールを考える方②音大生・音高生③ピアニスト④教授⑤研究者⑥ピアノの先生⑦生徒さん⑧趣味でお弾きになる方 が安心して読める水準にあるとはとても言えません。なぜか。その根拠、欠陥の証拠がここにあります。
ポーランド語原文・英訳・日本語訳を並べ、誰もがすぐに比較/確認できるようにし、自筆譜や初版も見られるように。現在の日本語版の深刻な状態がわかります。“監修(という名の大変な破壊)”なしでの各巻やり直しが必要。”
日本語版で一体何が起こっているのか:
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![Yuko Kawai 河合優子](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58688699/profile_4b6195a8c4e19aefc590a43e3c9ffba3.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)