ポルトガルのコーヒー事情その2
日本に住んでいる人たちから見たら意外かもしれないけど、こちらのコーヒー好きの間では(パリやロンドンはどうなんだろうか?)、日本はコーヒー大国。
日本ではそれは色んなエキスパートによるコーヒーが飲めるし、こだわりのコーヒーがある喫茶店や、カフェ、焙煎所など、こちらで飲むよりもよっぽどバラエティ豊かでこだわり抜いた店が山ほどある。
エスプレッソは、もちろんヨーロッパが本場で、きっとイタリアなんか、さぞ美味しいエスプレッソが飲める店がたくさんあるのだろう。それでも日本人のマニアックさは、ちょっとしたものだと思う。
こっちで売っているドリッパーや色んな器具は、カリタとかハリオとか、日本製のものも多いのも意外だった。
ヨーロッパ諸国でドリップコーヒーはどうなんだろう?少なくとも、ポルトガルでは、ハンドドリップコーヒーが見直されているのは結構最近。しかも、コーヒーマニアの間でだけの話。ハンドドリップコーヒーのことを、ハリオのV60からとって、V60とメニューに書かれているのも興味深い。
それから、スペシャリティコーヒーの話。
数年前から日本でも浅煎りスペシャリティコーヒーが馴染み深くなっていると聞いた。こちらでも、少しずつそういったコーヒーを出す店が増えてきている。と言っても、こだわりの食材を扱うレストランやカフェ、焙煎所もかねているお洒落なカフェに限っているけれども。バリスタがいる、ラテアートもできるカフェも少しずつ増えてきていて、よく「バリスタ募集」の広告も見る。
ゴンサロが経営するsgt.martinhoから仕入れるコーヒーも浅煎りのものが多く、それは素晴らしい香りの豆ばかり。ただ酸味はやっぱり出るので、豆の挽き具合とか、量の微調整はまだまだ未熟で結構難しい。でも、気づくお客さんもいて、「これどこのコーヒー?」などと地元の人に聞いてもらえると、とっても嬉しかった。
自分がこういうコーヒー漬けの毎日だし、なんと言ってもポルトガルでは、コーヒーは1日に2、3杯は飲まれているもの。だから、手をかけて収穫されている、こだわりのスペシャリティコーヒーは、すぐに浸透するものだと思っていた。でも、ゴンサロに現状を聞いてみると、残念ながら、全然そうじゃないらしい。
やっぱり大手のコーヒー会社の深煎りのコーヒーの方が安いし、浅煎りのものは質は良いけど酸味が気になる。それは私もとてもよくわかるから、他の国のスペシャリティコーヒーは深煎りなんかもあるのか、一度飲みに行ってみたい。
大体こちらでコーヒーは朝仕事前にエスプレッソをキュッと飲んだり、食事の後にさっと飲む習慣的なもので、味自体にそこまで深さを求めていないのかもしれない。
それでも、「生産者にも利益をもたらすコーヒー」はやはり少し値段は張っても浸透してほしい。
ゴンサロがいうには、まだポルトガルにはコーヒー好きのコミュニティみたいなものも存在しないし、スペシャリティコーヒーのオーダーがそこまで増えているわけでもないらしい。
これって、私たちが店をオープンさせた8年前に、オーガニックワインやナチュラルワインだけを扱っていたことを批判するお客さんがたくさんいて、「もっと一般的に知られているワインを置け」とよく言われたのだけど、2年ほど前に急に自然派ワインがブームになって、そんな批評をする人が急にいなくなり、逆にどんなポルトガルの自然派ワインがあるのか興味を持って聞くお客さんが増えてきたのと似ている。
それでも、最近スーパーのコーヒー売り場を覗いてみると、大手の会社もアラビカ種だけのコーヒー豆を売り始めたりしていて驚いた。やっぱり大手メーカーにも、少しずつ変化が起こり始めている?!
だから、もしかしたら、こうやって情熱をかけて頑張っているゴンサロみたいな人たちが注目されるのは時間の問題だと思いたい!