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大日向小学校とやつづかえりさんを取材して

約6ヶ月間かけて取材と執筆をしてきた元noteの記事が、プレジデントオンラインに掲載され、たくさんの方に読んでいただけた。

この貴重な経験と今の気持ちを、noteに残しておきたい。


「長野に変わった小学校がある」

大日向小を知ったのは、2020年12月のこと。ある仕事のMTGで、「長野におもしろい小学校がある」と話題になったのがきっかけだ。

聞けばそこは、子どもの自主性を大切にする「オルタナティブ教育」を採用していて、通うために移住する人たちまでいるとのことだった。

移住してまで通いたい小学校…!?

強く興味を惹かれて調べると、そこはオルタナティブ教育のひとつ「イエナプラン」を取り入れた、“大日向小学校”だと知った。

このときすでに、移住者発のブログや記事はあったのだが、改めて自分の耳で、実際に移住した方の話を聞きたくなった。

どんな小学校なのか。
なぜ移住してまで通いたいと感じたのか。
実際に通ってみてどうか。

そしてたどり着いたのが、Webメディア「くらしと仕事」の元編集長でYahoo!オーサー(個人)の、やつづかえりさんのnoteだった。

2021年2月、やつづかさんへのインタビュー

やつづかさんは、大日向小に入学を決めてからのことをnoteで発信されていた。オンライン授業のこと、住まいのこと、娘さんが「馬が好き」と素直に言えるようになったこと…。

知りたい気持ちは強くなるばかりで、2021年2月、「ぜひインタビューをさせていただけませんか?」というメッセージを、お問い合わせフォームから送った。

当時私のインタビュー歴は浅く、おそらくそれをご存知だったはずなのに、やつづかさんは快諾してくださった。

驚くことに、このnoteに、プレジデントオンラインの編集長が興味をもってくれたのだ。ただし、再取材と加筆が必要。

この流れで、2021年4月に再びやつづかさんを、6月に大日向小の校長先生を取材することになった。

楽しみな気持ちと、やつづかさんに負担をかけないかという不安が入り混じっていたが、このときも温かく応じてくださったやつづかさん。大日向小をたくさんの方に知ってもらえて嬉しい、と仰ってくれた。

2021年6月、大日向小学校を取材

大日向小は決して、小さな町にいきなりポンッと開校したわけではない。

元教員の中川綾さんという女性がイエナプランに興味をもったことから始まり、協力者が1人、またひとりと集まり、大日向の歴史を知り、町の人々に話を聞き、意見を取り入れ……といった、長い長いプロセスを経て今に至るという。

興味のある方はぜひ読んでみて欲しい。中川綾さん著「あたらしいしょうがっこうのつくりかた(ナガオ考務店)」

取材の日、元校長の桑原(くわはら)先生は、私のことを「ゆきなさん」と呼んでくれた。

“ずっと調べ続けてきた小学校の校長先生とオンライン越しに話す”というだけで心臓が破裂しそうだったが、いつも通りにインタビューできたのは、桑原先生のおかげだ。

一緒に取材を受けてくださったのは、教頭の宅明(たくみょう)先生。高知県の「国際バカロレア」認定校の立ち上げに携わったご経験ももつ宅明先生は、忙しい授業の合間をぬって、何度も電話やメールに応じてくださった。(「教頭先生は職員室にいるもの」と思っていた私は、授業を受けもたれていることにも驚く)

思い出深いのは、私が記事タイトルで悩んでいたときのこと。ただでさえお忙しいはずの宅明先生が、「原さんが板挟みになってはいませんか?」と、いちライターの私を気遣ってくださったのだ。

お2人との対話を通じて、「だからここには人が集まるんだ」と、私のなかで腑に落ちた気がした。

東京の受験戦争のこと

やつづかさんが移住された理由のひとつに、東京の受験戦争への不安がある。ただこれは、都内で子育て中の人以外は、「そういうものなの?」と感じるだろう。

私も地方住まいなので、その受験熱を肌で感じることはできないけれど、教育関連のWebメディアや雑誌が受験情報で埋めつくされているのを見ると、本当なんだ…と思わされる。

さらに、後日こちらの記事を読み、やつづかさんの不安の意味を、より深く理解した。

“受験で追い詰められる子どもたち”

”「受験組が地元の公立進学組を『負け組』と言っていじめる図式がある」「いじめは輪番制」目立つと虐められる。”

受験戦争の渦から逃れてのびのびと過ごさせてあげたいと願う気持ちは自然なことだと、改めて思った。

私が馴染めなかった学校生活が、少しでも変われば

公開へのハードルは決して低いものではなかったが、最後まで頑張れたのは、自分が昔、学校生活を思う存分楽しめなかったことが大きい気がしている。

「みんなに合わせなきゃ」「でもついていけない」「どうしよう」「恥ずかしい」「もう行きたくない」……

だから単純に、多様性を認める教育がたくさんの人に共感されているのを見て、「そっか、私は変なわけじゃなかったんだ」と、自分を認めてもらったような気持ちになった。

息子たちの代には間に合わなくても、大日向小のような学校が全国に広まってほしい。欲を言えば10年後、息子たちが中高生になるくらいまでには少し。孫の代には、どんな人でも学校を選べるようになってくれたら。

桑原校長が仰っていた。「イエナプランの取り組みは、公立小でも取り入れることは可能」

イエナプランを大々的に取り入れるのは難しくても、まずは「背の順」や「男の子と女の子に分かれて~(時と場合にもよる)」、全員きれいに整列するなど、「これ必要?」と思われる習慣をすこしずつなくしていく。それだけで、子どもも先生も過ごしやすくなると思う。

問題意識をもつ先生方はたくさんいて、一方でそれを主張しようにも、なかなか通らないのが現状のよう。それ以上にどの先生も、目の回るような忙しさだという(Twitter #教師のバトン より)。

町の皆さんの声も聞いてみたい

「大日向小の保護者たちが、積極的に町おこしをしている」

記事にはならなかったが、この点にもとても興味がある。

ご主人が元ハウス食品だというご夫婦が営む「カレー屋ヒゲめがね」、翻訳出版プロデューサーの方がオープンさせた「新駒書店」、個人事業主の保護者が営む学童「ひなたぼっこ」……。

学校がひとつできたことでスキルをもつ保護者が集まり、過疎化が進んでいた町に、灯が増えたという。

一方で、私は今回、あくまでもオンラインで取材を重ねただけであり、現地で町の皆さんの声や、ほかの保護者の方々の声を聞いたわけではない。きっと見えていない部分もあるだろう。

だからこそ次は、オンラインではなく対面で話を聞き、写真もきちんと撮りたい。そう考えると、実現はもうすこし先になりそうだ。

やつづかさんは、教育移住が必ずしも正解ではない、とも仰っている。本当にそうだし、記事を読んだ人が、こんな新しい小学校があって、これから増えていくかもしれないんだと、希望をもってくれるだけで十分だ。

私もそのひとりである。

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原由希奈
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