【8分で読める】映画監督のマスト!世界の作り方をザ・ボーイズから学ぶ
架空の世界が舞台の映画を作る時、作品によって「架空だと振り切っている作品(ブレードランナー・パイレーツオブカリビアン)」と「架空だけど、現実の社会に寄せている作品(ダークナイト・ジョーカー)」があります。今回は、後者の「架空だけど、現実の社会に寄せている作品」の世界をどうやって作るのかをアマゾンプライムで配信されている「ザ・ボーイズ」を参考に勉強していきます。
記憶に残る世界、登場人物、物語をどうやって作るか
一つの答えは美術である。しかし、映えるだけの美術は意味がない。ロケ地、小道具、衣装、セット。これらを利用して、「雰囲気」「登場人物の心情」「テーマ」を言葉なしに観客に伝えることが美術の在り方なのである。
今回はアマゾンプライムのThe boysを例に美術を研究してみよう。
*岩崎:以下のデータは引用元のウェブサイトで作られているワークシートです。これを参考に美術の方向性を決めてみましょう。
ザ・ボーイズは電化製品店で働く青年、ヒューイの物語。ただ、我々の世界と違うのは特殊能力を持ったセレブが羽振りを聞かせている世界であるということ。彼らには正義も法律も通じない。
それでは、分解していこう。「美術」という言葉に含まれるのは、衣装・セット・小道具の主に三つである。これらを「美打ち」で分類しましょう。
美打ちに関する記事は以下に書いております。
これら三つをを揃える上で監督が意識しなければならないことはそれぞれ三つ。
①ストーリー:物語上、それがどのような意味を持つのか。監督であるならば、それを説明できるようにしなければならない。
②下調べ:美術で物語を語る上でどのような形が最も良いのかを調査することが大切です。例えば、ザ・ボーイズのような原作が存在する作品であれば、原作をしっかりと研究することも求められる。
③誇張:①と②から用意できたモノを今度は誇張する。
例えば、ダークナイトの金の山。
シャイニングの血の海。
(岩崎:『誇張』という言葉で書くと分かりづらいですが、『ドラマチック』『分かりやすく』という言葉もこの『誇張』には当てはまると思います)
これらは「最大限」の誇張だが、逆の誇張は逆に「最小」にすることも演出である。それについては、のちほど解説しよう。
衣装
〇衣装:物語
それでは、衣装から。ボーイズの衣装にはどんな物語性が持たされているか。
ホームランダーの登場シーンで我々が最初に目にするのは、何か?
・アメリカ国旗
・鷲の肩パッド(アメリカのシンボル)
である
次のシーンではヒューイが現れます。さあ、あなたが美術部なら何を用意する?
・社員証
・シャツ(青色)
・ズボン(茶色)
である。
ホームランダーとヒューイは仕事中、しかし、二人の衣装を比較し、ヒューイの衣装が彩度を抑えられていることからヒーローの生活と一般市民の生活レベルの格差を表現している。
〇衣装:下調べ
ザ・ボーイズは漫画が原作であるセブンのヒーローたちは実在するヒーローの衣装を参考に作られている。ホームランダーはキャプテンアメリカとスーパーマン。クイーンメイブはワンダーウーマン。ディープはアクアマン。ブラックノワールはバットマン。
③衣装:誇張
ザ・ボーイズの衣装はどのように誇張されているか。ホームランダーは文字通りアメリカ。スターライトは幼稚な田舎娘からセクシーな女性のシンボルへ。
これらの誇張によってヒーローと一般市民との違いが明確になり、彼らが住む世界・社会的な格差を分けている。
セット
〇セット:物語
美術部はボーイズの舞台が我々が生きる現実社会であることを伝えつつもヒーローによって支配されている世界であることも表現している。
例えば、このシーン。
ビールを買いに来たヒューイだが、Aトレインの写真付きのビールを目にする。そう、彼の幸せを奪ったヒーローである。
脚本でもヒューイが行く先々にA-トレインを目にすることを強調されている。
【本文】
Aトレインのシリアルがクソほど並べられている。
他にもAトレインのボードや雑誌など、美術部は行間を読み、至るところにAトレインを登場させている。
(岩崎:このシーンはヒューイがAトレインから逃げられない、ということと現実社会のハリウッドスター・ヒーローの扱いを皮肉るという二つのことを達成しているのがとても優秀ですね)
〇セット:下調べ
ヴォート社のセットを見てみよう。ギリシャのローマ彫刻を模したセブンの彫刻。
ヒーローの胸像
ギリシャ神殿を彷彿させる柱
天井画。こういった芸術の下調べによってヒーローを神聖化するヴォ―ト社の戦略が見えてくる。
他にもセブンの会議が行われるV型の机はアベンジャーズを彷彿させる。
〇セット:誇張
ヴォ―ト社のビルを例に見てみよう。ザ・ボーイズの美術部は実在するトロントの建物を使ってセブンの本部を作った。
しかし、CGによって町全体を見下ろすかのような高いビルへと誇張されている。それは、ザ・ボーイズの世界ではヒーローが世界を支配していることを伝えるためだ。
小道具
〇小道具:物語
小道具は登場人物が触れるモノを意味する。登場人物がわざわざ触れるものだ。必ず意味がある。
例えば、ザ・ボーイズの第一話でヒューイがお客さんに商品の説明をするシーンを見てみよう。ヒューイはお客を相手に「カーボンのHDMIケーブルの方が電気をよく通す」と説明する。そうご存知の通り、これは後々重要になってくる。
よく見るとAトレインのマウスも飾られている。この二つの小道具がこれから起こる出来事の伏線として機能している。
(岩崎:こういうところに伏線って張れるんですね。勉強になります)
合わせてマデリンの搾乳も伏線として機能しているのである。
ホームランダーが自分の人形を机の中心に持ってきたことにも意味がある。
(岩崎:マデリンの搾乳はスーパーベイビー。ホームランダーが自分の人形を机の真ん中に持ってきたことには彼のマデリンへの歪んだ愛情が含まれているのですね。これらの情報を言葉を使わずに表現しているのが、映画の美学ですね)
〇小道具:下調べ
ヒーローたちのステロイドとも言える「コンパウンドV」は何色であるべきか。原作では青色なので忠実に青。そして、ガラスの容器。これを用意する。
(岩崎:最近ですとGoogleの画像検索でだいたいのモノはでてくるので便利ですね)
③小道具:誇張
誇張は小道具にも含まれる。我々が最初にスターライトを見る時、彼女は車を片手で持ち上げ、壁をぶち壊している。そう、誇張されている。だから、観客に強い印象を与えることができる。
フレンチーにしてもそう。彼は銃を大量に持っています。文字通り、大量に。
しかし、足し算だけが誇張ではない。引き算で誇張をすることもできる。ブッチャーの冷凍庫に一つだけのホットポケッツしかない。このカラッポな冷蔵庫で登場人物のどんな印象を視聴者に与えることができるだろうか。
(岩崎:私が大好きな映画:ファイトクラブの主人公の冷蔵庫もこんな感じでしたね。「調味料はあるのに食材がない」)
誇張をすることによって視聴者は作り手が意図するメッセージ以外のものを受け取らなくてすむ。
【まとめ】
あなたが映画で架空の世界を作る時、こだわるべきは衣装・セット・小道具である。そして、これらを発注・創作する上で以下のことを忘れずに。
①物語を語らせる
②下調べをし、現実社会と繋げる
③誇張をし、視聴者に印象を与える
(岩崎:あなたが好きな世界を持つ作品はなんですか?)
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