シニア小説家志望の雪ん子おばさん

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最近の記事

毒親からの解放ストーリー (49)

 私の思いもかけない反撃に驚いたヒロシだったが、こんなことで諦めて引き下がるような男ではないはずだ。きっと今日のお返しの為に、誰かを連れて私を襲いに来るだろ。  そこで室内に防犯カメラを設置した。主な設置場所は、母の寝室とリビングルームなどだ。それから玄関口にも付けておいた。これをつけておけば、万が一私が先に暴力を受けた場合には、反撃として暴力をふるったとしても正当防衛が適用されるだろう。そんな暴力沙汰など起きないに越したことはないが、ヒロシのお金に関する執着は相当なものな

    • 毒親からの解放ストーリー (48)

       そんな怠惰な生活を送っているヒロシが突然帰宅した。ヒロシは母と同居しているが、彼はギャンブル優先の生活をしているので、負けが込んでいたり、また珍しく勝っていたりすると、なかなかその場から抜け出して家に戻ることは出来ないのだ。彼の気弱で、人が好い性格を知っているギャンブル仲間達は彼のそういった性格を見抜いているので、軍資金がなくなるまで家に帰ることを許さないのだ。 そのため、ヒロシが帰ってくるときはいつも文無しになっていて、おまけに疲れ切っているので、すこぶる機嫌が悪い。

      • 毒親からの解放ストーリー (47)

         この事態はすぐに対処するべきだと思い、横浜市の地区の区役所に出向いて介護保険の申請をした。と同時に区役所の相談窓口に行って、事の次第を説明して行政サイドからのアドバイスを受けることにした。 つまり父の遺産で得た母の財産を独り占めするために、母のお金を使って家を建て、そこへ引っ越した後に体調を崩した母は、家の中にこもるようになってしまった。自分で身の回りのことが出来なくなるにつれ、認知症状も出始めたのだ。  その様な状態になれば、一般的には、同居している家族が市役所や区役所

        • 毒親からの解放ストーリー (46)

           電気をつけて部屋を明るくしてみるとベッドに横たわっている母の姿があった。その姿は生きているようだけれど、ベッドの上にも周りにもゴミが積み上げられていて、その中で一人静かに呼吸をしているという状態だ。 「ヒロシはどこにいるの、どういうことなの」  と聞いてみたけど、母はただ黙って天井をみつめているばかりだった。その目は部屋が急に明るくなったので、まぶしそうに目をつぶっていて、その表情からは何の感情も読み取れなかった。  父の相続の裁判が終わって、その後の手続きが終わってか

        毒親からの解放ストーリー (49)

          毒親からの解放ストーリー (45)

           裁判が終わった後に、互いの弁護士を交えて残ったマンションをどうするかを話し合った。弟は母が住んでいるマンションを売って現金にしたいと言って来た。私は賃貸に出している二〇部屋のうちの私の持ち分として四分の一である五部屋と銀行に凍結されている現金も同じく四分の一と父に貸したお金をくれるようにと伝えたが、そんな話は聞いていないと言い張るばかりで一向に話が前に進まなかった。   その為相続に必要なハンコを押す押さないでもめたのだった。それでも互いの弁護士に仲介してもらって私は何と

          毒親からの解放ストーリー (45)

          毒親からの解放ストーリー (44)

           横浜の海が見えるレストランで一緒だった吉田先生から紹介された弁護士の先生に相談をして、母と弟と話し合いの場を持ったが、二人とも怒鳴ったり、私を脅したりして、話にならなかった。仕方がないので、2人には私の弁護士から、相続の為の訴状を送ってもらった。  最近はこの手の裁判が急増していて、裁判に時間がかかるらしい。裁判になった相続案件は、預金も不動産も動かす事は出来なくなる。つまり全くお金が入らないだけでなく、母と弟の弁護士費用と、この裁判に負ければ彼らが裁判費用を支払わなけれ

          毒親からの解放ストーリー (44)

          毒親からの解放ストーリー (43)

           父は、少し気が弱くて、母の尻に敷かれていたけど、私を医学部に行かせてくれた恩人だ。だから私は相続放棄の件を即座に断った。その時の二人の顔は今も忘れられない。  二人は信じられないというように、口を開いて、目を丸くしていが、すぐに気を取り直した様に、眉間にしわを寄せると、鬼の様な形相で、私に食って掛かった。弟は私の襟首を掴みながら、すごんで見せながら、こう言葉を吐き捨てた。 「俺の言うことを聞かなかったら、後で後悔するからな」  母も弟も、自分達が私をちょっと脅せば、いくら

          毒親からの解放ストーリー (43)

          毒親からの解放ストーリー (42)

           弟は私を相続人としての権利を奪う為に、白紙を持ってきた。要するに白紙委任状というやつだ。 「この紙に『私田中ユリは、全ての相続財産を放棄します』と書いてよ。姉さんはお金に困ってないから、俺と母さんを助けると思って書いてくれよ」  弟は始めのうちは下手に出て懇願してきた。  しかし、今母が住んでいる家は、私が夫を亡くした時期に父がマンションに建て替えた家だった。その時に母達には内緒で、私が頭金の一部を出して建て替えたものだった。もちろん父から頭金がないと言われたからだ。

          毒親からの解放ストーリー (42)

          毒親からの解放ストーリー (41)

