ご機嫌な1日のスタート
「今日も1日ご機嫌な日を過ごすぞ。」
毎日私が心がけていること。
1日の最初に
「今日は1日ご機嫌で過ごすぞ」
と決めて1日を始めている。
だから今日もニコニコ笑って
ご機嫌な1日にしよう。
そういう1日にするんだと思って
今日もスタートした。
最近は気温が高くなっているので
愛犬のソラの散歩は
早い時間にする必要がある。
家族を見送った後、
家事をなるべく早く済ませて
ソラの散歩に出かける。
天気は快晴。
全ては順調。
ご機嫌な一日を始めるには
申し分ないスタートだった。
が、玄関を出た時に
何かが目の前に映った。
家の前に何かが停まっている。
黒い自転車だ。
黒い自転車が我が家の前に停まっている。
その黒くて古い自転車は
前かごにどっさりと荷物を積んでいた。
「 他の家の前には停まっていないのに、
我が家の前だけに停まっている。
これは誰の自転車だろう。」
周囲を見渡すと
除草作業をしている人達がたくさんいた。
公道の脇の植木の雑草を
取ったり刈ったり整えたりしてくれている。
おそらくその人たちの一人が
私の家の前に自転車を無断で駐輪しているのだ。
これは 注意するべきではない。
せっかく街をきれいにしてくれている人達なんだから。
こういうことに腹を立ててはいけないんだ。
と自分に言い聞かせた。
しかし何だかモヤモヤしていて
だんだんそのモヤモヤは
”イライラ”へと変わっているように感じた。
気づいたら私は
確実にイライラしていた。
「何で、よりによって
私の家の前に駐輪するんだ。
ちゃんとした自転車置き場に
駐輪すればいいのに。
そういえば 前にもこんなことがあった・・・。」
などと
私は過去のイライラすることも
一つ二つと思い出してきて
余計にイライラしてしまった。
そうこう考えながらソラの散歩をしていると、
今日は中学生くらいの子供たちが
私服でたくさん遊びに出ていた。
どうやら 開校記念日か何かでお休みらしい。
その私服の中学生の子供たちは
横一列で自転車で走りながら
おしゃべりをしていて散歩している私の前を阻んでいた。
私はそれにもイライラしてきた。
なんだかあの黒い自転車1台だけで
私のご機嫌な 1日は
大失敗でスタートしたんじゃないかと、
悲しい気持ちになってきた。
そうこうしてるうちに
ソラが変な草を食べようとして
「それは食べちゃいけないよ」
と強い口調で注意した。
「あぁ・・・こんなに強い口調で
別に言わなくてもいいのにな」と、
その余裕なく怒ってる自分にもイライラしてしまった。
こんなんじゃもうご機嫌な1日は
今日は諦めた方がいいな。
もう最悪だ。
あの黒い自転車のせいで私の1日のスタートは
台無しになってしまった気がする。
散歩から帰ってきて、
またあの自転車が家の前にあったらどうしよう。
私は今以上にイライラしてしまうのだろうか。
ご機嫌でいたいのにな・・・。
そんなことを考えながら散歩していると、
小さい女の子がお母さんに抱っこされながら
幼稚園のバスを待っていた。
「あ!わんわん!可愛い!」
そう言ってくれて
飛び切りの笑顔をソラに向けてくれた。
私は嬉しくなって
近寄りはしないが
抱っこされている女の子の目線まで
ソラを抱っこして、
「おはようございます。」
と挨拶をした。
女の子はニコッと笑ってくれた。
可愛かった。
なんだか私は、
その笑顔を見れただけで
今日1日は
とてもいい日なんじゃないかと思い始めた。
あんなにさっきまで
黒い自転車1台でイライラしていたのに、
今日はとびっきりいい日な気がしてきた。
そうこうしてるうちに家に帰って来た。
変わらず黒い自転車は
私の家の前に停まっていたんだけれども、
なんで自転車が家の前に停まっているのに
あんなに腹を立てていたのか、
私は思い出せなくなっていた。
もう自転車はどうでもよくなっていた。
私はあの小さな女の子の笑顔に
一日のスタートをご機嫌にしてもらった 。
私もまた、ニコニコ笑顔でご機嫌で、
誰かの不機嫌をご機嫌にできたら良いなと思った。
あの女の子が私にしてくれたように。