「パパ、淋しくないかなぁ」長男の呟きに、私が思ったこと
「朝顔、パパちゃんとお水あげてくれるかなぁ……」
「パパ、淋しくないかなぁ……」
6歳の長男が、寝る直前ベッドの中で、そうつぶやいた。約1週間後に私と次男と3人で行く、2週間のアメリカ旅行中のことを心配しているのだ。「朝顔」とは、学校で長男を含む一年生全員が育てているもので、もうすぐ夏休みのため家に持ち帰ってきたのだ。
長男はこうも不安げに言った。
「アメリカで、ママが英語まちがっちゃったらどうするの? 『ノー! ノー!』 って言われるんじゃない?」
私はこう返す。「大丈夫。英語を間違ったくらいじゃ怒られないし、下手くそでもちゃんと通じるし、みんな優しいから」
長男「アメリカ人から見たら日本人は、“黄色い猿”なんでしょ? 『イエローモンキー』って言われるんじゃない?」
すごい。いつか私が話した、「アメリカやヨーロッパの人たちから見ると、日本人の肌の色は黄色に見えるみたいだよ。おかあさんも昔、イギリスに留学したとき、『イエローモンキー!』って馬鹿にされたことがある」という話を覚えていたのだ。
そのときはたしか長男が、トイレに貼ってある世界地図(に世界中の子どもたちの写真を貼ったもの)を見て、ちがう肌の色をした子のことを笑ったのだ。それで、「自分たちだってほかの国の人から見ればそうなんだよ」と伝えたくて話したエピソードだ。
私「そういう風に言われたら無視すればいいの」
長男「でも、無視して大丈夫なの?」
私「日本で生まれたことが悪いわけじゃないんだから、堂々としていればいいんだよ。それより、心配なことを話してくれてありがとう。ママ、長男はきっとパパがいなくて淋しいんじゃないかな? と思ってたから、気持ちが聞けてよかったよ」
*
そう、今回のアメリカ旅行は、母子だけの旅。ぎりぎりまで「どうやったら夫も一緒に行けるのか?」と考えた。でも、長男の小学校と夫の仕事の休みがどうしても合わなかったし、4人でアメリカとなると旅費も相当なものになる。
小学校を休ませる手もあるけど、そもそも今回の旅は私のエゴなのでは? という懸念があったため、
・子どもたちの日常生活を最優先すること
・子どもたちの意見を聞き、「行きたくない」「パパと離れたくない」と言われれば行かないこと
だけは決めていた。が、私が
「夏休みにアメリカへ行くってお話したけど、お父さんが行けなくてお母さんと3人だけなの、本当に大丈夫? 期間はちょっと短くなるけど、アジアの近い国へ行くならお父さんも行けそうだよ。長男と次男はどう思う? 」
と聞いた際、長男が「アメリカーーー!!!!!」と飛び跳ねて(つられて5歳の次男も)喜んだのだ。「日本から遠くて、長く行けるほうが楽しい」と思ったらしい。それでも、長男はパパっ子なので、直前になったら「淋しい」と言い出すんだろうなぁ……と予想していたのが当たった。
(ただ、最近読んだ本で、「子どもは私たちが思う以上に親のことが大好きで、無意識のうちに親が喜んでくれそうな行動を取るものだ」ともあらためて知った。長男は、私がアジアよりもアメリカに行きたいのだと思って、気を遣ってそう言ったのかな……? 考えすぎかな?)
そこで私は、長男に提案した。
「お父さんに、その日あったことを毎日テレビ電話で伝えたらどう? あとは、遠く離れてても、Switchで一緒にゲームをすることもできるよ」
長男「え!? 一緒にゲーム!? やりたい!!」
私「時差があるから、おかあさんと長男と次男がめちゃめちゃ早起きしなきゃいけないけどね(笑)」
長男「時差って?」(……身ぶり手ぶりで懸命に説明)
あとは、離ればなれに過ごす家族が、パソコンでZOOMを繋ぎっぱなしにしてまるで一緒にいるように過ごしている話も聞いたことがある。それも長男に伝えてみたが、「え? どういうこと?」とイメージが沸かないようだった。
私は言った。
「どうしたらお父さんも一緒に旅行している気分になれるか、一緒に考えよう」
長男は少し安心したのか、そのまま眠りについた。子どもの気持ちは繊細だ。普段ママっ子で怖いもの知らずの次男でさえ、毎日会っていた父親が「いない」のだと実感すれば、心が不安定になるだろう。
長男の様子を見て、今回の旅は「無理しない」旅にしよう、と誓った。2週間のうちの数日、部屋で一日、パパとオンラインゲームする日があったっていい。「もったいない!」と思われようと、そういう、家族が離ればなれになったときの感情の変化や、その乗り越え方も含めて、私たち家族にとってははじめての学びだ。
追記 2023.7.24
あらためて自分の書いたnoteを読み返すと、長男が不安がっているのは「パパと離れること」より、「パパが淋しくないか?」ということかな? と思い直した。
あと、私の英語力を不安視しているので、アメリカという未知の場所が怖いのかな、とも。ただやっぱり、旅行自体は今も楽しみなようだ。
言葉で説明しても実感が湧かないだろうから、あとは現地へ行ってみて、子どもたちのようす次第で訪れる場所を考えたい。