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では、ポルトガルでの白ごはんの立場は?

何気なく描いた前回のお味噌汁のことが、思いがけず反響を呼んで、そうか、こういう日常の違いはもう今となってしまっては普通になっていたけど、日本に住んでいたら私も面白いと思っていただろうなと改めて感じました。

そうしたら、ご飯はどうなんだろう、と考えてみた。

私たちが経営していた日本食レストラン「Tasca Kome」は、日本語に直すと米食堂。Komeは日本語の「」と、ポルトガル語のComer(コメール、食べる、の意味)を掛けて出来上がった名前。

店のロゴも、この米マーク

白米は日本人にとって、なくてはならない重要な役割を果たすものだけど、こちらではどうかな?

ポルトガルも、米をよく食べる国だと思う。メインの付け合わせによく出てくるし、魚介の雑炊的な名物料理や鴨ご飯というのもある。お米料理を売りにするレストランだってオープンしたりした。こちらのお米は、日本のみたいにもっちりとはしていなくて、水分は少なめの、パサっとした、でも形は比較的日本のに似たカロリーノ米や、ロングタイプのお米があるけど、このカロリーノ米の方がよく食べられているらしい。

スーパーなどでよく見るカロリーノ米

店でお客さんたちを見ていて思うのは、こちらの人たちは、お米は味がないもの、という認識な人が多いようだ。

こちらでもお米を炊くときは、塩をなどで味付けをして、トマトを入れたり、菜の花なんかと一緒に炊いたり、雑炊にしたり。そしてそうすると、とても美味しくて手が止まらない。確かに、こちらのお米を味付けなしで炊くと、ちょっと臭みもあるし、甘味や旨味はそんなにないし、これは味付けして炊いた方がいいか、と納得。

店で定食を出す時や、夜一品で頼まれる時はもちろんご飯茶碗に入れて持って行くのだけど、そこでとてもよく見る風景は、ご飯に醤油を掛けて食べたり、汁があるおかずは、それをご飯の上に乗せながら食べる。ご飯におかずを乗せて食べるのは日本でもよくあることだし、丼物だってあるから、それはそうなんだけど、ご飯には味がないから、という大前提の食べ方は、やっぱりこちらならではだと思う。

中には、定食のご飯にはいっさい手をつけない人も、結構な頻度でいたから、ああ、勿体無いなぁ、最初に食べないって言ってくれたらいいのに、てよく思っていた。

鮭の西京焼き定食と、角煮定食。

そのうち洗い場やホールのスタッフが、「ご飯の廃棄の量がとても多くて勿体なさすぎるから、量を減らすべきだ。」と報告してくれて、それからは、定食の時は、ご飯は日本人以外は茶碗半分くらいの量で出すことにして、少し廃棄を改善させた。ご飯が好きなこちらの常連や、日本人には普通盛りや大盛りにして出したりして調節。

うちで働いていたポルトガル人の料理人は、よくカウンターでお客さんに、「角煮はご飯の上に乗せて、汁も楽しみながら食べるのがお勧めですよ!」とご飯もセットでお勧めしていた。彼曰く、白米は味がないから、そうやって味を乗せて食べるということをお勧めするのは当たり前だ、というようなことだった。だから、毎日私たちがお米の袋を新しく開けるたびに、水加減を調節したり、「今回のお米はすごく美味しいけど、新米になったのかな?!」とか、そういう白米オンリーの味の良し悪しは、何を言っているのかよく理解できないことが多いのだろう。

かき揚げ丼。こういう丼の、最後まで汁がある時は、完食してくれる。

私たちが使っていたのは、スペイン北部で収穫された日本米。これでも十分に日本で食べているお米のように美味しい、と思っていたけど、いつも日本に帰ってご飯を食べると、その美味しさに感動して、ああ、日本のお米美味しい!日本人で良かった!なんて思ってしまう。

最初はびっくりしたけど、定食の時も、夜の一品でご飯を頼む時も、ご飯じゃなくて、シャリを持ってきて、という人も結構いた。「え、シャリとおかずで食べるの?!」とか初めはなんだか嫌だなぁなんて思っていたけど、だんだんとそれに慣れてきてしまった自分がいる。自分では絶対にしないけど。。確かに、あんなに味がしっかりついているシャリは食べやすくて、それだけでぱくぱくいってしまうのだろう。

こうやって考えると、日本人は、お米そのものが持っている甘さを求めて、甘いと「これは甘くて美味しい!」となることが多いけど、こちらの人は、素材ではなく、そこにしっかりと味付けしたものを美味しいと感じるということかな?中には、「日本のご飯は甘いし粘りがあるから苦手」という人だっている。そうか、米の甘みをネガティブに感じる人もいるのかぁ!とその時は本当に意外に感じた。

日本は、お米の産地が様々なところにあって、どこのお米は美味しいとか、どこの農家さんのは美味しいとか、お気に入りのブランドがあったりするけど、こちらのお米って産地とか特に書いていないし、誰も気にしていない。

もちろん、こちらではパンもじゃがいもも、とてもよく食べられるので、日本ほどお米に対する依存度はないというのも、あるだろう。

そうそう、日本でグルテンフリーのパンやお菓子といえば、米粉が使われていることが多いけど、こちらのグルテンフリーのもので米粉を使っているものは意外と少なくて、パンなんかは、オートミールやコーンフラワー、蕎麦粉、ライ麦なんかがよく見られる。こんなところにも違いが出るんだから、やっぱり食文化は面白いな!


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