▼ 伊吹弥三郎 : 歴史と神話の融合
00:00
Ready to dive into some seriously captivating Japanese folklore?
とても興味深い日本の民話を深堀りしていきましょう。
00:03
Let's do it.
そうしましょう。
00:03
Today we're tackling Ibuki Yasaburō.
今日のテーマは 伊吹弥三郎です。
00:06
Ah, a figure shrouded in mystery.
ああ、謎に包まれた人物ですね。
00:09
Even many Japanese folks are kind of stumped by him, to be honest.
じつは、日本人でさえ、伊吹弥三郎の複雑さには困惑しています。
00:12
That's what makes this deep dive so fascinating though, right?
でも、そこが今回の深掘りを興味深いものにしていますね。
00:14
Exactly.
その通りです。
00:15
We've got this puzzle where the pieces don't quite seem to fit.
ピースがうまく合わないパズルのようなものです。
00:18
A blend of history and myth.
歴史と神話の融合です。
00:20
We're talking Water God Dragon Oni.
ウォーター・ゴッド・ドラゴン・オニ(水竜鬼)についての話です。
00:22
Try saying that five times fast.
それを5回早く言ってみてください。
00:24
Not a creature you bump into every day, that's for sure.
毎日出会うような生き物でないことは確かです。
00:27
That potent imagery is
what makes this whole exploration so captivating.
これこそが、今回の話題を興味深いものにしています。
00:30
And thankfully we have Yukinobu Kurata's blog post to guide us.
そしてありがたいことに、倉田幸暢さんのブログ記事が私たちを導いてくれます。
00:35
Talk about in-depth.
奥深い話ですね。
00:36
He's pulled together historical records, folk songs,
彼は歴史的記録、民謡、
00:39
even local tales just to make sense of this Ibuki Yasaburō.
地元の民話までをも集めて、この伊吹弥三郎を理解しようとしました。
00:42
He really brings a lot to the table.
彼は本当に多くのことを提供してくれます。
00:44
It was Kurata's take on Ibuki Yasaburō's constantly shifting identity
that really grabbed my attention.
伊吹弥三郎の絶えず変化する人物像に対する倉田さんの見解は、
私の心をとらえました。
00:50
Oh, absolutely.
ええ、その通り。
▼ 史実上の柏原弥三郎 : 盗賊から鬼への変貌 (※)
00:50
So who was this guy?
それで、伊吹弥三郎とは一体誰だったのでしょうか?
00:53
Or should we say, who did people believe him to be?
あるいは、人々は彼をどのような人物だと信じていたのでしょうか?
00:55
That's the million-dollar question.
100万ドルの価値がある質問ですね。
00:56
A good starting point is what Kurata points out
a potential historical counterpart.
出発点として、倉田さんが指摘している、
「伊吹弥三郎と重なる歴史上の人物」に注目してみましょう。
01:01
You mean a real-life basis for the legend?
伝説のもとになった史実の話ですか?
01:03
Exactly.
その通りです。
01:04
Kashiwabara Yasaburō.
柏原弥三郎です。
01:06
And who was this Kashiwabara?
そして、この柏原とは誰だったのでしょうか?
01:08
A bandit, it seems,
operating around Mt. Ibuki-yama back in the 13th century.
13世紀に伊吹山周辺で活動していた盗賊のようです。
01:13
So whispers of this real-life bandit could have morphed into
the larger-than-life tales over time.
つまり、この実在した盗賊の噂が、
時とともに壮大な物語へと変貌していったのかもしれません。
01:19
Precisely, like a centuries-old game of telephone.
まさに、何世紀も前の伝言ゲームのようなものです。
01:21
You start with a kernel of truth and Bang!,
you get something way more fantastic.
史実だったものが変貌して、とても幻想的なものが生まれました。
01:26
It's the classic evolution of folklore.
典型的な民間伝承の進化ですね。
▼ 千の顔をもつ弥三郎 : 両義的なウォーター・ゴッド・ドラゴン・オニ(水竜鬼)
01:28
The thing is, Ibuki Yasaburō isn't just some
fearsome bandit who got a mythical makeover.
重要なのは、伊吹弥三郎が、単に神話的な変貌を遂げた
恐ろしい盗賊ではない、ということです。
01:33
He's so much more.
