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私の選択

「ジュエリーが女性の指に柔らかなリボンのように結ばれる、これが私の望み。私のリボンはしなやかで自由。」
と語り、リボンの形のジュエリーを発表したのは、ココ・シャネル。1932年のこと。それは当時にして革新的なコンセプトだったと思う。
以前ジュエリーブランドのディレクターをしていた時、シャネル展でこのメッセージと美しいリボンのジュエリーを見て、自分がジュエリーに関わっている意味を深く感じ腑に落ちたことがある。

今でこそ、女性たちは自分のためにジュエリーを選び、自由にそれを楽しめる時代だけれど、ココ・シャネルがリボンのジュエリーを発表した1932年は、ジュエリーは男性から女性に贈られるもので、約束や契約を意味するものが多かったと思う。それは幸福の象徴でもあったと思うし、どんなに恵まれた境遇の女性でも、自分の自由な人生を投げうつ覚悟で手にすることも多かったのではないか。
そんな当時のジュエリーの解釈を変えて、自由で柔らかに結ばれる"ファインジュエリー"を提案したココ・シャネル。
自分で選びとる強さと、いつでも解いて自由になれるゆるやかさを美しいデザインとともに女性たちに投げかけた。デザインとスタイルという武器で女性の新しい生き方や選択肢を創り出した。

生きることは、日々の選択の繰り返し。知らないうちに自分でその小さな選択をしている。その日着る服、その日食べるもの、その時話す言葉。そしてその延長線上にある誰と一緒にいるか。何をするか。どこで働くか。どう生きるか。

長くファッション業界にいて、違う業界で全く違う仕事をすることにした時、周囲の人から「次何するの?」と聞かれて答えた際に、若干の驚きとともに、うっすらとした失望「もったいない」「なぜ?」を含んでいた反応を多く感じた。自分の選択が間違っているとは思わなかったけれど、徐々に自分のことを話すことや発信することが億劫になってしまった。

18年過ごした会社を辞めた後、5年間で2社勤め、2月1日にまた新しい会社での仕事をスタートする。

自分の選択を正しいと言えるのは、なかなか難しいことだ。ふたつ比べることができないから。
私がファッションや事業を通して表現したかったことは、美しいものやその世界への憧れ、共感、高揚はもちろんあるけれど、人がどう生きて、どう選択し、どう満たされるかを叶えたかったからだと思う。

それができれば、どこで何をやっていても自分の目的は叶えらえると考えたこと、また会社の組織にいて、ある程度の年次やキャリアになると、経営側に入り込まないと、働く幸せは作り出せない。
人によって働く幸せは違う。だから難しい。
でもそれを実現しないと、自分の事業が薄っぺらくなり持続可能にならない。
まず半径5メートルの人を幸せに、そしてそれらの人たちのインフルエンサーでいることが自分の強みだと思った。

そんなわけで、自分は少しづつ異なる業界、職種を変えながら、自分のキャリアを選択してゆく。自分の選択に縛られず、人からの期待に縛られすぎないように、そっと仕事と自分をリボンで結ぶ。
私のリボンもしなやかで自由でありたい。


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