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現役看護師が、3ヶ月で「説明できるデザイン」を作れるようになった話
先日、半年間のデザインスクールの前半戦・基礎クラスが修了しました。
フルタイムで勤務しながら毎週のレッスンや課題に追われ、家族のサポートも受けつつ本当に必死に取り組んでやっと制作物が提出できる、という怒涛の3ヶ月でした。
何年もずっとやりたかったことを体系的にプロから直接教わり、個別の添削を受けながら本気で取り組める環境は本当に幸せです。もちろん大変ではありますが、めちゃくちゃ楽しく、学びは多く、とても充実していました。
2022年は、社会人4年目で思い切って仕事を辞めてアメリカ留学を決意したときと同じくらい、私の今後の人生とキャリアにとって新しい扉を開いていくような、大きな変革の波が来ている年です。
▲私がデザインスクールに入学した経緯はこちらから
基礎クラス3ヶ月間で制作したもの
たくさんのレッスンや課題があったので全てはここには載せられませんが、この3ヶ月で作ったものの中から特に思い出深いもの、個人的に気に入っている作品を時系列で4つご紹介します。
①アートギャラリー草のショップカード
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【課題内容】
・現代華道の展示/アートグッズの展示販売を行う小さな60㎡程のギャラリーのショップカードを作る
・最寄り駅からの分りやすいアクセスマップの載った、ギャラリー自体のショップカードが欲しい
・アクセスマップはシンプル希望、デザインは草っぽい感じがあると良い
・支給素材:なし
制作のポイント
・老若男女が訪れるギャラリーという設定のため、ジェンダーレスな配色、かわいすぎずアート感のあるイラスト、読みやすいフォントを意識した。
・「自由で型にはまらないフロースタイルのいけばな」である現代華道のギャラリーなので、植物という自然のものをあえて幾何学的なパターンを用いてアイロニックに「草っぽさ」を表現した。
・ウラ面のMAPは駅からの経路がわかりやすいよう、情報を選択してシンプルなデザインにした。
コメント
私はこのスクールに入学してから初めてAdobe Illustrator(イラレ)を購入しました。最初はなかなか操作に慣れませんでしたが、動画レッスンで徐々に使い方を理解し、パスでオブジェクトを描いてパターンを作るというレッスンが楽しかったので、それを応用してこのショップカードの課題を制作しました。
フリー素材のイラストや写真を使うのもOKでしたが、pinterestでこれいいなと思うデザインをいろいろ探して参考にしつつ、今回は自分で素材からすべて制作してみました。
いつかイラレが使えるようになったら作ってみたかったものが「デザイン性のある名刺やショップカード」だったので、よくある既存のテンプレートにテキストを流し込むのではなく、真っ白なアートボードから自分でテーマを咀嚼してコンセプトを考え、ここまでデザインを完成させられるようになったことがとても嬉しく、最も思い出に残っている課題制作のひとつです。
②脱毛サロンのバナー
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【課題内容】
・脱毛サロン「サロン・デ・トースト」の広告バナーを作る
・脱毛に興味のある、学生~20代女性をターゲットにした集客目的のバナー
・他社の脱毛サロンのバナーデザインの要素を分析し、比較表を作って分析し、デザインを言語化できるようになる
・支給素材:サロンのロゴ、テキスト
制作のポイント
・キャンペーン期間が5月〜7月なので、夏本番!という感じではなく、まだ初夏が始まったばかりのような柔らかい日差しをイメージした。
・他社のデザインを分析すると、水色+イエローは○ュゼっぽい、などカラーでブランドイメージが作られているように感じたので、他と被らずに、かつ今っぽく爽やかな印象になる配色にした。
・学生〜20代前半女性がターゲットなので、高級感は出さずに気軽に通えそうな親しみやすさを表現した。
・大事な情報に目がいくように、数字やテキストのメリハリを意識した。
コメント
ここまでにいくつかバナー制作の課題はありましたが、最初はH250 x W300pxという指定サイズのあまりの小ささに唖然としました笑。
小さいキャンバスに入れたい情報を読みやすく載せつつ、ひと目でパッと目を引く全体の印象やアイキャッチの工夫など、広告としての機能を意識したデザイン制作は本当に勉強になりました。