彼はそれ以上の存在なのです。
01:35
Right.
その通りです。
01:35
He becomes this embodiment of all these paradoxical characteristics.
彼は、これらの奇異な人物像たちの化身なのです。
01:39
It's like he's defying our need to put things into neat little boxes.
まるで、物事をきちんと小さな箱に分類したいという
私たちの欲求に逆らっているかのようです。
01:42
He's a demon, a water deity,
a giant, and often all within the same story.
彼は鬼であり、水神であり、巨人であり、
そしてしばしば同じ物語の中でそれらすべてなのです。
01:48
You've got that right, which brings us to
the whole Water God Dragon Ony thing.
その通りです。それで、
ウォーター・ゴッド・ドラゴン・オニ(水竜鬼)の話になるのですが。
01:52
Mouthful, isn't it?
舌を噛みそうな言葉ですね。
01:53
What struck me was this inherent contradiction.
私が心を打たれたのは、彼が抱えている矛盾でした。
01:56
It's both benevolent and fearsome all at the same time.
伊吹弥三郎は、慈悲深くもあり、恐ろしい面もあります。
02:00
Does this duality hint at
a deeper cultural understanding of nature's power?
この両義性は、自然の力に対する
より深い文化的理解を示唆しているのでしょうか?
02:05
Maybe?
そうかもしれませんね?
02:06
100%.
100%そうです。
▼ 両義性をもつ水神、自然神としての伊吹弥三郎
02:07
In Japanese folklore, mountains and water sources
aren't just geographical features.
日本の民話では、山や水源は単なる地理的な存在ではありません。
02:12
They're practically characters themselves, right?
それらは人格をもつ存在として扱われていますよね。
02:13
Exactly.
その通りです。
02:14
They're sacred, seen as dwelling places of
spirits and deities full of power.
それらは神聖であり、力に満ちた精霊や神々の住み家と見なされています。
02:18
And Ibuki Yasaburō embodies that connection perfectly.
そして、伊吹弥三郎は、そのつながりを完璧に体現しています。
02:21
Tied to both Mt. Ibuki-yama and the rivers surrounding it.
伊吹山とそれを取り巻く川、その両方に結びついています。
02:24
He's linked to rituals for rain.
彼は雨乞いの儀式と関連付けられています。
02:26
Which is essential for life.
雨水は生命に不可欠です。
02:27
Yet he's also this ony, capable of incredible destruction.
しかし、彼はまた、信じられないほどの破壊能力を持つ鬼でもあります。
02:31
It's like he embodies that understanding that
nature can be both life-giving and incredibly destructive.
まるで、自然は生命を与えるものでもあり、
破壊的なものでもあるということを表しているかのようです。
02:39
A force to be reckoned with, in either case.
どちらの場合でも、侮れない力です。
02:42
It makes you think twice about those clear-cut distinctions
we often make, good versus evil.
善と悪という、私たちがしばしば行う明確な区別について、考えさせられますね。
02:46
When in reality, it's more about the ebb and flow, right?
実際には、それはもっと流動的なものですよね?
02:49
Like in nature, there's always this constant interplay
between those forces.
自然界のように、それらの力の間には常に相互作用があります。
02:53
Absolutely.
まったくその通りです。
02:54
It's rarely about absolutes.
絶対的なものであることは、めったにはありません。
02:56
Could it be that Ibuki Yasaburō embodies that very balance?
伊吹弥三郎は、それらの均衡を体現する存在なのでしょうか?
03:00
Now that's a fascinating thought.
興味深い考えですね。
03:01
And it really gets to the heart of folklore, doesn't it?
民話の核心を突いてますね。
03:03
It's not about those black and white distinctions
we see so often elsewhere.
これは、よくある白黒はっきりした区別ではありません。
03:07
There's this fluidity, a blending of attributes,
that reflects a much more nuanced view of the world.
そこには流動性があり、人物像の融合があり、
世界に対する繊細なとらえ方を反映しています。
▼ 巨人、ダイダラボッチ、大地神としての伊吹弥三郎
03:13
Speaking of nuanced,
there's another layer to Ibuki Yasaburō we have to address.
