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大学受験現代文の標準的な勉強法


はじめに

 現代文は、どうすれば成績を上げられるのかがよく分からない科目として不安の種になることも多いかなと思います。そこで今回は、『大学受験英語の標準的な勉強法』に続いて、大学受験現代文の標準的な勉強法について話していきます。

 英語と現代文の他に、古文漢文数学世界史地理の標準的な勉強法についての記事もありますので、もしよければそちらも参考にしてください。

 ここでは、広く受け入れられていそうな参考書や考え方を紹介していきますので、特に目新しいことないかもしれません。私が個人的におすすめする参考書や勉強法については、別の記事を書く予定です。また、「勉強法」とどう向き合うかについては『自分に合った勉強法や参考書を見つけるためのヒント』を参考にしてみてください。

 まず、ここで紹介する勉強法は、高校入学から大学受験直前までの期間を想定しています。つまり「このランクの大学を目指す人向け」といったレベルは設定していません。その分、大まかな流れを示すに留まっていますがご了承ください。

 世界史などの他の科目とは違って、志望大学によって勉強の方向性が大きく変わることはありません。つまり、大学を問わず同じ流れで勉強を進めるけれども、志望大学のレベルによって、ここで示した流れの内の「どこまで進められるか」という完成度が変わってくるということになります。

 とはいえ、最終的には志望大学によって形式の違いがあるので、読解問題集を通して基礎力を高めたうえで、過去問演習を通して形式に慣れていく必要があります。

 また、高校の先生の方針や予備校のカリキュラムをそれぞれが抱えていると思いますから、ここで示す通りに進まなくとも気にしなくて構いません。それぞれに得意不得意もありますから、これから示す勉強の流れや参考書のすべてをやる必要はありません

 現代文については、他の科目の勉強法の説明とは違って「これを終えたらこの分野に入って、次はまたこの分野に戻る」といったややこしい流れはあまりないので、各分野ごとに説明をしていけば十分分かるかなと思います。

 そこで、各分野ごとの勉強法や参考書の紹介から入ることとします。具体的には、「漢字」「現代文単語」「評論選」「読解問題集」「文学史」になります。


各分野の勉強に使われる参考書と注意点

 ここでは、5つの分野について説明をしていきますが、「どの分野から入るべき」といったものは特にありません。基本的な知識となる「漢字」「現代文単語」や暗記分野の「文学史」は早めに終わらせておく方が良いですが、それを完璧にするまで「評論選」「読解問題集」に入るべきではないと言うほどでもありません。

 とはいえ、現代文の勉強の中心となるのは「評論選」と「読解問題集」です。基本的には「評論選」は「読解問題集」の準備という形になります(後述)。「評論選」を読みつつたまに「読解問題集」を解くという形でも構いません。


漢字

 漢字はどの大学でも出題される問題です。基本的で配点も低いものの、やれば確実に取れる点という意味では、頑張って勉強をしなくてはなりません

 勉強をする際には、漢字を書けるようにするだけではなくて、言葉の意味まで把握していきましょう。語彙力を強化して、(現代文に限らず他の科目でも)論述問題で解答する際の幅を広げることが、漢字の学習の目的の一つとなっているからです。

 漢字の参考書は、多く出版されています。大差はないので、どれを使っても構いません。学校指定のものがあればそれを、自分の好みに合うものがあればそれを使うのでよいでしょう。

 ここで1冊だけ、桐原書店編集部(2023)『上級入試漢字・語彙』(桐原書店)を紹介しておきます。「これをやっておけば少なくとも入試で知らない漢字が聞かれることはない(もし知らなければ他の受験生も知らない)」となるような、少し難しめの参考書です。逆に言えば、少し過剰だという意見もあります。自分の好みに合うものを探してみてください。


現代文単語

 受験で出題される評論などの文章は、抽象度が高く、知らない単語が出てくることもあるかもしれません。そこで、現代文の読解でよく使われる用語をしっかりと理解しておくことが必要になります

 いろいろな参考書がありますが、代表的なものとしては、斎藤哲也(2020)『読解 評論文キーワード 改訂版 頻出270語&テーマ理解&読解演習54題』(筑摩書房)があります。著者の斎藤哲也氏は、参考書としてではなく一般向けの哲学の解説書などで有名な方です。

 少し古いものであれば、前島良雄・牧野剛・三浦武・吉田秀紀・後藤禎典(2001)『ことばはちからダ!現代文キーワード』(河合出版)なども有名です。


 現代文単語とは少し離れてしまいますが、現代文に頻出のテーマの理解として、児玉克順・fancomi(2018)『イラスト図解でよくわかる!現代文読解のテーマとキーワード』(学研プラス)を読んでみてもよいかもしれません。とても分かりやすく解説がされています。


 志望大学によっては、評論の読解対策としての現代文単語の他に、小説や文学的作品の読解対策としての現代文単語を勉強する必要があります。特に共通テストでは、そういった語句の意味を直接聞いてくることもありますから、対策しておかなければなりません(共通テストに関していえば、年度によって出ていないこともあります)。

 これについても、いろいろな参考書があります。1つ挙げるなら、霜栄(2020)『共通テスト対応 生きる現代文 随筆・小説語句』(駿台文庫)がメジャーでしょうか。問題が多く収録されています。


評論選

 もしかしたら、「漢字」「現代文単語」「読解問題集」と並んで「評論選」があることに少し違和感を覚えた人もいるかもしれません。

 これは、入試で出題されるレベルの評論に慣れるためのステップとして設けたものです。ほとんどの人は、主に高校の現代文の授業がこの役割を担うことになるはずなので、わざわざ項目として並べられることは少ないのかもしれません。

