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額縁。ガラスとアクリルについて
やちか写真展『白い嘘』では、新作になるやちかさんの写真作品はすべて、表面がアクリルの額縁になります。
頻繁に起きる地震の影響で、ガラスの額縁はなくなりました。
ガラスの額縁は地震で落下すると割れてしまう。
例えば、宅急便の運送で雑に扱われても粉々に割れます。
自宅から、ギャラリーに輸送したら割れていた額縁があり、近くのヨドバシカメラに買いに走る、なんて悲惨な出来事に泣く写真家、芸術家もいるはず。
そして2025年になり、ガラス面の額縁…サイズにするとA4以上はほぼ生産がなくなりました。
アクリルが主流になった。
ではアクリルは優れているのか。
アクリルは最悪です。
決して割れません。巨大地震がきても平気です。
ただし、表面にいとも簡単に傷がつきます。
新品を購入時はアクリル表面に保護シールが貼ってあるのです。
それを取った瞬間から、埃、チリ、髪の毛、汗との闘いが始まる。
先に結論を言うと、
ロボットや額装専門家じゃないと、無傷の額装は不可能です。
しつこい埃が付いたとします。
息を吹きかけても取れない埃。
それを絵画やカメラレンズの埃を払うハケを使い、何度か強めに払っていたら、信じられないことにハケで小さなキズが付く。
一瞬でも指で触り、指紋を付けたらそれを消す方法はない。消すために、ガラスやカメラレンズ、メガネなどを拭く専門の布製品で拭いたら傷が付くのです。
指紋が付かないように手袋をしているけど、その手袋の繊維がアクリル表面に付着したら、それをハケで取るのが難しくなります。
額装をする専門の部屋は見たことがありませんが、手術室みたいに無菌、埃もチリもない場所なのでしょう。
アトリエで額装する人も、アクリルの額縁に付いた埃をハケで払ううちに細かな傷が付いてしまうことに愕然としています。
しかし、もうアクリルの額縁しかなく、写真では、プロラボにプリント→額縁もそこで購入→額装も依頼すると、目を剥くほど高額になります。
写真展『白い嘘』のやちかさんは、デビューしたばかりの新人。無名の俳優です。
売れる保証がない作品に、どんどんお金を使えません。少しでも節約しないと写真展が赤字になる。
物販に、数千円もするファンサービスもないのです。ファンなどいないので。
だから、私は自分で額装している。
時間がかからないA4サイズはささっと額装できます。
しかし、A3以上なると時間がかかり、その間に目に見えない埃やいつ付いたのか分からない傷がアクリル表面に付いてしまっている。埃が強く付着していたら、それを払うと、ハケでも傷がつく。
カメラの埃を取るエアダスターは、風圧が強く、違う埃を連れてきてしまう。それは自分が着ている洋服とかの。
だから寒いのに、暖房を止めて袖を捲りやってる。
もはや裸でやるしかないわけで、冗談ではなく夏ならパンツ一枚でやっている人たちがいます。
そうしてアクリル表面に付いてしまった傷はライトで照らしてようやく見える程度でも、ギャラリーで太陽の光か室内のライトが当たると、目を凝らさずとも見えてしまうかもしれない。
「A3だけでも専門家に頼むべきだったか」
アクリルの額縁が初めての私のストレスはピークです。
先日、ある地方の美術館に行ってきた。
ギャラリーの入口にお客さんを出迎えるように飾られていた作品に、点ほどの埃が付いていた。
私のようなマニアだから気づいた埃。大げさに言うと粒子レベル。
「これを取ろうと頑張ったら、アクリルに傷が付くんだろうな」
私はふとそう思ったが、アクリルに小さな小さな傷が付いてもいいから、埃は取るべきだと思った。
額縁は替えられるのだから。
私の作品で一点、傷が取れなくなったA3の額縁をさっき、額縁店に買いに行った。
見本で置いてあったアクリルの額縁表面は、まるで自傷行為を繰り返した手首のように傷だらけだった。お客さんが触る度に傷があっさりと付くんです。
アクリル以外に、額縁が向かう道はないのだろうか。
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