読書記録 気分上々
私は女性作家、特に世代の近い作家さんの小説をなんとなくよく読んでいます。
今回は、森絵都さん、角川書店、2012年
明るい感じの装丁に惹かれて選んで読んでみました。
そして、これも一話完結の9本の短編集です。ほろ苦い青春の味や異国情緒あふれるスパイシーな香り、それぞれ味わい深い作品でした。
その中から、2つの物語の記録を書いておきます。
〈17レボリューション〉
◎あらすじ
主人公は高校2年生の千春。ある日、親友のイズモに「絶交」を告げる。そしてイズモからは、
「絶交って、休み時間しゃべったり、一緒に帰ったりしないことだけど、大丈夫?」
と、確認されるが、頑なに意思を曲げない。
千春が「絶交」を言い渡したのには、訳があった。
少し前、千春は付き合っていた彼氏、信輔と上手くいかなくなった。色々思い悩んだ千春。
そして、その原因を自分が人を選ぶ「好きの基準」だと考え、千春は「イキのよさ」を好きの基準とした。
でも、いつも千春のそばにいて、とりとめのない話をして、時にハッとするようなことを、いうイズモは、「イキがいい」とはいえないのだ。
けれど、イキのいい子たちとばかりつきあうようになった千春は、、、。
◎気になった箇所
親友イズモのことば
「つまり、千春の価値基準は落ちつくか、落ちつかないかなんだよ。」
「価値っていうのは、自分で決めてこそナンボでしょ。自分にとって何が大事で何がくだらないのか、自分以外の誰が決めてくれんのよ」
〈気分上々〉
◎あらすじ
主人公の柊也(しゅうや)は中学2年、薬剤師の母と二人暮らし。数ヶ月前に、病気で亡くなった父から言われたことば、「男は黙って我慢だ」のことばが心に残っている。
柊也は学校でもしゃべらなくなった。柊也の幼なじみで密かに思いを寄せていた在日中国人の依林(イーリン)も、だんだん柊也から遠ざかっていくように思っていた。
そんなある日の放課後、最近、依林と親しくなった翼にあった。
柊也はなじみの友達と集まる約束があったが、翼と一緒に夕飯を食べに行ってしまう。が、翼たちのグループは、、、。
◎気になった箇所 280ページ
柊也と依林の会話
「柊也、知ってたの?」
「おまえのことは、たいがいわかってる」
「すご」
瞬間、心の湿り気も、体のだるさもぜんぶが、ぶわっと吹き飛んだ。10分の立ち話にくらべたら、えらく短い会話だったけど、すご、の一語で俺は勝者となったのだ。
◎感想
どちらも思春期のほのかな恋愛を扱った物語。
そういえば、私はぼんやりし恋に恋するように乙女チックな漫画の世界を夢見てた。
「自分の好きに向き合う」って、気がつかないけど結構人生で大事なような気がする。
千春の好きな人の基準は「一緒にいて落ち着ける人」だ。
私も本当は、そうなのかな。
最近、のんびりと暮らしているからかな。以前は違っていた。
そんな落ち着ける人たちとの一緒の時間や空間を大切にしていたら、私の人生の選択も違っていたかもしれない。
そして、後半の柊也は、父からのメッセージを頑なに守ろうとするも、結局「自分は自分」、黙っているだけでなく、自分の気持ちを伝えていくようになる。そう、自分の思いは伝えた方がいい。せっかく「守ってあげたい」と思える人がいるのだから。
自分と同じものが好きな人と一緒にいられたり、好きという思いを伝え合えたと実感できる時間は、気分上々なのかもしれない。
◎今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊
素敵な1日になりますように。
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