お節介おばさん爆誕!〜ドラッグストアでの出来事
ドラッグストアで買い物を済ませ、店を出ようとしたその時、店舗入口に積まれている商品が目についた。
それは、たった今、私が買ったばかりの商品の箱売りだった。私が惹きつけられたのは、その段ボールに小さく貼ってあるPOPの文字だった。
「x,xxx円お得!詳しくはスタッフにお声掛け下さい」
その箱売りの段ボールには、今私が購入した商品が10パック入っている。
(x,xxx円もお得なら、この箱売りの方を買えばよかったかな。だけど、あれ?この箱売りはいくらするんだろう。値段が付いていない…)
私はPOPに書いてあるとおり、お店の方に聞いてみることにした。
お店のスタッフに声を掛けようと思うものの、なかなか姿が見えない。やっと見つけたと思った若い女性スタッフも、レジの応援に呼ばれているらしく、目の前を通り過ぎるも声を掛けることはためらわれる。
やっと見つけた!と思った白衣姿の若い男性スタッフの横には別のお客さんがピッタリ。
普段なら諦めて帰るところ、スタッフを捕まえるまで粘ろうとする私。なかなかしぶとい(笑)。そんなにx,xxx円が魅力的だったの??
私は、遠巻きにその男性スタッフの接客が終わるのを待ち、やっと声をかけることができた。
「あのーすみません。入口にある商品のことをお聞きしたいのですが…」
すると、そのお兄さんスタッフさんはただちに商品の方へ向かい、
「あ、すみまません。これ値段付いてないですね。ちょっと待って下さいね。ええと…これは〇円ですね」
それは、単に私が買った商品の10パック分と同じ価格だった。(え、x,xxx円のお得はどうなっちゃったの??)
結局は、この一箱にx,xxx円分のオマケ(同じ商品)が付くということだった。
なんだそういうことか。
しかし、説明をよく聞いてみるとx,xxx円どころではない。その倍くらいのオマケ付きだ。これは買うしかない!
「コレ、買います!」
私は即決した。
レジでお会計を済ませると、そのお兄さんはおもむろに私に名刺を差し出した。
「あの、またコレ買う時には私に声かけて下さいね。(小声で)本当はこんなに(オマケを)付けられないんです」
この説明を聞いて、ハッとした。
たしか、数ヶ月前にまったく同じシチュエーションがあったことを思い出したのだ。
(私の記憶が巻き戻される)
私は、ある商品の前に立ち、それを買おうかどうか迷っていた、その絶妙なタイミングで、若い男性が私にの方に駆け寄ってきた。
ごく普通の若者の服装だったので、私は途中まで彼がドラッグストアの店員であることに気付かなかった。
「いつもこれを利用されているなら、箱で買った方が絶対にお得ですよ」
その言葉に背中を押され、購入することを決めた。
そして、
「また、コレを買う時には私に声かけて下さいね」
そう言って、私に名刺を差し出した。
明るくはつらつとした、とても感じのよい青年だった。ひょっとすると息子と同じくらいの年齢かしら?図々しいとは思いつつ年齢を尋ねると、息子よりも2つくらい上だった。ずいぶんしっかりしているな、という印象だった。
そんな光景が、一瞬にして脳裏に浮かんだ。
そして目の前にいるお兄さんに向かって
「あ、たしか前にも(お兄さんから)買いましたよね」
と言うと、彼は、
「そうですよね!」
と言ってはいたが、単に私に話を合わせてくれただけなのかもしれない。
レジを済ませると彼は
「お車まで運びましょうか?」
と、声をかけてくれた。
そんな細やかな、こちらが嬉しくなるような言葉がけ。たしか前回も同じように、些細だけれどもハッとするような言葉をかけてくれた記憶がある。だからこそ、彼の印象が強く残っていたのかもしれない。