繊細な話といえば、伊吹弥三郎にはもう一つ、
私たちが取り組まなければならない側面があります。
03:17
This deep dive wouldn't be complete without talking about
the elephant in the room, or rather the giant on the mountain.
この深掘りでは、山の巨人について話さずには終われません。
03:23
Ah, yes.
ああ、そうですね。
03:24
Literally larger than life.
文字通り、実物よりも大きいのです。
03:26
Kurata mentions how he's depicted as this towering figure,
even drawing parallels to Daidarabotchi.
倉田さんは、伊吹弥三郎が巨人として描かれていることについて言及し、
ダイダラボッチとの類似点も挙げています。
03:32
Another famous giant from Japanese folklore.
日本の民話に登場するもう一人の有名な巨人です。
03:35
Can't forget him.
彼を忘れることはできません。
03:35
And not just any giant.
そして、ただの巨人ではありません。
03:37
Daidarabotchi is a primordial being.
ダイダラボッチは根源的な存在です。
03:39
The OG giant.
巨人の元祖です。
03:40
The stories credit him with shaping the very land itself.
ダイダラボッチは、さまざまな伝承のなかで、
地形を作り上げた存在とされています。
03:43
So by linking Ibuki Yasaburō to a figure like that...
なので、伊吹弥三郎をダイダラボッチと結びつけることで...
03:46
It elevates him, gives him this ancient earth-altering power.
それによって、伊吹弥三郎の力が増大して、
大昔に彼が地形を変化させたという話が生まれました。
03:50
It's amazing how connecting figures like that colors
our understanding of them, don't you think?
こうした人物像を結びつけることで、彼らに対する理解が深まるのは
驚くべきことだと思いませんか?
03:55
It adds a whole other dimension.
まったく別次元のものに変わりますね。
03:57
Does it make Ibuki Yasaburō more god-like?
それによって伊吹弥三郎は 神格化されるのでしょうか?
04:00
Or does giving him that lineage, that connection to another being,
somehow ground him more in the human realm?
それとも、彼にその血筋、他の存在とのつながりを与えることで、
彼をより人間の世界に根付かせるのでしょうか?
04:06
That right there is the question at the heart of our deep dive today.
まさにそれが、今日の深掘りの核心となる質問です。
04:09
It's going to be an interesting one to unpack.
解き明かされるのが楽しみですね。
04:11
Back again, ready to uncover more about Ibuki Yasaburō?
最初の話にもどって、伊吹弥三郎のその他の謎を解き明かしていきましょう。
04:14
Let's pick up where we left off.
中断したところから始めましょう。
04:16
Before the break, we were really getting into
Ibuki Yasaburō as this powerful ancient being.
さきほどは、古代の強大な存在としての伊吹弥三郎に焦点を当てました。
04:22
Right, those primordial connections.
そうです、根源的存在とのつながりです。
04:25
But Yukinobu Kurata's blog post doesn't just focus on
the mythical larger-than-life stuff.
ですが、倉田さんのブログ記事は、
神話的な伝説だけに焦点を当てているわけではありません。
04:31
There's another side to him.
伊吹弥三郎には別の側面があります。
▼ 人間性をもつ伊吹弥三郎 (※)
04:33
He's got these surprisingly human elements to his story.
伊吹弥三郎の物語には、驚くほど人間的な要素があります。
04:36
It's that juxtaposition that
really makes him fascinating, don't you think?
まさにその並置こそが、伊吹弥三郎を魅力的な存在にしていますね。
04:40
Totally.
その通りです。
04:41
On one hand, you've got these connections to beings
who shape the land, who control the elements.
一方では、地形を変化させ、自然を制御する存在とのつながりがあります。
04:46
Like forces of nature.
自然の力のようなものです。
04:47
And then you see these glimpses of a figure driven by love,
capable of both rebellion and generosity.
もう一方では、愛に突き動かされ、
反逆と寛大さの両方を持つ人物像も垣間見えます。
04:52
It's a unique mix.
独特な組み合わせですね。
04:53
Like that whole Robin Hood aspect like what Kurata mentions.
倉田さんが言及しているような、ロビンフッド的な側面です。
04:56
Stealing from the rich, that kind of thing.
金持ちから盗む、そんな感じです。
04:57
Exactly.
