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『ZEROISM』7

第七話「わたしたちは英雄の妻です」第一部完結

【ここまでの、あらすじ】極左の凶悪犯、黒崎を逮捕するために公安1課が黒崎が現れる婚活パーティー会場に潜入する作戦を練るが、人手不足で急きょ、1課の杉浦竜則の友人、外事4課の外川数史に協力を要請。外川が休日のその日に勝手に婚活パーティーにきた事にすると、手柄は上層部と1課だけになる。親がいない外川はカフェ『菜の花』の棚橋一家との安らぎを大切にしたくて断ったが、棚橋純菜と杉浦に説得されて協力を受託。そして、外川と杉浦は、外川の緻密な作戦によって黒崎を確保することに成功した。だが、爆発の際に婚活に出席していた参加者を守ろうとした外川が、血まみれで倒れていて、それを見た杉浦が錯乱。一方、外川と杉浦の帰りを『菜の花』で待つ、純菜と杉浦の妻、杉浦南美(みなみ)は、二人から連絡が来ないことで緊張していた】

金曜日、午後九時十三分 カフェ『菜の花』

携帯が鳴った。南美は震える手で、しかしすぐに耳にあてた。
「京野だ」
「か、係長…」
「現場が混乱しているから結果だけ報告する。黒崎は爆発で死亡。参加者の一般市民、そして杉浦は無事」
南美は全身の力が抜けたのか、携帯を耳にあてたままテーブルの上に顔を乗せた。
「…外川数史主任代理が重体」
「え?」
思わず体を起こした。
「間もなく森長さんがそこに到着する。説明は彼にしてあるが、君に頼みがある」
「……」
南美は外川が重体と聞き、動悸が収まらない。ショックで体が震えてきた。
「杉浦が錯乱している。手が付けられない。助けてほしい」
「さ、錯乱…」
「外川くんが自分をかばって、作戦に失敗したと彼が叫んでいて…」
京野はいったん言葉を止めた後、
「ずっと泣いている」
と言った。

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9,327字

警視庁外事四課と公安一課の刑事が、謎の組織『ZEROISM』と極秘に戦う本格刑事ドラマ。歳の差婚、同性愛、動物愛護、虐め問題…。天才、外川…

普段は自己啓発をやっていますが、小説、写真が死ぬほど好きです。サポートしていただいたら、どんどん撮影でき、書けます。また、イラストなどの絵も好きなので、表紙に使うクリエイターの方も積極的にサポートしていきます。よろしくお願いします。