【小町がいたこと】Episode㉕ クールに恋をしていた
終業式の日、実に三週間ぶりに教室へ入ったとき、僕に浴びせられたのは名状しがたい種類の視線だった。クラスメートの誰もが遠巻きに僕を見ているだけで、そこから話しかけくることはなかった。居心地の悪いことになるだろうな、と予想はしていたけれど、実際に身を置くと神経がすり減っていくような気分だった。こういうとき、このクラスで僕にためらいなく話しかけてくるのは、たった一人だけだ。
「一足先の冬休み、楽しんでる?」
エナメルのスポーツバッグをたすき掛けにして教室に入ってきた彼女のことを