その通りです。
04:58
Makes you wonder how that part of the legend came about.
伝説のその部分がどのように生まれたのか、不思議に思いますね。
05:00
A way to soften his image, maybe?
伊吹弥三郎の印象を和らげるための手段だったのかもしれませんね。
05:03
Maybe make him a bit more relatable to the common folk?
庶民にとって親しみやすい存在にするためだったのかも。
05:05
Could be.
そうかもしれません。
▼ 当時の庶民の人たちが想いを託し、語り継いだ伊吹弥三郎の物語
05:06
Or maybe it reveals something about
how people viewed morality back then.
あるいは、当時の人々が道徳をどのように見ていたかについて、
何かを示唆しているのかもしれません。
05:10
Ooh, that's interesting.
おお、それは興味深いですね。
05:12
These stories were often used to explain the unexplainable, right?
こうした物語は、説明するのが難しいことを説明するために、
よく使われていましたよね?
05:16
To make sense of the world around them.
自分たちを取り巻く世界を理解しようする試みですね。
05:17
So perhaps casting Ibuki Yasaburō as this figure
who fought against injustice, even he did it in unorthodox ways.
なので、たとえ正統な方法ではなかったとしても、
伊吹弥三郎を 不正と戦った人物として描くことは、
05:25
It resonated with those who felt powerless.
無力感を感じていた人々の心に響いたのかもしれません。
05:27
Exactly. The little guy.
そう、庶民の人たちです。
05:29
It reminds us that these stories weren't static.
They constantly evolved.
伊吹弥三郎の物語は静的なものではなく、絶えず進化していました。
05:33
Shaped by the people who told them.
それらの物語を語る人々によって形作られました。
05:35
Reflecting their hopes, their fears, the whole social fabric of the time.
彼らの希望、彼らの恐れ、当時の社会構造全体を反映しています。
05:39
It's a reflection of their world.
当時の庶民の人たちの世界観が反映されています。
▼ 恋人おそでさんと伊吹弥三郎の愛と喪失の物語 (※)
05:41
And speaking of humanizing elements
そして、人間的な要素といえば、
05:43
Let's not forget about the romance.
ロマンスのことを忘れてはいけません。
05:45
Right. Kurata talks about
Ibuki Yasaburō's love for a craftsman's daughter.
そうです。倉田さんは、伊吹弥三郎と職人の娘の愛について語っています。
05:50
Forbidden love. A classic.
禁断の愛。古典的ですね。
05:52
It's like the oldest story in the book.
それは、本の中で最も古い物語のようです。
05:54
But it works!
でも、とてもいい話です!
05:55
It really adds that human touch.
それは本当に人間的な一面を加えています。
05:57
Even to a figure who's often depicted as a fearsome demon or a giant
恐ろしい鬼や巨人として描かれることが多い人物であっても、
06:01
It shows that even these extraordinary beings
そうした超常的な存在でさえも、
06:03
Beings of myth and legend
神話や伝説の存在であっても、
06:05
They're still susceptible to matters of the heart.
心の問題には影響を受けやすいことを示しています。
06:07
It makes you wonder how that love story actually played out.
その恋物語が実際にはどのように展開したのか、不思議に思いますね。
06:10
We can only imagine.
想像するしかありません。
06:11
Tragic ending.
悲劇的な結末です。
06:12
Further solidifying Ibuki Yasaburō as a tragic hero.
伊吹弥三郎を悲劇の英雄としてさらに強固なものにしています。
06:15
Or maybe love conquers all. A testament to its power.
あるいは、愛はすべてに打ち勝つのかもしれません。その力の証です。
06:18
We may never know.
私たちは決して知ることはないかもしれません。
06:20
Unfortunately, Kurata's post doesn't give us all the juicy details.
残念ながら、倉田さんの投稿は、すべての興味深い詳細を教えてくれません。
06:23
Aw, too bad.
ああ、残念です。
06:23
Yeah.
ええ。
06:24
But I guess it's more about the overall impression it creates.
ですが、そこから浮かび上がってくる印象のほうが重要なのでしょう。
06:26
That softening of his image.
伊吹弥三郎の印象を和らげてますね。
06:29
The reminder that even a figure of immense power
is capable of experiencing love and loss.
