スウェーデンの工芸作家Michaelのお碗
先日のお味噌汁の話に続き、今度はお味噌汁茶碗の話。
お味噌汁茶碗は、店ではお昼の定食の時以外にも、夜もよく注文が入るので、本当によく使う。
こちらの規則で、基本的に全て食洗機で洗える食器でないといけないので、普段は樹脂の物や、塗りっぽい感じのプラスティックのものをフル活用していたけど、会席料理などの、ちょっと値段もはる食事のサーブにそれを使うのは、気が引ける。
どうしようかなぁと考えていた時に、たまたまよく来る常連さんに、声を掛けられた。
「木で茶碗を作っているのだけど、もし興味があったら作りたいから連絡してね。」
彼は、リスボン在住のスウェーデン人の男性で、年は30歳くらいかな。よくお昼に、ポルトガル人の綺麗な彼女とお昼ご飯を食べに来ていた。とても物静かで、話していても、こちらから質問したことにだけ答えてくれるようなタイプで、優しそうな人だ。
元々確かIT系の仕事でこちらに来ているらしく、工芸は、数年前にどこかで習い、ライフワークとして続けているらしい。
「ちょうど味噌汁茶碗がなくて困っていたからお願いしたい!」と早速希望のサイズなどを伝えた。
「製材されていない状態の木をを削るところから始めるから、完成するまでに最低6ヶ月から9ヶ月はかかるよ」と言われて気が遠くなったけど、そんなところから私たちのお茶碗のために時間と手間を費やしてくれるとは、嬉しすぎる!
その木を削ってから約2ヶ月間乾かし、その後ついに再度作業に入れるのだそう。
だから、最初にサンプルを作って見てもらうとかは無理。彼の今までの作品を見せてもらい、それがどれもあまりに美しかったので、何ヶ月待っても、そんなスペシャルなものを、自分たちが知っている常連さんに作ってもらえることにとても意味を感じて、お願いした。値段も、彼はこの工芸を生業にしているわけではないからと、手が届く範囲にしてくれた。
数ヶ月後に、今乾燥させているところだよ、と連絡をくれた。ああ、この後あと半年くらいなのかなぁと、のんびり待っているうちに、しばらく彼が店に来ることも、連絡が来ることもなかったから、お椀のことは、本当にいつか持って来てくれるのかなぁ、くらいにゆるーく考えていた。ポルトガルに住んでから、こちらの人が好意で色々と申し出てくれても、結局そのまま忘れられていたりすることが多かったので、緊急を要すること以外は、気長に構えているようになった。
あれから約9ヶ月後くらいに、Michaelから連絡が来た。「出来上がったよ。いつ持っていったらいい?」
お椀、ついにできたんだ!早速その数日後に持って来てくれたお椀は、本当に美しかった。一つひとつ丁寧に作られているのがよくわかる。漆塗りだそうだ。色も濃い茶色で落ち着いて、とても素敵。この色だったら、洋風なスープも合いそうだな。
それから、特別な食事を出す時や、私のイベントなどでも使わせてもらってる。他の場所でのイベントで使うときは、スタッフに、「これは絶対に食洗機に入れないで!熱湯も使わないで!」と伝えて洗ってもらっている。
先日久しぶりにメッセージを交換した時に、「また色が剥げたりしていたら、漆を塗り直したりして手入れするから、いつでも連絡してね!」と言ってくれた。こうやって、手作りのものを、手入れもしてもらいながら、長く大切に使うのは、本当にいいものだな。
こうやって考えると、日本の伝統文化の工芸にこちらでも真剣に取り組んでいる人たちがいて、そんな人たちと巡り合って仕事ができる機会に恵まれたのは、やっぱり日本食料理店をやっていたからだなぁ。
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