雨の正体
海を眺めたり、カフェでコーヒーを飲んだり、部屋で音楽を聴いたり、気心しれた友人とおしゃべりしたり。
人によって心が落ち着く場所やリラックス方法はさまざまだ。
瞑想をする人もいれば、焚き火のように暗闇の中で灯る明りを、ぼーっと見つめるのが好きな人もいるだろう。
日々、仕事や家事、育児で忙しくしている人にとって、体や心を休めることは大切だ。肉体的な休みだけでなく精神的な休みも欠かせない。
それもそのはず。
フルタイムで働いている人であればなおさらで、1週間の中で仕事をしている割合のほうが圧倒的に多いからだ。職場環境によっては高圧的な態度の上司、気の合わない同僚、苦手な取引先などの相手をしなくてはいけないだろう。
週のはじめには「100」近くあったヒットポイントが、週末になるにつれて限りなく「0」にまで減ってしまうことも。
心身の回復のためには、自分の心が落ち着く場所やリラックス方法をもっておくことは大切なことだ。
先日、まだ幼い甥っ子を車に乗せて走っていたとき、こんな会話をした。
その日は雨が降っていたので、ぼくが何気なく「雨は嫌だね」というと、「雨は嫌じゃないよ」と返事があった。
「そうなんだ。なんで?」と聞き返してみると、「雨の音を聞くと落ち着くから」と。
なるほどなあ。
なぜ落ち着くのかは本人はうまくことばにできなかったけども、彼のことばを聞いて、ふと、むかしのことを思い出した。
10代のころのぼくは、ほぼ毎日といっていいほど音楽を聴きながら寝ていた。購入したばかりのアルバムやお気に入りの曲を聴きながら寝ていた。
新しいアルバムを聴くときは60分のタイマーをかけたり、それ以外のときは15分〜30分のタイマーをかけて寝るようにしていた。
音楽を聴きながら寝る習慣があったのだ。
でも、雨の日だけは音楽をかけないことが多かった。
もちろん、雨の音が音楽をかき消してしまうという理由もあったけれども、不思議と雨の音が心地よく感じることがあったからだ。
おだやかな雨音はリズムよく感じ、自然と眠りにつくことができた。
(さすがに大雨の日はそうではなかったけど…)
いま思うと、どこか安心感を得られていたのかもしれない。
たとえば、子どもを寝かせるときに背中をトントンしたり、やさしくさすったりしてあげると、スーッと眠りについてくれることがある。リズムが心地よく感じられ、体に触れることで安心感を得られるからだ。
心拍がそうであるように、やはり一定のリズムは安眠をもたらすんだなと。
なんてことを考えていて後になって雨の音について少し調べてみると、どうやら雨の音には安眠の効果があるとのこと。
主な理由としては、以下の3つが挙げられるそうだ。
・高周波を含んでいる
・「1/fゆらぎ」を持っている
・洗い流す感覚がある
中でも「1/fゆらぎ」についてはこのような説明があった。
雨の音の心地よさ、特にリズムに関しては感覚的なものかと思っていたけど、ちゃんと理由があったとは。
自然とは不思議なものだ。
こうして雨の音を聞いてリラックスしている人が、他にもいたりするのかなあ、と思った晴れの日の夜でした。