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あんた好きだったでしょう
コロナ禍のため実家に帰省できず、前回の帰省から1年半も経過してしまった。
高齢の祖母もいるため、年末年始の帰省も控えるつもりだ。
1か月に一度程度はライン電話で顔を合わせて話をするも、やはり恋しいのはご当地名物とお母さんの手料理。
GWの帰省をあきらめた時は
「わらびたたき食べたいな~」
とつぶやき、1週間後には母自家製のわらびたたきが届く。
お盆の帰省をあきらめた時は
「新鮮なモロヘイヤとツルムラサキとオクラをたっぷり盛り付けたそうめんが食べたかったな~」
とつぶやけば、1週間後に段ボール箱にぎゅうぎゅうに詰められた野菜が届く。
9月の連休も気がゆるんじゃいけないと気を引き締めたときは
「男鹿のトロトロわかめとギバサ食べたいな~」
とつぶやけば、男鹿から直送した海藻類がわんさか届く。
新米の季節になると
「やっぱり新米のきりたんぽだよね!」
とつぶやけば、出来立てほやほやのきりたんぽのほか、セリなどの野菜まで届く。
こんなことを繰り返した結果、今年は月に2度のハイペースで秋田から段ボールが届き、在宅勤務で時間が有り余っている私は加工に勤しんだ。
「今年はあんたの帰省の旅費よりもお金使っている気がするわ」
と若干の嫌味を言われたものの、私は本当の母の気持ちを知っている。
荷物が届くと必ず
「ありがとう」
電話をするのが定番なのだが、母が口癖のように言うのが
「あんた好きだったでしょう」
お母さんは私が小さいときから好きだったものを知っている。
だから私が要望したもの以外もちゃんと詰めてくれる。
その中の一つが、今、noteを書きながらむしゃむしゃ食べている「しそ巻き」だ。
小さいときから甘じょっぱくてサクサクした食感の「しそ巻き」は私のおやつだった。
「あの子、しそ巻きが好きだったから」
と言いながら、作っている様子が目に浮かぶ。
口は悪いけど、いつも私のことを考えてくれて、私の好きだったものを覚えてくれているお母さん。
自分のことよりも、家族の好きなもの、家族が喜ぶことを先回りしてやってくれるお母さん。
なのに私はお母さんが好きなものをあまり知らない。
ただ、私がしそ巻きをほうばっていたとき
お母さんも一緒にニコニコしながら食べていた記憶がおぼろげながらある。
コロナが終息して大手を振って秋田に帰省できたら、いつも作ってもらってばかりいた「しそ巻き」の作り方を伝授してもらおう。
そして、お母さんが年老いて、しそ巻きが作れなくなったら
「お母さん、しそ巻き好きだったでしょう」
といって作ってあげたい。
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