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チャイとの苦い出会いと、子どもの頃の原体験のはなし

チャイ屋をしていると、「なぜ、チャイなの?」と、チャイを仕事として選んだ理由やきっかけを尋ねられることが多い。

ブランドリニューアル当初にこちらのnoteでも書いたが、大学を出てから働いていた飲食店の「自家製ジンジャーエールの出涸らし」が出発点だった。

けれどそれよりも前に、外向けにはあまり話さないチャイとの苦い出会いのエピソードがある。

実は、はじめてチャイを飲んだときの印象はひどいものだった。

大学4年のとき、私はとあるベンチャー企業でインターンをしていた。当時まだ何者でもなかった私は"イケてる組織"に強い憧れを持っていて、今思えばかなり背伸びをして入った環境だったと思う。

その夏は、大きなフェスイベントの準備で忙しい日々を送っていた。毎日のように都心のオフィスに通い、帰宅しても深夜0時からオンラインミーティングがあったりした。早朝のバイトもしてたので、なかなかまとまった睡眠時間が確保できておらず、食べることすら蔑ろにしてしまっていた。

そんな精神がギリギリだったときに、打ち合わせのために同期たちと某カフェチェーンに行った時のこと。脳まで疲れ切っていて飲み物を選ぶことすら億劫だった私に、同期の一人が勧めてくれたのが「チャイ」だった。

チャイ、といってもそのお店の場合はミルクティーにパウダースパイスをかけるタイプで、のちに出会う心ときめくチャイとはだいぶ異なるものだった。(今ではそれも一つのチャイの形だと思っていて、たまに飲むこともある)それが、私の人生で初めての「チャイ」だった。

「何これ、変な味。おいしくない…」

心が荒みきっていて、未知な味との出会いを楽しむゆとりなんて全くなかった私はそう思った。「ごめん、好きじゃないかも」と、たったの一口だけでやめてしまった。(たしか、勧めてくれた同期が飲んでくれた)

そんな風にして、はじめてのチャイ体験はかなり苦い思い出だった。

その翌年に自家製ジンジャーエールの出涸らしと出会い、チャイにはまっていった、という いきさつである。


…だけれども、最近になって昔のことを思い返してみると、スパイスは入っていなかったにしろ、小さい頃から「紅茶」が好きだった。

というのも、私の母が「午後の紅茶」が好きだったからだと思う。

今でも覚えている。まだ4歳くらいの頃、私は母の職場の近くの保育園に預けられていた。土曜日は母の仕事が午前だけだったので、車でコンビニにいってお昼を買い、湖畔に停めた車の中で母とランチしていた。

母はいつもミルクティー、ストレートティー、レモンティーのどれかを買っていて、私もそれを気に入って一緒に飲んでいた。二つ下のまだ小さな妹は家で祖父母が見てくれていたので、母を一人占めできる時間は特別だったのかもしれない。

小学生になってから、「茶葉2倍ミルクティー」なるもの(多分今は販売されてない)が登場して、私はそれが最高に好きだった。紅茶の味とミルクが濃くて、甘くて、当時の私にとって贅沢な味だった。

思えば今自分で淹れているチャイも、「濃厚さ」を追い求めて何度も試作してたどり着いた味だ。しっかり茶葉の味を感じられて、ミルク感も強くて、ほどよく甘い。間違いなく、小さい頃に好きだったミルクティーが原点になっていると思う。

幼少期に原体験があるという話はよく聞くけれど、自分も確かにそうなんだな、と最近気がついた。もちろん、当時はチャイを淹れる人になるなんて微塵も思ってはなかったけど。

当時の純粋な「おいしい!」の気持ちを、これからも忘れないようにしたいなと思う。


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