アンクルボブの散歩道
おはようボウヤ
おはようボブおじさん
どうしたの?
こんな朝早く
今朝はなんだか早く
目が覚めてしまってね
朝の散歩を一時間はやく
済ませたんだよ
でも
ボウヤもまだ
学校には早くないかい?
そうなんだよ
今週から
アランさんの家に
毎朝牛乳を運ぶことに
なったんだ
そうかい
それがボウヤの
朝の仕事なんだね
アランの脚の具合は
どうだい?
あまり良くないって
やっぱりずっと
杖がいるらしいよ
それは不便だろうね
その牛乳は
ロンの牧場のものだね
お父さんが
アランさんに
約束したらしいんだ
ウチの柵を直してもらう
お礼なんだって
そうかい
アランは腕の良い
木工職人だからね
でも
ウチの柵が壊れるのは
年に一回あるかないか
それで牛乳を
毎日あげるのは
ちょっと損なんじゃ
ないかって
僕は思うんだけど
ボウヤ
それは損得の問題じゃ
ないんだよ
アランの奥さんの
スージーが
先月亡くなった事は
知ってるよね
もちろん
知っているよ
君のお父さんは
見ていたんだよ
スージーが毎朝
ロンの牧場へ
牛乳を買いに行って
いたのを
君のお父さんは
子供の頃から
そういう男なんだ
そうなんだね
実は僕
昨日お父さんに
酷いことを
しちゃったんだ
どうしたんだい?
お父さんが僕に
バスタブを洗うように
言ったんだけど
それはお姉ちゃんの
仕事だって
断っちゃったんだよ
お父さんは
何て言ったんだい?
黙って自分で
バスタブを洗ってたよ
お姉ちゃんは昨日
ブラスバンドの練習で
いなかったんだ
ボウヤはどうして
自分が洗おうと
思わなかったんだろう
僕には僕の仕事があるし
それ以外の事までするのは
損だと思ってしまったんだ
バスタブを洗うと
ボウヤの中の
何かが減るのかい?
ううん
そんな事ないよ
そうだね
仕事というのは
お金を貰ったり
損得を計ったり
するだけの
物じゃないよね
それは
人と人との繋がり
対話なんだよ
どういうこと?
ボブおじさん
アランは木工が仕事
ロンは牛を育てるのが仕事
バリーはパンを焼くのが仕事
バリーの奥さんは
そのパンを売るのが仕事
バリーさんのパンは
美味しいよね!
毎朝みんな
バリーの店へ
パンを買いに行く
奥さんにお金を払い
パンを受けとる
すると奥の焼き釜の方から
バリーが言うだろう
「今朝のパンは最高だぜ!」
「今朝のパンは最高だぜ!」
(二人同時に、バリーの口真似で)
そう
仕事というのは
人間の繋がり
営み
会話なんだよ
何度も言う様だが
お金や損得の
問題じゃないんだよ
ボブおじさん
ありがとう
よく分かったよ
これからは
誰かにものを頼まれた時
嫌な顔せずに
これは
その人と僕のご挨拶なんだって
そう思うことにするよ
ボウヤのような
賢くて優しい子供が
たくさん大人になれば
きっと明るい社会に
なるだろうね
じゃあ
私はそろそろ帰ろうかな
さようなら
ボブおじさん
あ!
おじさん帰るんだったら
ついでにアランさんとこへ
牛乳を持って行ってよ
通り道でしょ
エー!
嫌や面倒クサイ!!
ケケケ