計り知れない力を持つ存在でさえ、
愛と喪失を経験するということを思い出させてくれます。
06:34
It makes him much more relatable, that's for sure.
それによって、彼はとても親しみやすい存在になっています。それは確かです。
▼ 実在する伊吹弥三郎の岩屋(播隆上人の風穴)(伊吹山の洞窟)
06:36
Speaking of relatable.
親しみやすいといえば。
06:37
Or at least grounded in something tangible.
具体的なものに根ざしています。
06:39
Kurata talks about a real place.
倉田さんは実在の場所について話しています。
06:41
That's right.
その通りです。
06:42
There's a real physical cave on Mt. Ibuki-yama.
伊吹山には実際に存在する洞窟があります。
06:45
Can get more real than that.
これ以上リアルなものはないでしょう。
06:47
And it's linked to Ibuki Yasaburō.
そして、その洞窟は伊吹弥三郎ゆかりの場所です。
06:48
A place of mystery.
神秘的な場所ですね。
06:50
Even a famous Buddhist monk used it for meditation.
有名な仏教僧である播隆上人も、瞑想のためにその洞窟を利用していました。
06:53
Really?
本当ですか?
06:53
Yeah. I thought that was fascinating.
ええ。興味深いことですね。
06:55
The contrast between the cave's darkness.
洞窟の暗闇と、
06:58
The unknown it represents.
それが表す未知のものとの対比です。
06:59
And then its use as a space for spiritual practice.
そして、それが精神的な修行の場として使われていた。
07:03
For finding inner peace.
心の平安を見つけるために。
07:04
It's that duality again, isn't it?
それはまたしても両義的ですね。
07:06
The dangerous and the divine all wrapped up in one.
危険なものと神聖なものが一つになっています。
07:09
Caves have that kind of energy, don't they?
洞窟にはそのようなエネルギーがありますよね。
07:11
Totally. Like thresholds.
その通りです。境界のようなものです。
07:13
Gateways to the underworld.
黄泉の国への入り口ですね。
07:15
Or to hidden knowledge.
あるいは、隠された知識への入り口です。
07:16
Secret worlds.
秘密の世界です。
07:17
Maybe this particular cave was seen as a portal.
もしかしたら、この洞窟は「門」だと考えられていたのかもしれません。
07:21
To Ibuki Yasaburō's realm.
伊吹弥三郎の領域への。
07:22
A thin veil between the human and the supernatural.
人間と超自然的なものをへだてる、薄いベールです。
07:26
That's an image.
いいたとえですね。
07:27
Imagine people making pilgrimages to this cave.
人々がこの洞窟に巡礼をしているところを想像してみてください。
07:30
Hoping to catch a glimpse of him.
伊吹弥三郎を感じたいと願って。
07:31
Or to ask for his favor especially because he's connected to water.
あるいは、水信仰の対象でもある伊吹弥三郎に雨乞いをするのかもしれません。
07:35
Which is essential for life, of course.
もちろん、水は生きるために必要なものですからね。
07:37
Kurata doesn't mention any pilgrimages specifically.
倉田さんは巡礼について具体的には言及していません。
07:40
But just the fact that this cave exists.
しかし、この洞窟が存在するという事実だけで。
07:42
It connects the legend to a real physical place.
伝説と実在の場所が結びつきますね。
07:46
Blending fact and fiction.
事実と虚構を融合させて。
07:47
The tangible and the intangible.
目に見えるものと目に見えないもの。
07:49
It makes it all the more real in a way.
それはある意味、すべてをよりリアルにします。
07:51
And that's what's so captivating about
this aspect of the Ibuki Yasaburō legend.
それが伊吹弥三郎伝説の魅力的なところです。
07:56
It makes you wonder if.
それはあなたに疑問を抱かせます。
07:58
For the people who lived in the shadow of Mt. Ibuki-yama
伊吹山のふもとに住んでいた人々にとって、
08:01
The line between myth and reality was
a lot blurrier than it is for us today.
神話と現実の境界線は、今の私たちが思っているよりも
ずっと曖昧だったのではないでしょうか。
▼ 民話が内包する謎の意義
08:05
Imagine that living with that sense of wonder.