          「宏はどうしたの?連絡したの?」  母の話では、宏は昔から生活態度が余り良くなくて、いい歳をして今も、小遣いを母にねだっているそうだ。おまけに賭け事が好きで自分の給料だけでは足りず、借金までして、払いきれなくなると、母に頼んで、肩代わりして貰っているようだ。  いくら息子が可愛いからと言っても七十五歳の母親が息子の借金を何度も清算させられていたとは、母も大変だっただろう。でも甘やかして育てた結果でもあり、自業自得だ。      母の過干渉で弟も私みたいに人格を壊されたのだと

          毒親からの解放ストーリー (41)

          毒親からの解放ストーリー (40)

           一度チューブにつながれてしまえば、寝返りを打つことも、ベッドに起き上がることも出来なくなり、半ば強制的に死ぬまでベッドに繋がれてしまうのだ。だからユリは退院の前に、褥瘡予防の為のエアーベッドを搬入し、訪問看護師やヘルパーを手配して退院の準備を整えた。  約一ヶ月ぶりに家に帰ったお義父さんは懐かしそうに家を見渡しながら、喜んでいた。入院中は経管栄養だったが、車椅子で点滴をしながら、ある程度自由に動くことが出来た。しかし口から全く食べることがなかったので、家に帰っても食べよう

          毒親からの解放ストーリー (40)

          毒親からの解放ストーリー (39)

           毎日が慌ただしく過ぎて行った。  夫の七回忌の年にお義母さんを見送った。もしも長男である大志がまだ元気に過ごしていれば、お義母さんは今も健在だっただろう。子供が親よりも早く、天国に行ってしまう事を逆縁と言う。逆縁は親を心身共に弱らせてしまうのだ。  お義父さんは、医師会の会長の任期が終了すると、会の全ての役職を降りて、昔からの患者さんだけを診て、それ以外の患者さんは私に任せるようになり、医院の経営のほとんどから手を引いてしまった。 そして多くの時間をお義母さんと二人で過ご

          毒親からの解放ストーリー (39)

          毒親からの解放ストーリー (38)

           そして一週間後には全てが終わった。 葬式には大学関係、病院関係、義父の医師会関係の参列者が大勢来てくれて、夫とお別れをしてくれた。私はほとんど眠れずにいたが、どうにか葬儀を滞り無く執り行えた。それは、私が取り乱したりすれば、亡き夫に恥をかかしてしまうと思ったからだ。 『夫をきちんと送り出さなければ』との思いだけで葬儀をやり遂げた。夫の両親の憔悴しきった表情を見ていると、尚の事私が頑張ってするべき事をしなければならない。夫は四十という若さで逝ってしまったのだ。  葬儀の後

          毒親からの解放ストーリー (38)

          毒親からの解放ストーリー (37)

           結婚後二人の研修期間が終わり、熱海の実家の近くのマンションに徳島から移って来た。 そして女の子を授かり、その数年後に娘は小学一年生になった。あっという間だった。忙しい毎日だけれど、夫の両親が私達家族に援助を惜しみなく与えてくれていた。でも勝手に私達の家族に入り込んだりもせず、距離をとりながら、優しく見守ってくれている。   私にとっては初めての経験なので、そういう優しい気遣いがとても嬉しかったし新鮮だった。 私の母ときたら、勝手に私の持ち物や部屋を吟味しては、母が気に入ら

          毒親からの解放ストーリー (37)

          毒親からの解放ストーリー (36)

           ユリが医者になったのは驚きだったが、結婚相手の家族全員が医者だなんて驚いたわ。結納の時の相手の母親の態度は何なの? 何様って感じ。でも凄く貫禄があって私じゃとても太刀打ちできそうに無いわ。ちょっと太っていて、ギョロッとしている目で見られると私でも恐いくらいなのに、あの子は恐く無いのかしら? 其れにしても、どうしてあんなに恐そうな母親にユリが気に入られたのか一度聞いてみたいわ。ユリなんか気も効かないし、いつもおどおどしている子なのに。  まあ私の育て方が良かったのね。あの一

          毒親からの解放ストーリー (36)

          毒親からの解放ストーリー (35)

           神奈川県の実家から徳島へ帰ると、早速大志は熱海の実家へ行く日取りを決めた。大志は、ユリと彼女の母みどりとの関係を観察して、早くユリをあの家から助け出してあげたいと思ったからだ。何故だかわからないが、みどりがユリに対する態度は冷淡なだけでなく、悪意を感じたので一刻も早く結婚をして、ユリを自分の家族の一員として迎える必要性感じたのだ。  熱海で、大志の家族の顔合わせでは、父も母も二人の結婚を認め、歓迎した。 結婚後暫くは徳島の病院で二人はそれぞれの診療科で研修をしなくてはなら

          毒親からの解放ストーリー (35)

          毒親からの解放ストーリー (34)

           父とお茶を飲みながら雑談していると、母が入って来た。おもむろに彼の前に座ると、雑談に割り込むようにして、彼の家族について尋ね始めた。 「お父様は何をしているのかしら?」  ここから母から彼への質問は、まるで取り調べのような感じだった。冷や冷やしながら見守っていた私の心配をよそに、彼は母に対して、淡々と、そして冷静に自分の家族について話し始めた。  彼は静岡県熱海市で内科医院を経営している三代目だ。二代目である大志の父親も地元に密着した診療を心掛けており、医師会の会長も務め

          毒親からの解放ストーリー (34)