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芸能人になりたかった理由

昨日NHKBSでスタートした新番組「世界熱中ひとり旅」。

別の番組を録画しようとしたとき番組表をみて知った。
「世界熱中ひとり旅」・・・。ひとり旅というフレーズを見聞きするとどうしてもアンテナが立ってしまう。

20代のころバックパックひとつで1人ふらふらと気ままに旅をしていたことを思い出すからだ。番組の情報など見ずに録画予約をぽちっと。「ひとり旅」はわたしにとってのパワーワードなのだ。

旅番組は真剣に見る番組ではないので朝ごはん&メイクアップタイムにながら見をしてみた。ひげぼうぼうの滝藤賢一が車に揺られている。南アフリカらしい風景が車窓から見える。すると南アフリカの広大な大地をバックに滝藤賢一がしれっという。

「あのう滝藤が珍奇植物を探す旅なんて誰がみるんでしょう?それだけが心配です」

”熱中”とはそういう意味だったか。毎回有名芸能人がナビゲーターをつとめ、その芸能人が”熱中”しているもの、その熱中しているものが多くある国にいく・・・ミステリーハンター?!に思い当たった。

ミステリーハンター、そう、まだBS4Kだの、YouTubeだの、ドローンなどがない時代。旅に異常にいざなってくれた番組だ。この番組のせいで?おかげで、世界にはなんて面白い、楽しい、不思議なことがあふれているんだろう!と目を輝かせてみていた。

いつしか、わたしの夢は「ミステリーハンターになること」になった。高校時代の進路相談で真剣に先生に聞いたほどだ。

「ミステリーハンターになるにはどこの大学にいけばいいんでしょう?」

先生も親も呆然としたのは言うまでもない。

ミステリーハンターはどこかに就職したらなれると思っていたのだが、そうではないらしい。

「ミステリーハンターになりたいっていうのはいいとして、ハンターになったら自分が行きたい国にいけるわけじゃないし、人が作った台本どおりにしなくちゃいけないしで、あんたみたいに自分の興味が赴く方にほいほい行っちゃう子はなれたとしてもクビになっちゃうと思うの、お母さん」

さすが、わたしを産み落としたお母さん。よくわかっていらっしゃる。

ここでなぜミステリーハンターになりたいかを考えてみた。結局は、タダで海外旅行に行きたいだけということに思い当たった。

であれば、旅行会社に就職すればいいのでは?と有名どころに応募したが、ときは就職氷河期。有名大学卒業でもないものにとってはハードルが高かったらしく全滅。バイトでもして食いつなぐかなと思っていたが学費を出してくれた親から猛反対をくらった。

「頼むから、石の上にも3年。3年くらいは正社員で働きなさい」

ありがたいことに1社、正社員で採用が決まっていたので、仕方なく石の上に3年いて、3年たってすぐにやめた。そこからどうしたか?ちょうど時を同じくして会社をやめた友人が旅行会社の添乗員として働ける派遣に登録したという。

わたしも!わたしも!と乗り込んでいったら、あっという間に採用。そりゃそうだ。入る人も多ければ辞める人も多い業界。来るもの拒まず、去る者追わずで誰でも入れたのだ。確かにタダで旅行にいけた。けれど、土日の日帰りバスツアーなんかは渋滞にはまると夜中に到着。いつも同じルートにいかせられ、タダでももう行きたくない食べたくない・・・となって疲弊していった。

そんなとき、いつものごとく世界ふしぎ発見をみていたとある日。

なんとエンディングロールに「ミステリーハンター募集」のお知らせが。録画をしていなかったので見間違えではないかと思い、次の日友人たちに聞いたら、そういえばあったなと言う答え。ネットもなく1週間後の世界ふしぎ発見を首をなが~くして待ち、録画もスタンバイ。すると、応募要項が写されていた。

ミステリーハンターの道が開けた!これだ!これだ!