そのような驚きを感じながら生きることを想像してみてください。
08:08
That primal fear and fascination with the unknown.
未知のものに対する、あの原始的な恐怖と魅力です。
08:11
It's part of what makes folklore so enduring, wouldn't you say?
それは、これほど長い間
民話が語り継がれてきた理由の1つではないでしょうか?
08:14
Absolutely.
まったくその通りです。
08:15
It allows us to tap into that.
民話に触れることで、未知を感じることができます。
08:16
That sense of something bigger than ourselves.
自分たちよりも大きな何かがあるという感覚です。
08:19
A reminder that the world is full of mysteries.
世界は謎に満ちているということを思い出させてくれます。
08:21
And sometimes the most compelling stories are
the ones that embrace those mysteries.
そして時に、もっとも魅力的な物語は、そうした謎を抱えた物語なのです。
08:25
Instead of trying to explain them all away.
それらをすべて説明しようとするのではなく。
▼ 伊吹弥三郎が内包する矛盾と魅力
08:27
Ready for the final stretch of our Ibuki Yasaburō deep dive.
伊吹弥三郎についての深掘りも、いよいよ最終段階です。
08:31
I know I am.
私は準備万端です。
08:31
We've covered so much ground already.
ここまで、いろいろなお話をしてきました。
08:33
From historical bandit to Water God Dragon Oni,
to mountain shaping giant, to lover.
歴史上の盗賊から、ウォーター・ゴッド・ドラゴン・オニ(水竜鬼)、
山をつくる巨人、そして恋人まで。
08:41
Talk about a resume.
まとめに入りましょう。
08:42
It seems like every time we turn around,
there's another layer to this guy.
視点を変えるたびに、伊吹弥三郎の新たな一面があらわれてきます。
08:45
And yet somehow it all works.
それでも、どういうわけか、その人物像に矛盾は感じません。
08:47
That's what gets me.
それが私を惹きつけます。
08:48
Despite all these contradictions.
たくさんの矛盾を抱えているにもかかわらず。
08:50
There's something that just clicks about his story.
伊吹弥三郎の物語には、心に響くなにかがあります。
08:53
Ibuki Yasaburō's story has resonated for centuries.
伊吹弥三郎の物語は、何世紀にもわたって共感を呼んできました。
08:55
Centuries?
何世紀も?
08:56
Why do you think that is?
なぜだと思いますか?
08:57
What makes him so captivating after all this time?
そんなに長い間、伊吹弥三郎が
人々を惹きつけてやまない理由は何なのでしょうか?
09:00
It's got to be that blend of the familiar and the extraordinary.
それは、馴染み深いものと並外れたものの融合に違いありません。
09:03
Right.
たしかに。
09:03
Like on one hand we recognize those human desires.
一方で、私たちは人間の欲求を知っています。
09:06
For love.
愛を求めて。
09:07
For freedom.
自由を求めて。
09:08
For agency.
尊厳のために。
09:09
In a world where it's sometimes hard to come by.
それが手に入りにくい世の中で。
09:11
But then he's also this embodiment of these forces that are just well.
しかし、彼はまた、これらの力の具現化でもあり、それはまさに、
09:14
Bigger than all of us.
人間よりも大きい存在です。
09:15
The raw power of nature
自然の生の力、
09:17
The mystery of the spiritual realm.
精神世界の神秘です。
09:19
Exactly.
たしかに。
09:19
It's awe-inspiring.
畏敬の念を感じます。
▼ 日本人の自然観と、自然神たる伊吹弥三郎の両義性
09:21
When I read Kurata's description of him.
倉田さんの伊吹弥三郎についての記述を読んだとき、
09:23
That whole Water God Dragon Oni thing,
あのウォーター・ゴッド・ドラゴン・オニ(水竜鬼)の話全体が、
09:26
A mouthful I know.
舌を噛みそう。
09:28
It made me think about the Japanese relationship with nature.
日本人の自然との関係について考えさせられました。
09:31
Oh how so?
どのようにですか?
09:32
There's that deep reverence for its beauty.
自然の美しさに対する深い畏敬の念があります。
09:35
For its life giving power.
生命を与える自然の力に対する畏敬の念が。
09:36
Absolutely.
