ナショナル・エディション日本語版ノクターン 訂正表11-20追加、正誤表訂正のお願い、そして御礼
検証者の先生へ、訂正表 11-20 追加のお願い
(チヒさん、カミンスキ先生、ポーランド側スタッフ3名に下記内容をお送りしました。2021年12月のポーランド語リスト(396)とは異なり、今回の10点セット(11-20)は日本語です。チヒさんが検証者の先生に送ってくださるとのこと。
2022年4月20日、ワルシャワ )
訂正表 11-20 追加のお願い
(11番目と12番目は、リスト提出後に監修者による変更が新たに見つかったものです。この11-20の10点、必ず直さねばなりません。これらはわかりやすいので、きっと検証者の先生は見落とされたのだと思います。)
11.
p.7「演奏に関する解説」楽譜に関する注意
(誤)太めの数字
↓
(正)縦にまっすぐで少し大きめの数字
(原文) nieco większymi cyframi o kroju prostym,
12.
p.7「演奏に関する解説」楽譜に関する注意
(誤)細めの斜体の数字
↓
(正)小さめの斜体の数字
(原文) mniejszymi cyframi pochyłymi,
(11,12 への解説)
監修者の先生がある日「大きい」を「太い」に、「小さい」を「細い」に変えてしまい、最終稿まで気づけないまま出版されてしまいました。結果、原版で示している数字の大小が反映されず、同じ大きさで印刷されてしまっています。数字フォントのはっきりとした大小差が必要です。ノクターンだけでなく、バラード、ワルツ、スケルツォ(、エチュード)も、つまり全巻、全員の分を翻訳・数字フォントともに直す必要があります。
13.
p.7「演奏に関する解説」楽譜に関する注意
明確に判読できない
↓
楽譜の判読が1種類に限定できない
(原文) z niemożności jednoznacznego odczytania tekstu
(解説) 「判読できない」だけではヴァリアントが生まれる理由になりません。2種類にしたからヴァリアント(別の可能性)になった。その意味が通じないといけないのです。
14.
p.7「演奏に関する解説」楽譜に関する注意
右手と左手による音の取り分けを示す線
↓
左右の手の分担に関する線の表示
(原文) Zaznaczone linią przerywaną wskazówki dotyczące podziału między prawą i lewą rękę
(解説) 「分担する」「(どちらかの手で)とる」でしたら大丈夫です。しかし「取り分け」に変更されてしまっている。めいめいのお皿にお料理を取り分けるのとは違うのです。
15.
p.53 脚注
ノクターン ロ長調 作品9の3
第26小節の最後と第27小節の最初のe2音は、打鍵し直すべきである。
↓
e2 は 第 26 小節の終わりも第 27小節の頭も、どちらも繰り返して弾かれるべきである。
(原文) dźwięk e2 należy powtórzyć zarówno na końcu t. 26, jak i na początku t. 27.
16.
p. 59 脚注
ノクターン ロ長調 作品9の3
e2音は打鍵し直すべきである。
↓
e2 は繰り返して弾かれるべきである。
(原文) Dźwięk e2 należy powtórzyć.
17.
p.131 脚注
ノクターン ロ長調 作品62の1
和音の上の音は打鍵し直すべきである(第 37, 39, 40, 58 小節)。
↓
和音の上の音も繰り返して弾かれるべきである(第 37, 39, 40, 58 小節)。
(原文) Górne dźwięki akordów należy również powtarzać (t. 37, 39, 40, 58).
18.
p.135 脚注
ノクターン ホ長調 作品62の2
dis1音は打鍵し直すべきである。
↓
dis1 は繰り返して弾かれるべきである。
(原文) Dźwięk dis1 należy powtórzyć.
(15,16,17,18 への解説・強くお願い)
エキエル先生、カミンスキ先生が打鍵という言葉を使うのは、何かを同時に弾く場合、つまり時間/運動性について述べている時です。繰り返して弾く、つまり響きを再び生まれさせるという場合、打鍵という言葉は使っていません。「結局同じでしょ」「それほど問題ない」と片付けてはいけない。読む人は(机の前だけでなく)何よりピアノの練習中に、譜面台の楽譜を見つめ、自分の生み出す響きに集中し切っている時、意識や神経が研ぎ澄まされている時に読みます。この楽譜を使う日本中の方々、ピアノを弾く私たちの感受性と情熱について想像力を働かせ、もっと信頼し、もっともっと音楽家を思いやってください。監修者の先生は打鍵という言葉に安易に変えてしまいましたが、ここで変えるべきではありません。
全身を耳にして自分の響きを聴いている状態、聴覚や触覚、神経が大変に研ぎ澄まされた状態で、 “打鍵し直す”という(監修者/全音が改変した)言葉が目に(脳に)入ってくるのと、“繰り返して弾く”(つまり再び弾く、再び響かせる。)という言葉が目に(脳に)入ってくるのとでは、違いは大きい。
19.
p.10 演奏に関する解説
ノクターン ロ長調 作品32の1
第9小節〔右手〕
ais1音は左手の最初の音符と同時に弾くとよい。
↓
ais1 は左手の最初の音符と同時に。
(原文) ais1 razem z 1. nutą l.r.
20.
p.10 演奏に関する解説
ノクターン ロ長調 作品32の1
第40,61小節〔右手〕
トリルの開始は、gis1音を左手の Fis1 音と同時に弾くとよい。
↓
トリルの開始は、gis1 を左手の Fis1 と同時に。
(原文) Rozpoczęcie trylu: gis1 razem z Fis1 w l.r.