 問題集を解き続け、解答の仕方を理解していけば成績も上がってくるはずです。実際、高三から現代文の勉強を本格化させるとなればそういった勉強が中心となります。

 ただ、もし超難関大学を目指すとか、あるいはまだ受験まで時間に余裕があるのであれば、自ら読書量を増やす方が望ましいです。根幹となる読解力を高めるとともに評論文に慣れることが必要になってくるからです。

 実際に評論系の本を多く読むというのでよいのですが、それだとどれを読めばよいのか少し困惑するかもしれないので(あるいはあまり"勉強"感がないかもしれないので)、評論をまとめた「評論選」と言われるものを紹介します


 実はこの種の参考書もいろいろあるのですが、代表的なものを紹介します。岩間輝生・太田瑞穂・坂口浩一・関口隆一(2021)『ちくま評論入門 二訂版 高校生のための現代思想ベーシック』(筑摩書房)です。

 難易度を少し上げたものとして、岩間輝生・坂口浩一・関口隆一・佐藤和夫(2018)『高校生のための現代思想エッセンス ちくま評論選 二訂版』(筑摩書房)もあります。

 学校で購入した教科書に載っている評論文を読んだり、教科書やここで紹介した参考書に出てくる評論文の出典から実際にその本をとってみるのもよいと思います。


読解問題集

 先ほど述べたように、(特に高三から現代文の勉強を本格化させた場合は)現代文の勉強としては読解問題集を多く解いていくことになります

 何冊解けばよいとか、このルートに沿ってやっていけばよいというのは他の科目ほど明らかではありません。それまでの読書量や日々の生活によって、見かけの勉強量以上に差がついてしまっているためです。

 とはいえ志望校に合格するという目標は明らかですから、問題集を解き進めつつ、たまに模試を受けたり過去問を解いたりして自分のレベルが十分かを確認していくことになるでしょう。自分の目標に対して「現代文が足を引っ張っている」となれば演習量を増やし、「かなり余裕がある」ということであれば(演習量を0にはせずに)他の科目に時間を割くなどしましょう。


 参考書は多数出版されているのですが、代表的なものを数冊取り上げます。緩やかに難易度順をイメージしています。

 まず、船口明(2018)『船口の最強の現代文記述トレーニング』(学研プラス)です。志望大学によっては記述問題がないこともありますが、読解の仕方という意味では大きな違いはないので、一度解いてみるとよいと思います。

 もし難しければ、船口明(2010)『船口のゼロから読み解く最強の現代文』(学研プラス)から解いてみてもよいかもしれません。

 次に、霜栄(2011)『現代文読解力の開発講座〈新装版〉』(駿台文庫)があります。10年以上前のものですが、いまだによく使われています。

 逆にこちらは最近出版されたものですが、斎藤哲也(2023)『ちくま現代文記述トレーニング テーマ理解×読解×論述力』(筑摩書房)も非常によくできた参考書です。先ほど紹介した『読解 評論文キーワード』と同じ著者です。

 少し難易度の高いものとして、竹国友康・前中昭・牧野剛(2016)『現代文と格闘する 三訂版』(河合出版)もあります。見るからに分厚いですが、詳しい解説が載っています。

  記述が中心となる国立志望者と、選択が中心となる私立志望者は、このあと過去問演習に入る中で慣れていけばよいでしょう。ただし、共通テストについては、制限時間内に素早く解くというそれに特化した対策が必要になります。読解問題集を進めるなかで共通テスト形式の問題もたまに解いて慣れておくとよいと思います。


文学史

 文学史の勉強をすべきなのかどうか、という疑問はあると思います。まずは志望大学の直近の過去問数年分を見て、出題されているかを確認してみましょう。出題されているのであれば、やはり対策が必要になります。とはいえ、出題されていなかった場合でも、特に早稲田大学などの場合は数年おきに出たり出なかったりすることもあります。

 文学史は、受験生としては多くの時間を割けないものの、その気になれば何とか割けなくはないような、勉強すべきか悩ましい分野です。一方で、やっていなかった場合には手も足も出ずにかなり困るほか、出題者としては出題がしやすいといった特徴もあります。余裕がある場合は、軽く勉強しておくのがよいでしょう


 このような特徴から、軽く全体を押さえられる参考書が望まれます。よく使われるのは、Z会編集部(2012)『SPEED攻略10日間 国語 文学史』(Z会)です。さすがに10日間で終えるのは厳しいものがありますが、それでも短期間で重要事項を押さえられる参考書であることに違いはありません。


おわりに

 現代文の勉強は、後回しになってしまいがちかもしれません。たしかに、「やらなくても0ではない」上に「多少やってもすぐ伸びない」科目ですから、手をつけづらい側面はあります。

 しかし、大学受験に臨むなら、何らかの形で現代文を利用することがほとんどですから、普段から少しずつ勉強を重ねていく必要があります。すぐに勉強が成績には反映されませんし、心が折れそうになることもあるかもしれません。それでも諦めずに毎日勉強をしていきましょう。緩やかに成績も追いついてくるはずです。

 現代文の勉強を通して、自分の興味のある分野を見つけられたり読書の習慣を身につけられたりするとそれは受験を終わったあとにも繋がる財産となります

 また、現代文は、他の科目で考えるための土台ともなる科目です。現代文を真剣に勉強していくことは、難易度の高い英文を読んだり、数学で論理的に文章を組み立てたり、世界史の記述をしっかりと理解することにも大きく役立ちます。少しずつ、地道に頑張っていきましょう!

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