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たった数日間は旅行じゃないと思っていた

厚生労働省は25日、2021年に大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に仕事を辞めた人の割合が前の年から2.6ポイント高い34.9%だったと発表した。05年卒以来、16年ぶりの高水準だった。新型コロナウイルス禍を経て、転職をする人の割合が増えたことが影響した。

日経ニュース

終身雇用はなくなりつつあり、転職率が高くなっているというニュース。解説を聞いていると、転職する理由は 「収入UPのため」だという。

そうはうまくいくかいなと思っていたが、なんと転職した人の8割は収入UPにつながったという。信じられない。というのも、氷河期世代真っ只中で就職し、転職を繰り返したわたしは転職するたびに収入が下がっていった。

最初の会社は奇跡的に正社員雇用だったが、その後は派遣だのフリーランスだので下がり続けた。一時、時給だけで選んだ会社は収入があがったがそれは例外。

フリーランスの現在、作業内容は変わらないどころか手間が増えている気がするのに毎年のように価格交渉をされている。

需要もあるが、供給過多のライター業。なかなかあがらないのは致し方ない。人手不足の業界に鞍替えしない限り収入アップは見込めないだろう。

そういえばで思い出したのが、転職を繰り返した20代。大体2~3年でやめていたのだが、大体、辞めますというと、呼び出しをくらう。

「なんで辞めたいの?何か問題あった?」
「なにもないですよ。楽しく仕事してましたし」
「じゃあなぜやめるの?もうちょっといてよ」

ありがたい申し出であるし、時給も少しならあげるという。それを真に受けて回答を待っていたらたった10円だったのでさっさとやめた。

辞めたい理由は収入アップではなかったのだ。

「旅行いくのでやめるんです」
「じゃあ、有給使って休めばいいでしょ?」

有給が足りなくなるからやめるといっているのだ。

「最低でも1か月行きたいんですよ。有給足りないし、1か月も休むなら別の派遣雇ったほうがいいんでは?」

この一言で、仕方ないとあきらめるのだ。

1年以上ふらふらバックパッカーを経験してしまうと、せっかく飛行機に乗って海外にいくのに週末弾丸や3~4日間の旅行なんて旅行じゃないと思っていた。

当時は地球の歩き方を携えて、行き当たりばったりの旅をしていた。空港について、とりあえず安宿があるあたりに向かってから宿を探した。

「今日、あいてますか?いくらですか?部屋みせてもらってもいいですか?」

すぐに見つかることもあれば、なかなかピンとこないときもある。態度が悪いスタッフもいれば、ものすごいフレンドリーな人もいる。その交渉ひとつひとつが新鮮で楽しかった。たまにうっとおしくもなったが今となってはすべていい思い出。

これも長旅ができるからなせる業なのだ。ネットで写真や口コミをみて、比較検討してホテルを予め予約したほうが今は安心だし、楽。だが、未知の町で、細い路地を歩き回り、ようやっと見つけたホテルがとんでもないくらい素敵で安くて快適だったときのワクワク感と充実感、そして誰も知らない秘密の花園を見つけてしまった優越感を味わってしまったらなかなか安心な旅を選ぶ気にはなれなかった。

いまでは仕事が忙しくなり、介護もあったりで長旅にでれず、数日間の旅でも旅ができるありがたみがわかるようになったが、たった数日間は旅行じゃないと思っていたあの頃が今となってはなんとも贅沢な時間の過ごし方だったのだと思う。

世の中が便利になりすぎてもはや不便な旅が難しくなってきた。1週間日本を離れても浦島太郎状態にもならなくなった。収入ダウンのまま無理やり仕事をするのならかっこよくスパっと、「そんな値段で私は雇えませんよ!」と言い捨て、行き当たりばったりの旅に出たらかっこいいんじゃないか!とできもしないのに、啖呵を切るかっこいい自分を妄想したのだった。

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