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織田 由紀夫
2024年1月7日 10:07
「田中さん、肺癌だってよ。しかもステージ5」近くで同僚が呟いている。瑠璃には微かに聞き取れた。そして、パソコンを打つ瑠璃の手が止まった。田中さんは、瑠璃の直属の上司だった。新卒で入って来た瑠璃の教育係が田中さんだった。窓の外に目をやると、まだ寒い日は続きそうだ。働き盛りの田中さんが癌だと、瑠璃にとっては、まさに驚天動地の事だった。信じられない出来事はいつだって、突然訪れる。