聞き上手はモテる
もともとはというか今もかなりのおしゃべりガール。
「あんたのマシンガントークは健在ね」
なんて言われてやっと、自分ばかりしゃべっていたことに気づく始末。自分が体験した面白かったことを共有して笑わせたい、楽しませたいという、単に人が喜んでいる顔を見たい、わたしの話で涙がでるほど笑って喜ぶ姿をみるのがうれしいという気持ちなだけなのだが、時としてそれは自分だけが楽しいときもあることを知る。
特にライターをしていると、仕事をしているときは当たり前だが聞き役に徹しなければならない。自分が質問したことで相手に新たな気づきがあったり、自分自身もタイトルにもなりうる名言が引き出せたときは恍惚とする。
だからか、ライター仲間は聞き上手がとても多い。じっくり聞いて、適切なところでうまい質問をする。さすがだなと思う。ライターのすごいところは聞くだけでなく話し上手も多い。言葉のチョイスも見事な先輩がいて、すごいな~と感心することしかり。
聞き上手はモテるとはよくいうが、ことわたしの周りにいたっては聞き上手で話し上手でも、ものすごいモテている人がいない。なぜだろう。
「そりゃ、やっぱり見た目も兼ね備えてこその聞き上手でしょ」
とは聞き上手であり話し上手なんだけどもてないライター仲間のひとり。
この年になると愛だ恋だののほうはモテたいとは思わないが、人に話をしてもらえる人間にはなりたいと思う。だが、たった一人、聞き上手には決してなれない相手がいる。
お母さんだ。
けんかはしつつも、ありがたいことに夫婦二人でえっちらおっちら生きてくれているので、まだ安心してほっておいているのだが、数か月に一度くらい電話で話をしたがる。
それくらいならなんぼでも付き合いますわ~と言いたいところだが、わたしを生んだ母親なだけあり、マシンガントークはわたしの上をいく。
近所のおばちゃんならまだしも最近行き始めた無料のお風呂で出会ったおばちゃんの話を唐突にはじめ、しかもなぜか知っているていで、佐藤さんがね~なんて言ってくる。おいおいそれは誰だよ?なんて突っ込む前に、次の話題にいき、そのうち、「今、何しゃべってたっけ?」という。
話があっちこっちに飛び、要領もえず、なんだったらオチもない・・・
そんなお母さんのマシンガントークに毎日付き合わされているお父さんは、うまい具合に耳が遠くなってきて、「聞こえなくなってかえって都合がいい」なんていっている。
するとお母さんはそんな耳が遠く、ほとんど真面目に話を聞いてないお父さんにイライラして、「ほんとあの人といると疲れる」と最後はこれで締めくくられる。
「熟年離婚すればいいじゃない。止めませんよ」
というと、「言いたいだけ!」と吐き捨てて、電話をきる。
お母さんの長電話に付き合ったあとはものすごい体力を消耗するが、元気なうちが華なんだろうなと思い、また年末に付き合うことになる。