小説を書いてる人・有希穂(ゆっけ)

有希穂ことゆっけ。メインストリームからのはぐれっ子。趣味で細々と小説を書いてます。座右の銘は『私にしか書けない文章がある』です。

小説を書いてる人・有希穂(ゆっけ)

有希穂ことゆっけ。メインストリームからのはぐれっ子。趣味で細々と小説を書いてます。座右の銘は『私にしか書けない文章がある』です。

マガジン

  • ワンフレーズを1000字語るシリーズ

    趣味で小説を書き、カラオケ大好きなゆっけが一目惚れした邦楽のワンフレーズについて、その魅力にフォーカスして超主観的かつ超直感的に1000字語ろうという企画。物書きの端くれとして感動したり感心したり、心を動かされたフレーズの、歌詞という括りから独立した魅力を共有したいと思います。皆さんの心に残るフレーズがあれば嬉しいです。

  • 私こと有希穂ことゆっけのこと

    とにかく私こと有希穂ことゆっけのことを紹介して、私のことを知らない人に知ってもらおうという企画。いつまで続くかは誰にもわからないけれど、自己覚知のいい機会と言い聞かせてつらつら書き出そうと思う。  こんなことしてるなら小説書けやと自分に言いたくなるけど、小説を書くときとは動かすギアが違うのだ。なにかにつけ「書く時間がない」と呪文のように呟いていた全力少年的な私だけど、なにせ今までしてこなかったことをしようじゃないかということでレッツチャレンジ。  私のことよ伝われ。

  • 小町がいたこと

    花家小町という、クールで、潔く、そして誰より美しい少女がいた。 彼女と深い関わりのあった青年・伊勢は、小町の十回忌という節目に、長い間封印していた記憶をたどることになる。 十年の月日を経て思い返す小町とすごした日々は、あまりに鮮やかに、あまりに瑞々しく浮かび上がってきた。 これは、一人の少女によって彩られた青春を蘇らせる、追想の物語。 ©有希穂

  • 【小説】短編(掌編)集

    短編・掌編小説の集まり

  • 【短編小説】 ミラーとプリズム

    高校一年生の女の子、恋(れん)は、過去の忌まわしい記憶と、記憶に蝕まれた自分自身を捨てて、生まれ変わろうと決意する。そんな中、自分を鏡写しにしたような男の子、寅次郎、年上のクラスメート、蜷川さんと出会い、恋の決意は揺れる。 全4話

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ミラーとプリズム (1/4)

trash  恋、という名前が嫌いだ。  チャラチャラした名前よねえ。中学生のとき、クラスメートの女の子が私のいない場所でそう話しているのを、偶然耳にした。軽薄そうっていうかさあ。すごいお水っぽい。  そうか。私の名前はチャラチャラしていて軽薄で、ホステスの源氏名みたいなのか。休み時間は一緒に笑顔で話しているその子に、普段と同じトーンで陰口をたたかれていても、泡一つの反論も浮かんでこなかった。その時私は、彼女の言葉に絶対性を感じずにはいられなかったのだ。不思議なことに。

    • 邦楽ワンフレーズを1000字語る① Aimer 『蝶々結び』

      初めての試みなので簡単に趣旨説明 趣味で小説を書き、カラオケ大好きなゆっけが一目惚れした邦楽のワンフレーズについて、超主観的かつ超直感的に1000字語ろうという企画。物書きの端くれとして感動したり感心したり、心を動かされたフレーズを共有したいと思います。皆さんの心に残るフレーズがあれば嬉しいです。 今回のワンフレーズ  どうも、既存の言い回しや常套句を上手くアレンジするの大好き有希穂です。  いきなり結論から述べると、私がこのフレーズを推すいちばんの理由は、上の太字部分

      • iPadで執筆を二週間続けて気づいたこと〜執筆環境のiPad化はどんな人におすすめか?〜

         前回の記事  は当社比で多くの方に読んでもらえた。なんならスキを頂けた数は過去最高数でした。読んでいただいた方、ありがとうございます。本当にデスクツアー記事って需要あるんだなって改めて実感させられました。また環境が変われば3匹目のドジョウを狙って記事を作ろうと思います。  で、今回はタイトルの通り、それまでMacでしていた小説の執筆をiPad(from外部モニター&キーボード&マウス)に置き換えて大体二週間が経過して、所感をまとめられたので書き記していこうと思います。デ

