自閉っ子、手紙を書く
8月の初め、幼稚園の先生から息子に暑中見舞いのはがきが届きました。
嬉しそうにはがきを窓に貼り、自分で読んだり親に読ませたり。ニコニコと楽しそうな息子に「先生にお手紙書く?」と訊いたところ「書く」とのことだったので、初めてのお手紙にチャレンジしてみることにしました。
手紙とはなんぞや
チャレンジしてみることにしたものの。
現在年長ですが、知的障害・自閉傾向有りと診断されていて、コミュニケーション全般が弱い息子。
手紙のやりとりってコミュニケーションの中でもかなり高度な部類に入ると思います。出し手になる場合と受け手になる場合があるし、やりとりの過程で見えない部分も多いし。
そんな手紙の、「紙に字や絵が書いてあるもの」以外の本質、コミュニケーションツールとしての本質を、彼はどこまで理解しているのか。
試しに「お手紙、なんて書くの?」と訊いてみると・・・返ってきたのは先生からの暑中見舞いに書かれていた文言。
あぁ、やっぱりわかっていなかった。
なんて書こう?
自分が先生に言いたいことを書くんだよ、と伝えました。それでも「なんて書く?」という漠然とした訊き方だと、彼にはまだ答えるのが難しそう。そこで、こちらからいくつか文面を提案してみました。選択肢から選ぶことなら彼にもできるし、一から考えた文面じゃないけれど、選ぶことで一応本人の意思も入るし、と思って。
「せんせいだいすき」「いっしょにあそぼうね」などの文面の中から選んだのは「またなつまつりにいきたいよ」でした。
「なつまつり」とは、夏休み前にあった幼稚園の夏祭りのこと。とにかく楽しかったようで、しばらくの間、家にいるときはずっと夏祭りで使ったスタンプカードを首からさげていました。そして、毎日のように「また夏祭りに行きたい」と私に言ってきました。先生に伝えたらきっと先生は喜んでくれるはず、と思って選択肢に入れたのです。
こうして無事に文面も決まりました。
いざ書き始めた・・・けれど
はがきを用意して書き始めます。息子はひらがなは読めますが書けないので、私が手を添えて「またなつまつりにいきたいよ」とえんぴつで書きました。
無事に書けたはずなのですが、ここで風向きがおかしくなります。
「なつまつり」というワードが出たからでしょうか・・・。前述のスタンプカードを作りたくなったのか、はたまたいつの間にかスタンプカードを作っているつもりになったのか、「さかなつり」とか「だがしやさん」とか、スタンプカードに書いてあった言葉をどんどん言ってきて、書こうと私に迫ります。それじゃ手紙にならないよ・・・。
作業はここで紛糾してしまいました。
私はイライラしかけましたが、「義務じゃないし、書く気持ちがないなら別に書かなくてもいいし」と自分に言い聞かせ、少し離れて息子の様子を見ることにしました。
息子はしばらく迷っていたようでしたが、クレヨンを手に私を呼びました。スタンプカード作りの手伝いかと思ったら、先ほどのえんぴつ書きの「またなつまつりにいきたいよ」をクレヨンでなぞりたい様子。よかった、手紙に戻ってきた!
文面をクレヨンでなぞり、空いているスペースに絵を描き、宛先と差出人を私が書いて、完成!!
さいごに
差出人のところに自分の名前が書かれているのを見てニコニコ嬉しそうな息子。チャレンジしてみてよかったと思いました。
一緒にポストに投函し、ミッション完了。あとは先生のところに届くのを楽しみに待つだけ。
・・・なのですが、投函後、手紙の話を一切せず、こちらから話を振っても興味を示してくれない彼。たぶん、彼の中では投函した時点で終了しているのだと思います。「郵便屋さん、配達してくれたかなぁ」とか「先生はもう受け取ったかなぁ」とか、その先の見えないところを想像するのはやはり難しそうです。
夏休みが終わり、先生から息子に手紙の話をしてくださったのか、まだ確認していません。「お手紙受け取ったよ」と先生に言われたら、彼はどんな反応をするのだろう。
はじめに書いたとおり、手紙のやりとりは高度なコミュニケーション。彼にはだいぶハードルが高いのかもしれませんが、もし理解できたらきっと好きになると思うのです。また機会を見つけて一緒に手紙を出したいです。
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