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【SS企画】2022/9~2022/11まとめ

文&絵サークル「雪と森」では、Twitter企画を開催しています。
毎月お題を変えてSSを投稿する「SS企画」。(まんまですね!)

今回は、noteを開設する前に投稿していたSSをここで一挙公開。
2022年9月~2022年11月の作品です。

2022/9「世界」

雪と森が見る世界。それは深淵か、表層か。

雪村夏生

 お前は俺に従っていればいいんだよ。
 言葉の強さとは裏腹に、微笑をたたえた口元に慈しむような目つき。頭をなでる手つきはやわらかい。乱暴にならないように気を配っているのを感じる。
 流されそうになる意思に、それでもどうにか、でも、と小さく抵抗する。すると、そうか。そうだよな。哀をまとった声とそらされる視線。じわりと今まで抱かなかったものが背後からせり上がってくる。気がつけば、ごめんなさい。口走っていた。
 いつも通りの日がやってくる。

森羅愛美

 机からお道具箱を少しだけ引き出し彼女が見せてくれたのは小さな部屋だった。精巧な造りのベッドにテーブル、目をきらりと光らせこちらを見る服を着た猫。
 もっとよく見せてと引っ張ると世界は音を立ててひっくり返り、折り紙や猫のストラップが蛍光灯の下に散らばった。隙間から見えた輝きはもう無い。ひどく大事そうに拾い上げては箱に戻す彼女の顔はよく見えなかった。


2022/10「抱きしめる」

腕を広げて思いきり抱きしめるって、どんな気持ちなんだろうね。

雪村夏生

 一通り終わって、街は大きな傷跡と限りない静寂に包まれていた。倒れている人々の間を僕は駆けていく。仲間も敵も入り乱れ、身動き一つしない姿に一瞥をくれては、焦燥が募っている。君は確か、と記憶をたどる。 中央部の突撃部隊にいたはずだ。
 着くと今まで以上に伏した人々と全壊して見晴らしのよくなった景色があった。倒れている君の姿はすぐに見つかった。
 手袋をしている手で、手首をつかむ。脈はなかった。
 僕は一度手首を離し、手袋を外した「さすが、うちの参謀だな」
 私は君が素手で触れても問題ない方法を思いついたんだ。戦場に赴く前、言葉の割には無表情だったのを思い出す。 確かに先に死んでしまえば、その後の身体の心配など無用だ。
 初めて腕に抱いた君の身体は――けれど砂化して崩れてしまった。

森羅愛美

 夜になったら暖炉の前に集まって動物たちに本を読み聞かせよう。薪の爆ぜる音が眠気を誘ったら、熾火だけ残して毛布に包まろう。今夜は冷えるからおいで、と誘えば動物が寝床に飛び乗り潜り込む。その温もりを抱きしめて眠ろう。
 外に降る白も今夜はただ美しいだけ。


2022/11「NGワード」

それだけは言っちゃあいけないよ。本気にさせては厄介なんだから。

雪村夏生

 このままでは死んでしまう。対処方法はわかっている。下っ端を倒しながら、敵のボスと戦っている彼を横目で見遣る。彼はラスボスと戦っているのに、私の方を気にしている。それはそうだ。彼にとって、私は隊長。別に望んでいないけれど、私が死ぬなら自分が、とか言えちゃうタイプなんだ。忠義心が強いんじゃない。そういう能力を持っているだけ。私たちにはそれぞれ特殊能力があるけれど、彼のはひどい。彼が認めた、たった一人の人間が「殺せ」と口にすれば、際限なく戦い続ける。最近になって安全な止め方が見つかったから、今までは頼まれなかった一言を口にしろと目で訴えかけられるようになった。
「迷惑な話」
私は大きく息を吸い込む。

森羅愛美

 カレンダーと時計を確認する。間違いない、もうそろそろ家を出なければ。慎重に言葉を選ぶ。「散歩に行こう」無垢な瞳の相棒が尻尾を振りながら駆け寄って来た。胸の内で謝りつつハーネスを付けようと近づくと、同居人が顔を覗かせた。「出かけるの? あ、今日病院の日か」その瞬間相棒はキャンッと鳴き、姿を消した。長い戦いの予感に肩を落とす。


2022年9月~2022年11月のSSでした。
また来月もよろしくお願いいたします。

SS執筆者紹介

雪村夏生

長編推理小説が中心の、自キャラオタク。推しに殺されがち。
いろいろな方の一次創作を応援する、マーケターになりたい。
好きなものは、ゆるキャラと魅力的な悪役、麻婆豆腐と和菓子という振れ幅で生きている。
Twitter:@do_nutu

森羅愛美

少し不思議な日常を中心とした小説と、水彩画などのイラストを描いている。エッセイや漫画もたまに。
好きなものはファンタジー、SF、着物、紅茶、音楽、アニメなど。
Twitter:@shinram0u0


文&絵サークル「雪と森」
(Twitter:@yukiandmori

本記事執筆:雪村夏生
(Twitter:@do_nutu



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