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来年の市場改変を機にESGが更に加速する?!企業のリーダーが目指すべきところとは?

2022年4月に株式市場の区分けが改変され、「東証一部、二部、ジャスダック、マザーズ」などの呼び名がなくなり、プライム、スタンダード、グロースとなる予定と発表されている。東証によると、”日本経済の持続的成長に向けて、上場会社各社の中長期的な企業価値向上とベンチャー企業の育成が必要かつ不可欠”であることが理由だそう。

この改変では、企業が取り組むべき指標を具体的に示した、”コーポレートガバナンスコード”が改訂され、多様性の確保やサスティナビリティに関する項目が新たに追加されている。これを機に企業のESG(E:Environment・環境、S:Social・社会、G:Governance・ガバナンス)への取り組みがより求められることが予測される。

投資家からの強いプッシュもあり、ESGへの取り組みは既に始まっているが、果たして正しいゴールは何だろうか。企業のリーダー達は具体的に何を目指したら良いのだろうか。読者と一緒に考えて行きたい。

正しい指標を知る

まず初めに言える事は、売上・利益の数値的な結果のみならず、社会の為になる行動をいかに行ったかどうか、の数値化出来ない分野も大切だということ。さて、その数値化出来ない分野とは何か。

シンプルで分かり易い為、筆者が気に入っているのが、”トリプルボトムライン”というもの。90年代にイギリスのジョン・エルキントンによって提唱されたもので、Profit・利益、People・人、Planet・環境への貢献度を評価すべきという内容である。頭文字のPが3つあることから、トリプルという名称と、これを評価しようということから、ボトムラインとされている。

●Profit・利益:言わずもがな、これは明快にいかに利益を出すか。
●People・人:その組織に関わる全ての人に考慮がなされているか。例えば、顧客や自社の従業員のみならず、委託先の企業で働く人や、その製品を運ぶ人、地域の人たちも含まれる。
●Planet・環境:プラネットを直訳すると、惑星であるが、地球を示しており、特に環境を意味している。環境への配慮が評価すべき箇所となる。

企業の責任が問われた事例

筆者がバングラデシュに毎月のように出張していた時期に起きた悲劇がある。それは、2013年4月のバングラデシュ縫製工場ビル崩壊事故である。その工場では、主に欧米企業の製品生産を請け負っていた。ビルが崩壊した直接の原因は、家主による違法建築の積み重ねであったが、世間の批判は家主のみならず、生産の発注をしていた欧米企業にも向けられたのだ。

「外注先の事であっても、その労働環境を確認する義務があり、責任範疇である。」というもので、より高い収益を上げる為に、より製造コストが安い地域へ発注する企業が、果たして安さ故に劣悪な環境で働く人に一切の責任が無いと言えるのだろうか、と問われたのだ。

これを受け、多くの企業が請負先の労働環境や排水などの状況をリサーチし、倫理的な行動指標を掲げ、取引するすべての企業にその署名を求めるようにもなった。

このようにして、「自社のみならず、関連するすべてのサプライチェーンに対して企業には責任がある」という通念となった事例と言える。

何をすれば十分なのか、取り組みのレベルを知る

では、一体何をすれば十分な配慮をしていると言えるのだろうか。あなたが企業のリーダーだったと仮定して(又は実際にリーダーであるかもしれない)、どんな行動が当てはまるのかを一緒に考えて欲しい。

以下のピラミッド図は企業の社会責任について段階化したもので、その行動はどのレベルにあるのか、を判定する際に参考にすることが出来る。

ピラミッドの下から見て行こう。

●利益を出せば良いのか
 つまり、黒字であれば良しとする。
●法律を守れば良いのか
 合法であれば問題ナシと考える。
●倫理に問題がなければ良いのか
 合法かつ、人としての配慮があれば十分と考える。
●善意を持った対応が出来れば良いのか
 合法であり、人としての配慮はもちろん、更に良くなる事を考える。

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キャロル(1991)

取り組みの段階をピラミッドで表している為、当然ながら最上位が良い。更に良くなる事を考え、行動するのは一見骨の折れそうなことであるが、これこそリーダーが実行すべき箇所なのだ。

業界のインフルエンサーになろう

正しいこと、より良い事をする。とてもシンプルな事ではあるが、手間やコストを考えるとついつい後回しになってしまいがちである。
しかし、この手間とコストを戦略的に扱うことによって、あなたの組織は競合他社よりも抜きん出て、より良い事をしている会社としてファン(顧客)や社会的イメージを得る事が出来るのではないだろうか。

リプトンは利益率が下がることになっても、茶葉の生産地の環境や働く人々を守ることを決断し、レインフォレスト認証の適合を実現した。この努力に消費者が反応し、売上額が上がり、結果的には増益につながったそうだ。

ウォルマートはプラスチック削減の為、取引先の洗濯洗剤メーカーを集め、ボトルの小型化に協力して貰えるよう呼びかけようとした。メーカー担当者の中には商品の小型化は売り場の棚面積が下がると考え反対する者も居たが、これは1企業のためではなく、人類全体に影響することであると根気強く説得し、了承を得て小型ボトル洗剤の商品化に漕ぎつけた。
商品が小型化された結果として、プラスチックが削減されたのみならず、1つの段ボールに入る商品量が増え、1度により多くを運べることで輸送トラックの配送回数を下げ、排気ガスを削減する事にもつながったそうだ。

1つの企業が革新的な事を成し遂げた場合、周囲は大きな影響を受ける。
ESGは社会にとって非常に重要なキーファクターであり、企業のリーダーが目指すべきことは、業界を牽引するような力強いリーダーシップを発揮することではないだろうか。

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