まったくその通りです。
09:37
But at the same time there's that
healthy respect for its potential for destruction.
しかし同時に、自然がもつ破壊的な力に対する健全な敬意もあります。
09:42
A force to be reckoned with for sure.
たしかに侮れない力です。
09:44
And it feels like Ibuki Yasaburō embodies that duality perfectly.
そして、伊吹弥三郎はその両義性を完璧に体現しているように感じます。
09:48
He does doesn't he?
たしかにそうですね。
09:49
He's both benevolent and fearsome.
彼は慈悲深くもあり、恐ろしくもあります。
09:51
It's just like nature itself.
まさに自然そのものですね。
09:52
It's a good reminder that
those black and white distinctions we often make
私たちがよくやる白黒はっきりさせようとすることは、
09:56
Good versus evil, that sort of thing?
善か悪か、といったものですね。
09:58
Yeah they don't always apply.
ええ、それが常に当てはまるわけではありません。
09:59
Especially not when it comes to folklore.
民話の場合は、とくにそうですね。
10:01
Or to nature for that matter.
また、自然もそうです。
10:03
It's about that balance.
バランスに関するものですね。
10:04
That interplay between those forces.
複数の力の間の相互作用。
10:06
Ibuki Yasaburō reminds us of that.
伊吹弥三郎は、それを思い出させてくれます。
10:08
That the rain that nourishes the land can also flood it.
大地を潤す雨が、洪水を引き起こすこともあります。
10:11
That the mountain that offers protection can also isolate.
保護を与えてくれる山が、隔絶を生じさせることもあります。
10:14
He embodies those contradictions.
伊吹弥三郎はそれらの矛盾を体現しています。
10:17
Yeah that's what makes the stories about him so... captivating.
ええ、それが伊吹弥三郎の物語をとても魅力的にしています。
10:20
So open to interpretation.
解釈の余地が大きく開かれています。
10:21
Is he a protector?
伊吹弥三郎は守護者なのでしょうか?
10:23
An agent of chaos?
混沌の使者なのでしょうか?
10:25
Or somewhere in between?
それとも、その中間なのでしょうか?
10:26
It really depends on how you look at it doesn't it?
それは、どの視点から見るかによって異なります。
10:28
It's up to you to decide.
決めるのはあなた次第です。
10:29
I think that's the beauty of folklore.
それが民話の美しさだと思います。
10:31
What do you mean?
どういう意味ですか?
10:31
It gives you that space to come to your own conclusions.
民話は、あなた自身の結論に達するための余地を与えてくれます。
10:34
It's not about being told what to think.
なにを考えるべきかを指示されるわけではありません。
10:36
Exactly.
その通りです。
10:37
These stories
これらの物語は、
10:38
They become vessels for our own anxieties, our own hopes.
私たち自身の不安の器、希望の器となります。
10:42
Even our own sense of what's right and wrong.
善悪に対する私たち自身の感覚の器にもなります。
10:44
It's all there in the telling and retelling.
それはすべて、語り継がれるもののなかにあります。
▼ 疑問をもつことと、かんたんに説明できない物語のたいせつさ
10:46
So as we wrap up our deep dive here
さて、今回の深掘りを締めくくるにあたって、
10:49
Where do we even begin to summarize a figure like Ibuki Yasaburō?
伊吹弥三郎のような人物像を、どのようにまとめればいいのでしょうか?
10:54
I don't think we can and maybe that's okay.
私たちにはできないと思いますし、それでいいのかもしれません。
10:56
Maybe the point isn't to find all the answers.
重要なのは、すべての答えを見つけることではないのかもしれません。
10:58
Maybe it's about learning to appreciate the questions.
重要なのは、疑問を持つことのたいせつさを知ることなのかもしれません。
11:01
And to sit with those lingering mysteries.
もし答えが見つからなくても、疑問を持ち続けましょう。
11:03
So let ourselves be captivated by the unknown.
未知のものに魅了されてみましょう。
11:06
Because sometimes it's those stories that defy easy explanation
that have the most to teach us.
なぜなら、時として、かんたんに説明できない物語こそが、
もっとも多くのことを教えてくれるからです。
▼ アウトロ・オーバードライブ a.k.a. エンドロール
11:25