それでも、「薬剤師」な理由
「まだですか?病院でも待たされたのに!」
「先生に話したことを、何で薬局でも話さなきゃいけないの?」
「わかっているからいいです、早くして!」
「だまって薬渡せばそれでいいんだよ!」
「また薬変わったんですか?この間も入荷しないからって変わったばかりなのに」
「入荷しない?他の薬局にはあるんでしょ?何とか用意してよ。ないなら他の薬局に行ってもらって」
「これでいいから、いろいろ言わずにそのまま出してよ」
浴びせられる、言葉。
ワタシタチモ、ガンバッテルノ
病院ガ混メバ、薬局モ混ムンダヨ
薬ヲ安全ニ使ウタメニ、教エテホシイコトナンダケドナ
ナイ薬ハナイノ、ドウヤッテモ入ッテコナインダヨ・・・
こんなつぶやきを飲み込みながら、
それでも、わたしは、「薬剤師」をやっている。
まあね、正直、そんなに熱い思いがあってなったわけじゃないのよ。
母親が看護師で、やっぱり女は手に職つけなきゃなって思って
医学部行くには全然頭が足りないし、人の世話する看護師は無理だしってなって
じゃあ薬学行くかって感じだったから。
でも、薬たくさん飲んでるおばあちゃんのことは気になってたんだ。
この薬はどんな効き目があるんだろう?
なんでこんなにたくさん飲まなきゃいけないんだろう?ってね。
ほんと、地味な仕事だと思うよ。
神経使うし。
万が一間違えたら、命に関わる仕事。
それはいつも、肝に銘じてやっている。プロだから。いつも真剣。
新しい薬は次から次へと出てくるし、知らないじゃ済まされない。
当然、一生勉強。薬のことだけじゃなく、病気のことや保険制度のことなんかもね。
そして、その上、薬局って一種のサービス業。
”お客様”があってこそ成り立ってる。
患者さんへの気遣いは当たり前。
そもそも、”お客様”は、具合が悪くて来ている人たちだから。
そそっかしくて、人に気遣いできなくて、わがままなわたし。
浴びせられる言葉に、腹が立ったことも、凹んだことも数知れず。
「わたしには向いてない」「もうやめようかな」って、何度思ったことか。
それでも。
それでも、なぜ、まだ、続けてるのか?
「あなたに相談してよかったわ」
「いつも、薬のこと教えてくれて助かってるよ」
「他の薬局を勧められたけど、あなたがいるからここでもらうって言ったんだ」・・・
患者さんがかけてくれる、うれしい、ありがたい言葉。
そして
こんなわたしを支えてくれる上司、先輩、同僚たち。
「あなたには任せられるって思ってた」
「よく気づいてくれたね」
「一緒だと楽しく仕事できるよ」・・・
未来の薬剤師である実習生にも
「先生のような薬剤師になりたいと思います」・・・
たくさん、たくさん、うれしく、ありがたい言葉をかけてもらってる。
わたしは
薬に携わっていたい。
薬のこと、薬に関係することをもっともっと学びたい。
患者さんが安心できる、元気になる気づきを伝えたい。
大好きな仲間と、気持ちよく楽しく仕事したい。
そんな
わたしの「したい」が
誰かの「よかった」に繋がっている。
それが、この上ない喜び。
だから、やっぱり、わたしは、薬剤師をやっている。