「ありがとうございます。力(ちから)にだけは自信があるので」と笑いながら片手でヒョイとそれを抱えて私は車に乗り込んだ。
そして、すぐ隣のスーパーへ向かった。
スーパーで夕飯の食材を選びながらも、何か頭に引っかかっている。
サニーレタスをカゴに入れ、キュウリに納豆…。
精肉コーナーに向かうも、カレールーの箱を手に取るも、何か心ここにあらず。
私は、ちょっとした違和感を覚えていた。
それは単なる私の思い込みなのかもしれない。しかし、なぜかどうしてか、心に引っかかるのだ。
それは、さっきのドラッグストアのお兄さんの様子だった。
数ヶ月前に会ったドラッグストアのお兄さんと、今日会ったお兄さん。同じ人物なはずなのに、とても同じ人とは思えないほど、彼のテンションが違っていたのだ。
数ヶ月に会った時には、満面の笑みで明るくはつらつとしていたのに対し、今日はその時の半分くらいのテンション。表情にもかげりがあった。
とても同じ人物とは思えなかったので、きっと私はレジをするまでそのお兄さんが、あのお兄さんだとは気づかなかったのだと思う。
どうしたんだろう。
もしかして、仕事が辛いのかな。
心配だな。
こういう時にまで、想像力がたくましく働いてしまうのが私のイケナイところ。勝手に想像しちゃうんだから。
そうして、私は夕飯の食材をカゴに入れ終わると、いつもは買わないお菓子を2つカゴに入れレジへと並んだ。
私は、再びさっきのドラッグストアへと向かった。
店内に足を踏み入れると、さっきのお兄さんの姿を探す。
あ、いたいた!
お兄さんは、私に気づくと、怪訝な表情をしながら私に近づいてきた。
私は、苦情を言いに来たんじゃないのよーというように顔の前で手を振りながら
「いやいや、なんでもないんだけどね、なんかお兄さん元気ないように見えたから。もしかしたら、仕事大変なのかなぁなんて思っちゃってハハハ😄はい、これあげる」
そう言って、ビニール袋に入った2つのお菓子を彼に手渡した。
「いいんですか?ありがとうございます。すみません気にかけていただいて」
かげりのある表情は、相変わらずだ。
そうして店を出ようと出口へ向かうと、背後から彼が声をかけてきた。
「私、異動になったんです。来月から〇〇店へ」
そっか、異動の時期だもんね。
「あぁ、そこのお店ね。今度行ってみるね。頑張ってね〜」
と言って店をあとにした。
その日の夕飯はカレー。
主人が帰ってくるまでに、作り終えることができてホッとしていた。
そして、主人が帰宅するなり、今日のドラッグストアでの一件を話し始めた。
「あのね、今日またやっちゃったの。お節介おばさん。ドラッグストアでね、カクカクシカジカ…」
うんうん、と黙って話を聞く主人。
「それでね、その人にお菓子あげちゃった」
それまで黙って聞いていた主人は、
「なにぃ〜〜???!!!」と、ひどく驚いた。
「ねぇ、普通お菓子なんてあげないかな」
という私に対し、当然あげないでしょというように思いっきり首を縦に振る主人。
やっぱり、普通はやらないよね。
だけどね、まんざら間違った想像ではないと思うの。
そのお兄さん「仕事が大変なのかなぁなんて思って」という私の言葉を否定しなかったんだもの。
もし違ったら「そんなことないんですよー」くらい言うよね?
彼は一人暮らしなのか家族と一緒に暮らしているのかわからないけど、元気出してほしいな。(いや、私の勝手な想像なので元気なのかもしれないけど😅)
仕事って、どんな仕事でも辛いことあるよね。
でも、心や身体が壊れるまで頑張ることはないと思うな。お兄さんは、きっと頑張れると思う。おばさんは、陰ながら応援しているよ。
長々と書きましたが…
ひと言で言うと"ドラッグストアのお兄さんが心配でお菓子をあげた"というお話でした😂