母の後悔 (34)
帰宅するともうすぐ四時になるところだった。リビングから庭を見ると、(髭と八)の二匹の猫が私の帰りを待ちわびて、両手両足をお行儀よく揃えて、ご飯を下さいと催促している。すぐにキャットフードを用意する。
そして美味しそうに食べている猫達を見ると心が和んでくる。この子達をいつ頃家に入れようかと考えるが、その反面二匹の猫を家に入れる自信がない。
ある日の夕方いつもの時間に二匹の猫は帰ってこなかった。もう夕飯の時間は過ぎているというのに来ない。どうしたのか心配はしても、猫たちの行動範囲を把握していないので、とりあえず待つしかないのだ。夜になって猫のハウスを覗いてみた。すると八の方の猫は小屋に入って寝ている。気温はどんどん下がり、冷たい風にあおられた雨が時おり強く降っている。明日にはきっと帰って小屋で寝ていると信じて、私は寝ることにした。
翌日の朝いつもより早く目が覚めたので、朝ご飯の用意をして小屋を覗いてみた。八だけが寝ていた。 黒白の野良猫はご飯を食べに来る時には、まるで泥棒のように辺りを伺いながら一歩、一歩と警戒しながらやって来る。この野良猫は、人間を酷く怖がっていて、ご飯を食べに来て家の周りをいつもうろうろしているのに、私が少しでも近づくと、すぐに逃げてしまう。
そのくせうちの髭ちゃんと八猫がいると、その側に来る。それをひどく嫌がっているうちの猫達をしり目に、ごはんを狙って近くに来ては「にゃー」と鳴く。その鳴き声はかなりかわいい声なのだが、見た目は、うちの猫の1.5倍ほどの大きさなので、うちの猫達にしてみたらかなり圧力を感じるのだろう。だから黒白猫がそばに来ると嫌がってスーッと何処かに消えてしまう。
しかし黒白猫は、やっと安心して御飯をもらえる家を見つけたので、この地を死守するつもりだろう。おめおめと他所になんか行くものかという覚悟がうかがえるのだ。黒白猫のおかげでストレスがかかってしまった猫達は、私が朝起きて猫の小屋がある方の戸を開けて御飯を出す前に、どこかに行ってしまっていることが増えた。そして夕方までここに来ない。きっと黒白猫がいるから嫌なのだ。
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