        • 【小町がいたこと】Episode㉕ クールに恋をしていた

           終業式の日、実に三週間ぶりに教室へ入ったとき、僕に浴びせられたのは名状しがたい種類の視線だった。クラスメートの誰もが遠巻きに僕を見ているだけで、そこから話しかけくることはなかった。居心地の悪いことになるだろうな、と予想はしていたけれど、実際に身を置くと神経がすり減っていくような気分だった。こういうとき、このクラスで僕にためらいなく話しかけてくるのは、たった一人だけだ。 「一足先の冬休み、楽しんでる?」  エナメルのスポーツバッグをたすき掛けにして教室に入ってきた彼女のことを

        • 固定された記事

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        • ワンフレーズを1000字語るシリーズ
          1本
        • 私こと有希穂ことゆっけのこと
          3本
        • 小町がいたこと
          25本
        • 【小説】短編(掌編)集
          3本
        • 【短編小説】 ミラーとプリズム
          4本
        • 【詩】僕たち
          7本

        記事

          【小町がいたこと】Episode㉔ ロマンの正体

           小町の唇は、僕がこれまでに触れてきたどんなものより柔らかかった。僕は息を止め、思考を止めた。目を閉じて、小町の唇を感じ、記憶に焼き付けようとした。  やがて、小町が僕から離れていった。僕たちが唇を重ねていた時間は十秒となかったはずなのに、彼女の感触が遠ざかったことで、僕はずっと手にしていた大切なものを手放してしまったかのような、とても心許ない気持ちになった。 「伊勢君」  小町が、改まった様子で僕の名前を呼ぶ。 「私、伊勢君のことが好きよ」  そう、噛み締めるように宣言した

          【小町がいたこと】Episode㉔ ロマンの正体

          【小町がいたこと】Episode㉓ 小町がいた

          「僕は君に恨まれていたんだね」  右手の甲で目を覆いながら、僕はどうにかそう返すことができた。 「ポーランドに発つ前の日、伊勢君は私の意思を無視して家までおしかけてきたわね」 「そんなこともあったかもしれない」  そうやってとぼけてみても、小町は特に反応を示さずに淡々と続けた。 「だから今日は、私を拒否し続ける伊勢君の前にこうして無理やり来てあげたわ」  僕は観念して目元から手を退けた。そしてのろのろと体を起こす。 「僕の家は、折原に訊いたの?」 「折原君なんて頼らない。意趣

          【小町がいたこと】Episode㉓ 小町がいた

          【小町がいたこと】Episode㉒ 闇を暴くは

           停学処分から三日目、四日目と、僕は暗い部屋の中で息をひそめるようにしてすごしていた。部屋から出るのは、食事のとき、トイレに向かうとき、シャワーを浴びるとき、そして毎日律儀にやってくる担任教師との面会に応じるときだけだった。  担任教師がリビングにいる光景に、僕は少しずつ慣れ始めていた。相変わらずコートを預かる一声はかけられないでいたけれど、代わりにコーヒーを出すようになった。僕がテーブルに湯気を上げるマグカップを置くと、彼は「おう」と唸るような声をあげ、特に遠慮する様子もな

          【小町がいたこと】Episode㉒ 闇を暴くは

          【小町がいたこと】 Episode㉑ 苛むもの

           ベッドの上で、僕は目を瞑って横たわっていた。眠気を手繰り寄せるためではない。けれど、むしろこのまま眠ってしまえればどれだけいいだろう、と思う。  目を開けると、明かりのついていない部屋を、わずかに開いたカーテンから漏れている橙色の日差しが滲ませている。右手を掲げてみると、手の甲のいくつかの擦り傷はまだしっかりと残っていた。  その傷を目にする度に、僕は深い自己嫌悪に陥る。『許されない行為』に出てしまったからではない。その結果傷つけてしまった相手がどうなろうと、そんなのは知っ

          【小町がいたこと】 Episode㉑ 苛むもの

          【iPadでも書ける】小説を書くだけの人のミニマルデスクツアー

           前回公開した同じような趣旨の記事 が私のnoteにおけるコンテンツ全体の1/2のPVを占めるという当社比大バズりを記録したので、二匹目のドジョウを狙うわけではないけど需要があるっぽいと踏んで第二弾。 今回は、実験的にiPadと外部ディスプレイで執筆環境を構築している10月現在のデスク環境を紹介しようと思います。 デスク上にあるもの 前に紹介しそびれてたけど天板はIKEAで買ったもの。色合いが値段の割にいいやんということで選んだんだけど、幅140cm奥行き70cmで、せめ

          【iPadでも書ける】小説を書くだけの人のミニマルデスクツアー

          【小町がいたこと】 Episode⑳ 焦熱

           僕と小町が付き合っているのではないかという噂が囁かれるようになってからというもの、好奇の目と中途半端に潜められて聞こえてくる声が煩わしかった。けれど、そのことで誰かに表立って揶揄されるような事態もなく、僕の懸念をよそに、日々はどうにか穏やかに過ぎていった。日毎に風は鋭くなり、雲は重くなっていき、木々は徐々にその梢を晒していった。冬の訪れを感じながら、僕はどうかこのままなにごともなく二学期を終えられますように、と密かに願っていた。  けれど、小曽根夕菜の言った通り、どれだけ願