早速、履歴書を送るべく、応募動機を考える。こんなに頭を使ったことがないんじゃないか、こんなにひとつのことに向き合ったことはないんじゃないか。就職活動中にこれほど企業研究をして応募動機をかけば合格したんじゃないかと思うほど真剣に考え、悩みぬき、書き込んだ。

写真スタジオにいき、いくらでも払うから超絶かわいくとってくれ!と意味不明なお願いをして、これわたし?と思うかの如くの写真をゲットし、祈りながらポストに投函。

超ポジティブ思考人間なので、次の面接の準備に余念がなかった。どんな服で行こうか。ミステリーハンター風に冒険家っぽいのがいいか、それともわたし知見ありまっせ的なできる女子風なのがいいか。面接でこれを聞かれたら、こう、これを聞かれたら、こうと1人問答を繰り返し、毎日ポストをチェックし、面接の日を待ちわびた。

待っていた封筒がいよいよ届いた。しかし、ぺらっぺらのうっすい封筒。それでもまだポジティブ。これで合格じゃない。次は面接だ!とハサミで封をあける。合格する自信だけはあったもののいざその答えがこの中にあると思うとドキドキが止まらない。そ~っと紙を持ち上げ、三角折された紙を丁寧に開いていく。

一番最初に見えたのは「不合格」

な、なぜだ!あんなに一所懸命に書いたのに、なぜた!!!合格することしか考えず、添乗員の仕事をさっさとやめてしまった今、何をしたらいいのだ。途方に暮れているときに別の用事で電話をかけてきた友達に、今起こったことをぶちまけ、興奮がさめやまないことを知ると、まず飲むべといって誘い出してくれた。

居酒屋に到着して、早速思いのたけをぶつけようと思ったが友達が先に口を切った。

「あのさあ、ミステリーハンターなんて本気で慣れると思っていたの?あんなん、できレースに決まってるじゃん。だって、冷静にみてみなよ。ミステリーハンターの女性たちを。超絶美人、超絶かわいいばかりが揃っているわけではないけれども、みんなスタイルよかったり、知的な感じが満ち溢れていたりして、どう見ても一般人じゃないでしょ。すなわちだ!どっかの芸能プロダクションに所属している芸能人、もしくはタマゴ。で、その事務所が押している、まだブレイクしていない子がなる、それがミステリーハンターだ」

できレース・・・このときはじめて知った言葉だ。そんなできてるレースをなぜするんだよ。いたいけな一般人に夢をもたせるなよ。小学校の遠足のあと、壁に貼られた写真に↓ブスと書かれた、わたくし(←異常に根に持っている)。親友に、あんたって手足短いよねといわれた、わたくし。そういうこともあって、自分の容姿をわかっていたので芸能人になる、アイドルになる!なんて思ったこともなく、なりたいとも思ったことがなかったが、このときばかりは、芸能人になりたかった・・・と本気で思った。

ミステリーハンターになれなかったおかげで、ワーキングホリデーなんていう素晴らしい制度を知り、1年間異国に住んで、仕事をし、そのときであった人から、沢木耕太郎氏の深夜特急の本をもらい、タダではなかったが異常に安い値段で世界一人旅もできて、ワーホリ時代にお世話になった人から、旅行ライターのお仕事をもらい、タダで世界各地を取材させてもらい、結果オーライ。

今はタダで旅行がしたいどころか、よくしてくれた人たち、おいしいレストランにはお金をしっかり払いたいと思える大人になれた。

タダほど高いものはないというが、タダはいろいろハードルが高いことを知るきっかけになったのがミステリーハンターだったのだ。それにしてもこのご時世、有名人に旅させる番組をスタートさせるとは・・・

ちなみに滝藤さんが懸念していた珍奇植物を探す旅は、ディープすぎて、ご懸念どおり途中早送り。次回は石田ゆり子さんの「イギリス 犬と猫を抱きしめて」。

旅好きというより石田ゆりこさんファン、犬猫好きがみて面白い番組じゃなかろうか。ということで見ないこと確定。

滝藤賢一、石田ゆり子、綾瀬はるか…人気の俳優たちが、世界中をひとり旅。愛してやまない熱中テーマを探求します。歴史や文化、自然など、その国のディープな魅力が満載。とっておきの世界紀行です!

番組HPより

番組スタッフがいるし、コーディネートしてくれて、車も運転してくれるからひとり旅ではないよね・・・と、本気ひとり旅経験者は思ってしまう。人気俳優ではなく、「テーマ」が大事なのではないだろうか。たとえば、異世界ホテル、あれは面白かったよ!NHKさん!

一度わたしをナビゲーターとして採用してくれるところはないだろうか。ギャラ、タダですよ!


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ゆきんこ
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