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ひとりで頑張るママたちへ、私が伝えたいこと

私は、一度だけ、息子二人を置いて出ていったことがある。

「ママ!?」

実家の食卓テーブルで、当時2歳の長男が私を呼んだ。

私は、涙をこらえながら、ダダッ!と玄関へ走った。泣き顔を、息子たちに見せたくなかったのだ。

2~3日に一度しか髪を洗えない日々

ときは、2019年の夏。私は、2歳と1歳の息子を保育園に預け、会社員として働いていた。勤務時間は、9時から16時。通勤と送迎で1時間半かかるので、朝は、7時に家を出る。

仕事を終えたら、制服のまま車に乗り、おにぎりを食べながら保育園に向かう。1分でも早く、息子たちに会いたいからだ。

園に着いたら、歩けるようになったばかりの次男をおんぶし、よちよち歩きの長男と手をつなぎ、やっとの思いでチャイルドシートに乗せる。

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2歳と1歳のころの息子たち。(か、かわいい‥‥‥)

18時に帰宅したら、二人にご飯を食べさせ、お風呂に入れて寝る。私は基本、晩ごはんは食べない。息子たちが眠ってから食べればよいのだけど、つい寝落ちしてしまう。ドライヤーをかけるのが大変なので、シャンプーも2〜3日に一度(!)というありさまだった。

車で10分の距離に住む両親は、働いていて、頼りにくかった。夫も激務で、月曜日から土曜日まで、ほとんど家にいない。

息子たちは、よく熱を出した。

「○○くん、お熱があって。お迎えお願いします」

会社に、保育園から電話がくるのは日常茶飯事。兄弟で代わるがわる病気にかかり、それが私にうつったときは、一ヵ月ほぼ出社できなかった。

私のなかのダムが崩壊した日

原因は忘れてしまったけれど、あの事件の日まで、私は母とケンカをしていた。そのせいで、ますます実家を頼れず、心身ともに疲弊していた。久しぶりに母から「どうしてる?晩ごはんでも食べに来たら」と連絡があったときには、「やっとワンオペから解放される‥‥‥」と、心底ホッとした。

みんなで晩ごはんを食べているとき。ずっと頭の隅にあった考えが、ぽろっと口から出た。

「会社、辞めようと思う。」

食事の手をとめて、こちらを見る両親。すると、父がこう言った。

「○○くん(夫)には相談したのか?」

「相談したよ、もちろん」

「定年まで、今の会社で働き続けるんじゃなかったのか?」

「‥‥‥(そんなこと、一度も言ってない)」

父は、こう続けた。

「考えが甘いんじゃないのか」

その後は覚えていないが、責めるような言葉がつづいたと思う。

そのとき、心のなかで何かがプツンと切れたように、涙がどっとあふれてきた。口のなかのご飯まで、涙でしょっぱくなった。

「ちょっとお父さん。いまの状況で、そんな先のこと、考えられるわけないじゃない!」

そうフォローする母の声も響かず、私はリビングのドアを開けて、外へ飛び出した。

定年まで続ける?この生活を?
私がどんな毎日を送ってるか、知ってて言ってる?
料理、掃除、洗濯、保育園の準備、子どもたちのお世話、しごと。
こんなに頑張ってるのに、どうして責められるの?
もう死にたい。いなくなりたい。全部投げ出したい‥‥‥!

いろいろな気持ちがあふれてきて、泣きながら自宅まで運転した。帰ると、家にぽつんと一人。息子たちのいない家なんて、はじめてだ。腫れた目をふきながら、なんだか手持ち無沙汰になり、散らかったおもちゃを片付ける。



数時間後、母が、息子たちを連れてきてくれた。父からは、メールが来た。

「言い過ぎた。お前の気持ちを理解してやれなくて、ごめん。」

息子たちは、私の顔を見るやいなや、嬉しそうに抱きついてきた。

「ママ~!!!」

そんな息子たちを、ぎゅーーっと力いっぱい抱きしめた。突然出ていったことを、心底反省した。

本当にかけてほしかった言葉

数か月後、私は5年勤めた会社を退職した。同僚にもう迷惑をかけたくなく、息子たちとの時間も大切にしたかった。新しい仕事には、自宅でも働けるフリーライターを選んだ。

息子たちも成長し、心に余裕ができたいま、あの日を振り返ってこう思う。

私は父に、退職を肯定してほしかったわけではない。

ただ、褒めてほしかったのだ。

「一人で、ここまでよく頑張ったな。えらかったな」って

でも父は、私がどういう日々を送っていたのか、知る由もなかった。真面目な父は、娘の今後を案じて、つい責めるような言葉を言ってしまっただけ。

本当につらく、大変な状況にいるママたちは、それを発信する余裕もない。誰にも褒められることなく、毎日、タスクに追われている。

冷静に振り返ってみても、2歳と1歳を預けて外で働く忙しさは、尋常ではなかった。3食食べて、体を洗って、きちんと寝る。そんな、当たり前のことができない。その生活が、何か月も、人によっては何年もつづくのだ。

私は、あのときの自分に、こう伝えたい。

ほんっっっとうにお疲れさま!今日も、よく頑張ったね。あなた、スーパーウーマンだよ!

父は、あの日をさかいに、丸くなった。自宅で働く私を、よく気にかけてくれる。

会社を退職する日、同僚の女性が私に言った。

「由希奈さんが幸せなら、それでいいんですよ」

退職後も、いまに至るまで、この言葉に何度救われたことか。

今日、3月8日は、「国際女性デー」と呼ばれているそうだ。イタリアでは、身近な女性に感謝の気持ちをこめて、ミモザの花を贈るという。

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あの日の私と、いまも一人で頑張るママたちに、ミモザの花束を贈りたい。

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