          【小町がいたこと】 Episode⑳ 焦熱

          【小町がいたこと】 Episode⑲ 強さ

           中間テストが明けた十一月の最初の日曜日、僕は小町を誘った。そのとき、イレギュラーな事態が起こった。  冬物の服を見るために様々なショップを歩き渡っていたその様子を、同じクラスの女子に目撃されてしまったのだ。  僕と小町が一緒にいる所に立ち会った彼女は、なにか信じられないものを見たかのようにぽかんと口を開けていた。次の日には、僕と小町が一緒に歩いていたという噂は不特定多数のクラスメートが知るところとなっていた。 「花家さんと一緒に歩いてたって、本当?」  昼休みになると、僕に

          【小町がいたこと】 Episode⑲ 強さ

          【小町がいたこと】 Episode⑱ 八月三十六日のデート

           土曜日。予定時刻ぴったりに待ち合わせ場所へやって来た小町は、襟がついた半袖の黒いワンピースを着ていた。膨らみの抑えられた膝丈までのデザインで、右の肩にかけている小ぶりなショルダーバッグは白いレザーのものだった。  彼女が歩くと、ワンピースに浅く入ったスリットから眩しいくらいに白い太ももの側面がちらりと覗いた。足元はヒールの高いミュールを履いているせいで、僕とほとんど背が並ぶ形となっている。  僕の方はというと、黒色のポロシャツにリーバイスのワンウォッシュジーンズ、それにコン

          【小町がいたこと】 Episode⑱ 八月三十六日のデート

          小説を書くだけの人のデスクツアー

          普段は働きながら趣味で小説をゆっくり書いているだけの私ですが、ガジェットブロガーやガジェット系YouTuberのデスクツアーとかそういう動画や記事が好きなので、自分もやってみようのコーナー。やる気があればアイテム個別の記事も書く。 実際のデスク環境 ゲームもしないので、ゲーマーのテスクツアーでよくあるようなテープライトやナノリーフみたいなライティングするようなものはなく、結果的に質素に見えるけど、それぞれのアイテムに愛着はあるし白やグレーと木目のコントラストが好きで個人的

          小説を書くだけの人のデスクツアー

          【小町がいたこと】 Episode⑰ 弱さ

           僕の夏休みは、小町の安否を気遣い、小町とお互いの気持ちを断片的に伝え合い、小町が負った心の傷が少しでも早く癒えるよう祈っているうちに過ぎ去ってしまった。そうしてすごした四十日が長かったのか短かったのか、僕にはよくわからない。  そして始業式である今日、本来であれば放課後に折原も含めた三人で再び集まるはずだった。けれど、それは叶わなかった。小町が、風邪を引いて欠席してしまったからだ。  最初に彼女からメールでそのことを知らされたとき、僕は残念な思いと同時に、安堵もまた覚えてい

          【小町がいたこと】 Episode⑰ 弱さ

          【小町がいたこと】 Episode⑯ 信頼と好意

          小町が眠ってしまってからも、僕はしばらくベッドから動けずにいた。繋がれていた手をゆっくりと離して、彼女に背を向ける形で座る。僕の目はすっかり暗さに慣れて、今では暗色に染まった寝室の全容のほとんどを把握することができた。  寝室の隅に、小さな化粧台が置いてあるのが見える。僕は、一ヶ月前にポーランドへ発つ前の小町がそこに向かい合っている姿を想像した。そして、言葉では言い表せない寂しさを覚えた。  彼女の話を、僕は振り返る。いつ日本に帰るのか、という問いに対して、小町の母親は、一人

          【小町がいたこと】 Episode⑯ 信頼と好意

          【小町がいたこと】 Episode⑮ 母親

           やがてリビングの照明が消され、室内は暗闇に包まれた。窓から差し込む街灯の薄明かりを頼りに、僕は小町の背を追いかけて寝室に入っていった。  ベッドが軋む音がする。暗がりに包まれた部屋の中で、小町の輪郭がぼんやりと浮かんでいるのがわかった。 「こっちへ来て」  小町がそう言った。迷った末に、僕はベッドの隅にそろそろと腰を下ろした。ベッドは想像よりずっと広かった。小町はいつも、この場所にたった独りで眠っているのだと思うと、少しだけ寂しい気持ちになった。 「まだ八時だけど、本当に眠

          【小町がいたこと】 Episode⑮ 母親