(19,20 への解説・強くお願い)
「演奏に関する解説」は「ショパンの記譜法の適切な読み方」に関する解説です。言い換えれば「ショパンが自分で書く音楽表記を、彼自身どのように理解し、実際どのように実現していたか、という問いに答えるもの」であるとエキエル先生は書き、機会あるごとにそう述べている。「同時に弾くとよい(と自分なら思う)」とは書いていない。「同じようなものでしょ」と片付けないでいただきたいのです。出版社の「このように弾けば演奏するうえで効果的」(全音HP特設ページ)といった理解では大変に困る。「ショパンはこう考え、こう書き、こう弾いていた。こう捉えていた」という情報からの解説です。原文のニュアンス、そして楽譜を読む人の繊細さと深い理解力をもっと尊重してください。監修者の先生は原文にはない「弾くとよい」をここで加えるべきではありません。
正誤表 8,9 について訂正のお願い
正誤表1-10のうち、8番目と9番目について訂正をお願いいたします:
⑻ p. 22 ノクターン ロ長調 作品32の1, 第21, 42小節
(誤・監修者)Wf(→Wn1→Wa1→Wa2)
↓
(検証者)Wf(→Wn1, →Wa→Wa2)
↓
(翻訳者)Wf(→Wn1, →Wa1→Wa2)
⑼ p. 87 脚注
(誤・監修者)弟子のレッスン用楽譜ではffである。その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる(p. 40の脚注を参照)。
↓
(検証者)弟子のレッスン用楽譜ではffである。[訳注:その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる] (p. 40の脚注を参照)。
↓
(翻訳者)弟子のレッスン用楽譜ではffである。p.40の脚注を参照。
(原文)W egzemplarzu lekcyjnym ff. Por.uwagę na s.18.
(解説)「その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる。」は訳注でも訳者注でもなく、監修者/全音注です。確認も相談も何もなく、知らないうちに監修者/全音によってこの文が付け加えられ、出版されていました。原版では W egzemplarzu lekcyjnym ff. Por.uwagę na s.18. のみです。
御礼
最後に、6番目・7番目についてお礼です。
⑹ p. 21 ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第1小節〔左手〕
(河合優子+米谷治郎先生+田村進先生・1999年出版、2020年2月提出)
ヴァリアントの弾き方は次のような姿が許容されるのではないかと思われる。
↓
(誤・監修者が2020年12月に変更。その結果、dopuszczalne の意味が失われた)
ヴァリアントは次のように演奏するのがよいと思われる。
↓
(正・検証者)
ヴァリアントは次のように演奏してもよいと思われる。
(原文)
Dlatego dopuszczalne wydaje się wykonanie wariantu w następującej postaci:
⑺ p. 21 ノクターン 変ニ長調 作品27の2, 第9〜10小節〔右手〕
(河合優子+米谷治郎先生+田村進先生・1999年出版、2020年2月提出)
スラーの書き方の不正確さは続くWnとWfで蓄積され、その最後の版(→Wa)では f2音はタイになっていない。
↓
(誤・2020年12月、監修者による変更)
これが Wn で不正確に記譜され、それをもとに製版された Wf(→Wa)では f2 音がタイで結ばれていない。
↓
(2021年6月)
これがWnとWfで不正確に記譜され、Wf(→Wa)では f2音がタイで結ばれていない。
↓
(誤・2021年6月以降、さらに監修者により変更)
これがWnで不正確に記譜され、それをもとに製版されたWf(→Wa)ではf2音がタイで結ばれていない。
↓
(正・検証者)
その後、WnおよびWfでタイの書き方はさらに不正確なものになり、Wf(→Wa)ではf2音がタイで結ばれていない。
(原文)
Niedokładności w zapisie łuków, nawarstwiające się kolejno w Wn i Wf, spowodowały, iż w tym ostatnim wydaniu (→Wa) nuta ta nie jest przetrzymana.
(6,7 への解説)
2021年6月提出の最終ファイルには、監修者の先生が(翻訳者に確認・相談することなく)意味を変えてしまった部分が含まれており、ぎりぎりまでそれらを探し、直してきましたが最後まで気づけなかった箇所があります。そのため、2020年2月(最初期)の原稿のほうが „最終稿” 2021年6月14日付ファイルよりも適切だというところがいくつもあります。
4月30日までにお願いできましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
ご質問がございましたらご遠慮なくなさってくださいませ。
お忙しい中、貴重なお時間を割いていただきますことに感謝いたします。
2022年4月20日
河合優子
(追記)
PWMのチヒさんからお知らせがありました。「訂正表への 11-20 追加は必要ない」とのお返事であったと。しかし不思議なことに、なぜ訂正の必要がないか「その理由、根拠はない」のだと。
「訂正しなければいけないことははっきりしています。もし検証者の先生が本当に訂正不要とおっしゃるのなら、その根拠を示していただいてください」とお願いし、再回答を求めていますが 、(4か月が経過しても)検証者の先生からお返事はありません。
(参考)
エキエル編ショパン・ナショナル・エディション日本語版、
一体何が起こっているのか《1》
一体何が起こっているのか《2》ーー私たち(国内外)の声を受け止めて
[検証・ノクターン第2版、ワルツ、スケルツォほか]
残念ながら第2版は(販売停止になった)第1版よりもはるかにひどい状態です。ショパン・コンクールを考える方をはじめ、私たちが安心して読める水準にあるとはとても言えません。その根拠、欠陥の証拠がここに。
Będę wdzięczna za wsparcie! いただいたサポートはリハビリに、そして演奏活動復帰および再レコーディング準備のために。