このバナーデザインの反省点としては、長い髪をかきあげるモデルがぱっと見脱毛というよりヘアサロンぽさを出してしまうかもという点と、被写体が正面を向き、「目が合う」写真を選んだほうがより注目されやすいのでよかったかも、ということなどがあります。写真選びはとても重要ですね。
このように基礎コースの制作でも、ソフトの基本的な操作に慣れ始めた頃からはどんどんデザインの分析や言語化をするように課題が設定され、「なぜそのデザインにしたのか」をきちんと説明できることを毎回意識づけるようになりました。
"デザイン"と聞くと、「かっこいいもの、おしゃれなものをパッとセンスよく作ることでしょ?」みたいなイメージを持っている人も多いかもしれません。
でも、こうやって実際のデザイナーさんと同じデザイン制作のプロセスをイチからじっくり学び、作ったものの改善点を何度も細かく指摘していただくなかで身をもって理解したことは、
・デザイナーの仕事は、地道なリサーチや設計の上に成り立っており、非常にロジカルであること
・目的に沿った「よいデザイン」を作るためには扱うトピックに対する知識と理解が不可欠であること
・新しいものをどんどん吸収する柔軟さや幅広いスキルが求められていること
・微細な違和感を徹底して排除する厳しい視点が必要であること
・相手のニーズを引き出し、仮説を立て、提案する高いコミュニケーション能力が必須であること
です。デザインは「アート」ではなく「ビジネススキル」だ、と私は思っています。
③ねこカフェフライヤー
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【課題内容】
・ねこカフェのはがきサイズのフライヤーを作る
・インテリアが今っぽく、猫カフェらしい生活感がなく、清潔で一般のカフェのように利用してもらえることが売り
・ターゲットはファッション感度の高い女性二人連れ、猫とカフェが好きな観光客
・KINFOLKのようなデザインが1案欲しい
・・支給素材:オモテのねこの写真、カフェのロゴ、テキスト
制作のポイント
・A案はご要望の『KINFOLK』(海外のライフスタイル雑誌)の表紙のように、シンプルで洗練された印象に。
・B案は『KINFOLK』っぽさからは離れつつ、女性二人組だけでなく観光で訪れたカップルなどにも手にとってもらえそうなデザインに。マーカーで書いたようなフォントでカジュアルさを、蛍光ライムグリーンの差し色で今っぽさを狙った。
・MAPも情報を絞って単純化し、シンプルで洗練されたデザインに合わせた。
コメント
このねこカフェフライヤーの課題までは、私は時間的にも脳のエネルギー的にも試行錯誤した1案を作るので精一杯でしたが、ここで初めて2案制作にチャレンジしました。
同じ目的・ターゲットに対して違う表現でアプローチを考えるのは、思ったよりも大変というよりはどちらかというと楽しく、「え、複数案出していいなら、こんなのはどうよ?」みたいに、ちゃんとアイデアを思いつける引き出しが自分の中にできていることに嬉しくなりました。あとは、それらを全部形にできるスキルがあったらさらに人生楽しいだろうなとも思いました笑。
前述のショップカード制作の時もマップを作りましたが、マップづくりは簡単ではありませんでした。実はこのマップは一度全部作り直しました。詳しければいいというわけでもなく、地形をデフォルメしたり、距離感や道のりがなんとなくイメージできればいい、というところまで情報を取捨選択し、うまく概念化できるというのも必要な技術だと思います。
また、クライアントから入れて欲しいと言われた情報も「本当に全て載せる必要があるのか?」と考える主体性も重要だ、ということに気付かされたのもこの課題です。制作物が果たそうとしている目的と照らし合わせてクライアントの要望についても改めて検討し、必要であれば最初に依頼された内容と違う表現も上手に提案できる、というのもプロとしてあるべき姿勢だと学びました。
④ビール会社の新卒採用Webサイトデザイン
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【課題内容】
・2014年にできた北海道にあるビール会社"TOAST BREW"の新卒採用Webサイトデザインのトップページと応募フォーム作成
・ターゲットは大学を来年春卒業する新卒
・①目先のお金や楽しさより、本質を大切にする会社理念に共感する人 ②ダイバーシティ・海外志向でリーダーシップのある方に入社してほしい
・支給素材:テキスト、コンテンツ内容案、ビールのパッケージ写真、人物写真(ここには掲載なし)
制作のポイント
・テーマを「イノベーションの夜明け」と設定し、既存の概念にとらわれず、新しいことにチャレンジし、北海道の大地のごとく開拓していく社風を配色やグラデーションで表現した。
