SmartHRに感じたプロダクトデザインの闇と希望の話
こんにちは。 デザイナーの@tyoys00です。
「人事・労務を、ラクラクに。」するSmartHRというプロダクトのデザインをしています。初noteです。
SmartHRでのプロダクトデザインで感じた闇をイベントにして話してきた
デザイナーのみなさん、デザインって難しいですよね。
それがB2Bプロダクトのデザインなら尚更。
さらにSaaSモデルだったりするともう訳がわかりません。
私は先日、そんなB2B SaaSのプロダクトデザインにまつわる恨みやつらみを闇と称して皆で共有するイベント「SaaS Design Darkside」を企画し、ついでにLTの発表を行ってきました。
ありがたいことにたくさんの応募をいただき、LT発表者にも恵まれ当日は良い盛り上がりを見せてくれました。参加応募いただいたみなさまありがとうございました(現在、第二回も企画中です)。
せっかくなのでLTの内容を元にデザイングループのブログにしようと考えたのですが、私のLT内容はSmartHRのデザイン的な闇の暴露が多分に含まれておりましたので今回は載せられる範囲で記事に起こし直してみました。
本来サラリーマンたる者、自社の顔色を伺いながら生きねばならないはずですが、「ワイルドサイドを歩こう」をvalueに掲げている弊社を信じてワイルドサイドな感じでやっていこうと思います。
これが私の最後のグループブログにならないことを一緒に祈りながら読んでいただけたら幸いです :)
SmartHRというプロダクトに起きている変化
個人的な印象ですがSmartHRというプロダクトは今、大きく変化しようとしている気がします。
というのも、初期に設計されていたUIでは対応しきれないようなアクションへのユーザー要望が確実に増えてきているからです。
SmartHRというプロダクトは元々は小規模の従業員数の企業などにヒアリングしながら作られたプロダクトだったと聞いています。
そんな中で、様々な企業の業務に対応できるようアップデートを繰り返し現在のプロダクトへと変化してきました。
現在では10万人規模の従業員数を抱える企業に対しても対応できるプロダクトを目指して開発も行われています。
技術的な負債は確実に解消し、プロダクトのパフォーマンスには益々の磨きがかかってきていますが、一方でユーザーシナリオに基づく体験設計やUI設計に関してはまだまだ改善しなければいけない点が少なくありません。
例えば、大規模な従業員数を抱える企業になるほどSmartHR単体で業務が完結することはなくなり、「SmartHRのデータをエクスポートして別のアプリケーションやサービスで利用する」ことや「エクセルなどで管理していたデータをインポートしてSmartHRを利用する」ことが求められていきます。
これは初期には優先度が高くなかったシナリオですが、利用するユーザーの属性が広がったことで優先度に変化が出てきたことが伺えます。
プロダクトが成長すると求められる機能も変わる
そもそも、SmartHRの設計思想には、銀行のATMやカラオケのデンモクのようなタスクベースの設計思想が強く息づいていました。
これは社会保険や雇用保険などの行政手続きをいかに留まることなく行えるかを実現するためにそれぞれの手続きを「タスク」として分解した結果、その業務をSmartHRがコンシェルジュのように導いていこうという非常にホスピタリティの高い思想から出発していたことが想像できます。
しかし、タスクベースであることによって、本来ユーザーが自由に扱えるはずのユーザー自身の情報がSmartHRで定義された使い方の中でしか利用できなくなっている場面も生まれてしまいました。
ここにはプロダクト外での業務までもをユーザーが得るプロダクトの体験としてデザインしていくような広い視野でのUXデザインが必要になってきます。そのためには、私たちはより現場に踏み入ったUXリサーチなどを行えるチームになるがことが必要です。
オブジェクトベースの設計思想の必要性
「SmartHRのデータをエクスポートして他社のプロダクトで利用する」というのは、オブジェクトとしてのデータがありそれをどのように使うかはユーザーに委ねている状態でもあります。
また、手続き以外の業務においては多くの件数を選択した状態でどのような処理を行うかをユーザーが判断しながら業務を行う場面も出てきます。
このような「名詞→動詞」の流れでのアプリケーションの使い方は、ソフトウェアデザインではオブジェクトベースの設計として捉えることができます(UIに反映した際にいわゆるOOUIと呼ばれるものですね)。
現在のSmartHRでは情報の見せ方がタスクベースであることに引っ張られてしまったことで、同じオブジェクトであるはずのものが画面によって名称が別のものになってしまったり、正しく定義できていないなどの問題が散見されています。
今後の幅広いユーザーニーズに応えるためにも、情報設計の再定義やOOUIに基づいたUI設計などプロダクトの根本をデザインし直す業務に取り掛かることで上記の問題を改善していかなければいけません。
タスクベースとオブジェクトベースの融合を目指して
とは言え、「タスクベースが悪だ。」とこれまでのSmartHRを全否定する必要はないと考えています。
というのも、従業員ひとりひとりに対して手続きを行うという1:1の性質を持つ行政手続きという処理をタスクベースで行っていくことに妥当性があるのも事実だからです。
これまでのホスピタリティの高い体験は活かしつつ、従業員をキーオブジェクトとした業務に対してはオブジェクトベースでUIを設計していくなど、タスクベースとオブジェクトベースを適材適所で用いた「バイモーダルなUI」のプロダクトがこれからのSmartHRに必要なのではないかと考えています。
今、SmartHRのプロダクトデザインは転換期なのでは?
上記の内容を踏まえて、あらためてSmartHRはプロダクトの設計思想にテコ入れが必要な転換期にあるのではないかと考えています。
プロダクトの根本にある思想をアップデートしていき、かつこれまでSmartHRに携わってきた社内外の人々に対してもマインドチェンジを働きかけていかないといけません。
プロダクトの価値をデザイナーも担保していこうとする大きなチャレンジが徐々にですが始まりつつあります。
SmartHRは「優しい」思想を持った人たちがつくった「優しい」プロダクト
プロダクトデザイナーとして入社してみて、SmartHRというプロダクトはカスタマーサクセスを一番に考えた非常にホスピタリティの高いプロダクトであり、本質的に「優しい」プロダクトだと思いました。タスクベースもその反映なのではないでしょうか。
SaaSプロダクトにおいてカスタマーサクセスは最も重要な変数でもあるので、ホスピタリティを保ちたいという気持ちは大事にしていかなければなりません。
一方で、ユーザー自身が創造的に業務を行えるようユーザビリティという意味での「優しさ」も担保しなければいけません。
そこにはやはり、デザイナーのちからが必要だと思っています。
顧客から求められるものが変化しているということがプロダクトが健全に成長しているということかもしれない
このような内容をLTで話してきたのですが、当日のイベントで行ったパネルディスカッションでひとつ印象深い場面がありました。
SaaSプロダクトにおいて「なぜ闇は生まれるのか」という問いに登壇者のひとりがこのように答えてくれました。
「プロダクトが成長していれば闇は生まれる。闇が生まれるということが成長している証拠である」
闇をはらみながらもプロダクトが変化し続けているということが健全に成長していることであるならば、SmartHRはプロダクトとして今とても健全に成長しているのではないかなと思います。
ぜひ、SmartHRがどれだけ変わっていけるかを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
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