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グラップリングの立ち技で柔術家はレスラーに勝てない?CJI 2024 柔術世界王者タイ・ルオトロ vs レスリング王者ジェイソン・ノルフを解剖学から読み解く。
グラップラー・高橋“SUBMISSION”雄己が今の格闘技シーンで気になるテーマをピックアップ。
フィジカルトレーナー・森安一好が解剖学の視点から深掘り解説していきます。
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第一弾は、先に開催されたグラップリングの世界的イベント「CJI」から。
高橋 巨額の賞金やスーパーファイト、ADCCとの興行戦争で話題を集めたCJIですが、実はトーナメントのマッチメイクとかめちゃくちゃ良かったんですよね。
初回はそんな中からタイ・ルオトロ vs ジェイソン・ノルフの一戦をピックアップしました。
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森安 タイはONEでも活躍してる世界のトップ柔術家だよね。
高橋 はい。弟のケイドと共に「ルオトロ兄弟」として柔術・グラップリングシーンで大活躍している世界的スター選手です。
立ち技とトップゲーム、スクランブルがめっちゃ強くて、絶対に自分からボトムを取らないスタイルが特徴的で、めっちゃ面白い試合するんですよね。今回のCJIでも圧倒的に優勝候補でした。
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森安 ジェイソン・ノルフってあんまり聞いた事ないけど、タイが圧勝なんじゃないの?
高橋 ところが、これがめっちゃ勝負論あるハイセンスなマッチメイクでして。聞いた事ないのもそのはず、ジェイソン・ノルフってグラップリングの選手じゃないんですよ。
森安 どういうこと?(笑)
高橋 人外が跋扈するアメリカのカレッジレスリングの頂点であるNCAAで複数回に渡りチャンピオンになってる……。つまりレスリングのめっっっちゃくちゃ強い人です。
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絶対に自分から下にならずに立ち技で倒しに行く柔術の世界最強タイ・ルオトロを、自分よりレスリングが強い所謂“専門家”とやらせたらどうなるのか?ってマッチメイクなわけです。
森安 めっちゃ面白い!見てる方は最高!ちょっと意地悪なマッチメイクだけどね。(笑)
高橋 まあそこもクレイグ・ジョーンズらしいですよね。(笑)
※クレイグ・ジョーンズ=CJIを主催した世界的なグラップラー
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【勝負を分けた背中の筋肉の使い方】
高橋 という事で、森安さんにこの試合を観ていただきました。ここから僕と読者の皆様へ、解剖学的な視点から森安さんにこの試合を解説してもらいます。お願いします!
*タイvsノルフは上記リンク先5:25:00あたりから。
森安 了解です!
高橋 試合内容としては、やはりタイが引き込むことはなく立ち技勝負になり。
レスリングで勝るノルフが前半を優勢に進めました。
しかし、中盤から立ち技と寝技の狭間でのポジションの奪い合い=スクランブルでタイがアドバンテージを取り。
終盤ではタイが立ち技で前に出る姿も見られました。結果はタイの判定勝ちで。
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森安 グラップリングのタイvsレスリングのノルフの構図の試合。
相手の懐に素早く入り込む瞬発力とトップポジションを取り続ける事に長けたレスリング競技の選手の方が絶対的にスタンドでは強さを発揮すると思います。
高橋 なるほど…。やっぱり身体的な特徴も、レスリングの選手の方が立ち技に適してるんですね。
初回を観た時は、グラップリングの試合の中での立ち技でも、柔術家は専門家には敵わないんだなと思ってしまいましたもんね…。
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森安 そういう事。でも、途中からタイが立ち技でもいい動きをする場面出てきたでしょ?
高橋 それ思いました。タイすげえ!って。
え、これも解剖学的に説明付くんですか?
森安 もちろん。勝負を分けたのは「背中の筋肉の使い方」だね。
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