・全体的に画面いっぱいにはみ出すくらいに要素を配置し、小さくまとまらず外へと大きく広がり、成長していくイメージに。
・フォントではなくストリートアートのような手書きの文字を自作し、さりげなくあしらいに散りばめ、若々しく、自由で勢いのある印象に。
・CTAボタン(エントリーボタン)を大きく、わかりやすく、一番目立つように配置した。
コメント
これが基礎コースの最終課題です。ここまでは毎週新しい課題が出ていましたが、この基礎修了制作のみ2週間の制作期間が与えられました。言わずもがな、めっっちゃ大変でしたw
自己紹介記事でも触れましたが、私はwebデザイン(LP制作など)への漠然とした苦手意識のような、正直あまり気乗りしない心理的なハードルがあり、Adobe XDもなかなか好きになれずにいました。
またこの課題に取り組んでいた週はプライベートで大事な予定が重なり、なかなか腰を据えてPCの前に座って集中してデザイン制作をする時間が取れず、精神的にもいっぱいいっぱいでした。
しかし結論からいうと、メンターさんに励まされ、何度も添削を出して試行錯誤して必死に頑張っている同期の皆さんに背中を押され、この課題にはこのとき自分にあった時間、エネルギー、スキルを全部注いで精一杯作れたと思います。XDもめちゃくちゃ便利だなって思えるようになりました笑。
最初にワイヤーフレームを作ったときは本当に普通にただ要素を配置するくらいしか思いつかず、あまりのイケてなさに自分で自分が心配になりました。やっぱり私にサイトのデザインなんてできないのかも・・・みたいに、弱気な気持ちが芽生えそうになったりもしましたが、そうやって無駄に落ち込むことだけは絶対にやらない、とデザイントーストに入ったときから心に決めていました。
誰かにやらされているわけでもなく、自分がどうしてもやりたいから、多少無理してでもずっとやりたかったデザインの勉強をすることにした。できるようになったらいいなと憧れていたことが本当にできるようになっていく体験は最高です。初めてやってるんだから下手で当たり前だし、どうせ時間もスキルも今の自分にあるだけのものを使ってやるしかない。
そう考えて、基礎の最後の2週間を駆け抜けました。
こんなテーマの制作はおそらく自発的にはやらないと思うので、この独特の緊張感がある卒業制作"お祭り期間"、自分がこうすればいいんじゃないかと思う表現を思いっきりやってみて、添削をいただいて、いいねと言ってもらえたことも、もっと改善できると言われたところも、全部今後の糧にしようと思いました。
まとめ
ここまで基礎の3ヶ月の間に作ったものの中から4つの制作物を選んで紹介しましたが、もちろんまだまだ未熟で、改善点がたくさんあることは自覚しています。
でも、ずっとふんわり抱いていた「いつかちゃんとしたデザインができるようになれたらいいな」という思いを本当に実現させるために一歩踏み出して、その道のりがスタートしたことをはっきりと実感できており、とても嬉しく思います。
先ほど「2022年は大きな変革をもたらす1年です」と書きましたが、スクールはまだ折り返し地点。後半3ヶ月はよりレベルアップしたデザイン制作・提案に取り組めると思うと、この先にどんな景色が待っているのか、わくわくします。めっちゃ大変だと思いますがw
いつでも、comfort zoneから外に出たときにしか本当の成長はないと思っています。
今から全く新しいことをわざわざ学ぼうとしなくても、できることはそれなりにあるかもしれません。でも、昔よりできることも知っていることも増え、いろんな刺激に慣れてきた大人になっても、自分の心が「どうしてもやりたい、私の人生にこれがあったら、きっともっと最高になる」ってしつこく訴えてくるようなことがあるなら、絶対それをやってみるべきだと私は思います。
看護師とデザイン、一見関係ないように思える領域でも、この先どんなかたちで"connecting the dots."が生まれていくかはわかりませんし、今の自分が想像できる範囲内でそれを設計しすぎる必要もないと思っています。情報を整理したり、課題の本質を明確にしたり、理由や意図を言語化するというスキルは、今の仕事にもすでに生かされているんじゃないかなと感じたりもします。きっと、どんな仕事や役割でもそういった面はあるのではないでしょうか。
デザイントーストの基礎3ヶ月はゆっくり振り返る間もなく走りぬけましたが、後半の応用レッスンでもさらに進化していきます!
▼私が通っているデザインスクール「Design Toast」
もしご興味があり、入会を検討される方がいらっしゃれば、ぜひ「ゆうこりんのnoteを見ました」と初回のカウンセリングなどでお伝えいただけると嬉しいです😍