『ZEROISM』6
第六話「死闘~帰る家がある男たち」
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【登場人物】外川数史(33歳)警視庁外事4課の天才刑事。カフェ『菜の花』での読書を生き甲斐にしてる孤独な男。両親を飛行機事故(テロ)で亡くしている。
棚橋純菜(13歳)外川が通うカフェ『菜の花』の娘。外川と同じ本を読んで、夢は彼のお嫁さん。親の棚橋夫妻公認。
杉浦竜則(32歳)外川と警察学校が一緒だった友人。部署は公安1課。
杉浦南美(27歳)杉浦の幼馴染みで新婚。
森長英治(48歳)外事4課の係長。外川の大学の先輩にあたる。外川と二人でZEROISMを極秘捜査している。
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金曜日、午後九時二分。カフェ『菜の花』
――連絡が来ない。パーティーは九時までなのに…
杉浦南美が、公安専用の携帯電話をテーブルに置いたまま、鞄の中にある拳銃に手を伸ばした。その手が震えている。
『いいか、南美。連絡が来ない時は、俺と外川が死んだ時。まあ、それはないか。それか黒崎を取り逃がして、黒崎を追っている時。黒崎が菜の花を知っていることはないと思うが、念のためにその時は準備していなさい。森長さんも近くにいる』
夫の杉浦竜則はそう言って、極左の殺人犯が出没する婚活パーティー会場に向かった。
「棚橋さん」
南美が、棚橋夫妻と純菜を見た。店は臨時休業だった。夫妻は南美の前の席に座っていて、純菜は南美の隣に座っていた。
「念のために、倉庫に逃げていてください」
店の奥にある梯子を見た。
――震えても泣いてもだめ。しっかりしろ、わたし。すぐに森長さんがきてくれる
南美は窓の外を見て、祈るような気持ちで夫と外川の無事を願った。東京のくすんだ夜空に満月が少しだけ見えていた。
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小説『ZEROISM』第一部
警視庁外事四課と公安一課の刑事が、謎の組織『ZEROISM』と極秘に戦う本格刑事ドラマ。歳の差婚、同性愛、動物愛護、虐め問題…。天才、外川…
普段は自己啓発をやっていますが、小説、写真が死ぬほど好きです。サポートしていただいたら、どんどん撮影でき、書けます。また、イラストなどの絵も好きなので、表紙に使うクリエイターの方も積極的にサポートしていきます。よろしくお願いします。