お腹(丹田)から本当の声で話していますか?
先日、ゲシュタルト療法の百武正嗣先生のワークショップに参加して、先生にセッションをしていただく機会がありました。
ゲシュタルト療法は、「いまーここ」で体感している症状や問題に焦点を当て、自分を真に見つめることによって「気づき」を得る、実践的な心理療法です。
私は春に喉の調子が悪くなって以来、普段の声は元通りになっているものの、高い声は出にくいし、大声を出すことは怖くなっているので、自分の喉の症状は私に何を伝えているのかを知りたいと思っていました。
百武先生は、簡単に私の症状について尋ねたあと、「じゃあ、喉に貼りついたウィルスの中に入ってみよう」とおっしゃいました。まずは喉か声帯に何か尋ねるのだろうと思っていた私は意表を突かれ、「えっ、ウィルス!」と驚きましたが、案外簡単にウィルスの中に入って、ウィルスの気持ちになることができました(笑)
不思議なことに、ウィルスの中に入ると、優しい気持ちが溢れてきて、「君のことは好きだよ」という声が聞こえてきました。私からしたら、ウィルスなんて排除したいだけなのに、彼は私を困らせるつもりはなくて、何かを伝えたいだけなのだと分かったことは、大きな気づきでした。
セッションの詳細は省きますが、最後に先生に「お腹から声を出してごらん」と言われたとき、この数か月出したこともないような大きな声が出て、すっきりしてとてもいい気持ちでした。
私のセッションが終わった後、参加していた男性から「ウィルスはYUKIさんに腹から声を出すように伝えたかったのですね」と言われたのが腑に落ちました。
それは、「自分にしっかりと向き合って、もっと本音で生きなさい」というメッセージにも思えました。もう充分自由に生きているんですけれど(笑)
このところ声帯に負担をかけないうように、息を鼻に当てて、口先だけで声を出していたのですが、腹から声を出すと、自分の本当の気持ちがしっかりと伝わる安心感がありました。
百武先生は、「心理的に安心・安全な場は大切なものだが、日本では、それは何も起こらないことと勘違いされていることがある。本来、お互いに何を感じているか自由に表現し、異なった意見を言い合っても、攻撃されることなく、分かり合おうとするのが、心理的安全性なのですよ」とおっしゃっていました。
その話を聞いて、私はフランスの航空会社でCAをしていたときのことを思い出しました。
例えば、フランス人の男性パーサーに仕事で嫌がらせをされたとき、「どうしてそんなことをするのか、私は勝手なことをされてとても困った」とはっきり主張した後の方が、その前にただニコニコ笑って決められた仕事だけしていたときよりも、ずっとそのパーサーと仲良くなれたのです。
もし、日本の会社で、年配の上司にあんな強い言い方で自己主張していたら、果たして翌日、あのパーサーのように優しい笑顔で接してくれただろうかと思ったものです。もしかしたら「若いくせに生意気だ」と思われたかもしれません。
本当の気持ちを言ったり、意見を主張したりすることは、決して喧嘩腰になることでもなければ、相手を傷つけることでもありません。仕事でもプライベートでも、しっかりと腹(丹田)から声を出して、安心して自分の気持ちや意見を伝えることができる関係を築きたいものです。