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思考は急に止まれない

頭の中にも、慣性の法則は成り立つのだと思う。
猛スピードで動く車が急には止まれない、あの力。


1歳3ヶ月の息子を連れて久々に、市の施設にでかけた。いろんなおもちゃと絵本があって、赤ちゃんを遊ばせられるこじんまりしたお部屋。

ここ2ヶ月で人見知りが再燃している息子は、案の定たくさん泣いた。だが、1時間ほどしてみんなが片付けに入るころには、少し本領を発揮してボールを追いかけていた。

わたしたちの他にもう1組来ていた。息子と体格は変わらないが、たくさん走ったりおしゃべりしたりする2歳の男の子と、臨月の近そうなお母さん。

大人たちは泣きじゃくる息子に適度な距離をとって接してくれていたが、2歳の男の子は無邪気に至近距離で手を振ったり、おもちゃを渡しにきてくれたりした。そのたびに息子はびっくりして泣いていたのだが。

気にして話しかけてくれるスタッフさんに答えて、いろいろと話をした。最近は水が好きすぎてお風呂に入れるときに苦労するとか、身体が大きいから2歳に間違えられるとか。


そんな賑やかな時間を過ごしたのち、家に帰ってからのこと。

いつもどおり、特別なことはなにも起きない静かな時間。その時間の流れの遅さが、急にじれったい。なにかをしたい、なにかで時間を埋めたいという衝動が湧き上がる。お腹が減っているわけでもないのに、アイスでも食べようかと思ってしまう。

会社帰りの電車で感じる感覚と、同じだと思った。頭の中がその日に受けたあれこれの刺激で大忙しで、そのままの勢いで時間を埋めたくなる衝動に突き動かされる感じ。スマホをいじって、それほど興味のあるわけでもない情報をみているうちに、時間ばかりが過ぎてしまう感じ。

車だけでなく、頭も急には止まれないのだろう。

たくさんの刺激に忙しく働いた頭は、それが終わったあともそのまま走り抜けていこうとする。本当は休息が必要なのに。

切り替える方法を検索しようとして、もう知っているよな、と立ち止まる。焦る気持ちを抑えて、両方の鼻を均等に使うつもりで息をはききる。そのまま、胸郭を膨らませるように大きく息を吸う。

自分で調節できない自律神経を唯一コントロールできるのが、呼吸だと聞いた。たったそれだけ、とつまらなく感じて検索画面を開きたくなる衝動を押しとどめ、深い呼吸をつづける。やがて、ブレーキが少しずつ効いてきた。

頭のエンジンをふかしっぱなしにしがちなのは、ずっと前からの癖。消耗しきって動けなくなる前に、こまめにブレーキを踏むようにしたい。



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深水 ゆきの
最後まで読んでくださってありがとうございます! 自分を、子どもを、関わってくださる方を、大切にする在り方とそのための試行錯誤をひとつひとつ言葉にしていきます。